生活費を渡さないのは「家計管理」ではない——経済的DVに気づいた女性が安全を守る7つの手順
りなお@みんなの知恵袋
対象:夫やパートナーにお金・仕事・口座を支配され、「自分が我慢すればいい」と感じている20代・30代・40代の女性
この記事の目的:相手を言い負かすことではなく、自分と子どもの安全、生活、選択肢を取り戻すための最初の行動を整理すること
今、危険がある方へ
殴られそう、閉じ込められている、命を脅かされている、子どもや家族へ危害を加えると言われているなど、差し迫った危険がある場合は、記事を読み進めるより安全な場所へ移動し、110番してください。
緊急ではないものの警察へ相談したい場合は、警察相談専用電話 #9110 があります。
端末や通話履歴を相手に確認される可能性がある方は、安全な端末や信頼できる人の電話を使ってください。履歴を消す行為そのものが相手を刺激するおそれがある場合は、無理に操作せず、支援機関と安全な方法を考えてください。
この記事は一般的な情報です。個別の法律判断や避難方法は、DV相談窓口、警察、弁護士などへ相談してください。
経済的DVは「収入が少ないこと」ではなく「お金で支配すること」
収入が少ない、節約が必要、夫婦で使える金額を決める。これだけで直ちに経済的DVになるわけではありません。
見るべきなのは、金額の大小よりも、一方がお金を使って相手の行動や選択を支配しているかです。
内閣府は、生活費を渡さないことや仕事を制限することを、経済的な暴力に分類される場合がある行為として示しています。
相談してよいサイン
・必要な生活費を渡さない
・使途を細かく報告させ、少額の支出でも怒鳴る
・自分の収入や資産は明かさないのに、相手の収入をすべて管理する
・給与、給付金、貯金を勝手に取り上げる
・働くこと、転職、資格取得を妨害する
・本人の同意なく借金や契約をさせる
・クレジットカードやキャッシュカードを取り上げる
・医療、食事、生理用品、子どもの必要品にお金を出さない
・離婚や別居を口にすると「一円も渡さない」「子どもと生活できなくする」と脅す
・お金がない状態を作り、外出や交友関係を制限する
一つでも不安を感じたら相談して構いません。「DVだと証明できてから」相談する必要はありません。
手順1:最初に危険度を確認する
経済的DVは、精神的・身体的・性的な暴力、監視、脅迫と重なることがあります。
次に該当する場合は、一人で相手と交渉するより、安全の確保を優先してください。
・暴力や物を壊す行為がある
・刃物や凶器を見せる
・「殺す」「子どもを奪う」「逃げても見つける」と脅す
・スマートフォン、車、位置情報を監視する
・外出を妨げる、鍵をかける
・別居や離婚の話を出すと急激に怒る
・子どもやペットを使って従わせる
危険度は自分だけで判断しなくて構いません。DV相談窓口へ「経済的なことだけかもしれない」「まだ同居している」と伝えて相談できます。
手順2:安全な連絡手段を一つ作る
相談先を探す前に、相手に知られず連絡できる方法があるか確認します。
・相手が触れない端末を使う
・共有のメールアドレスやクラウドを避ける
・位置情報共有、ファミリー共有、端末のログイン状況を確認する
・支援先の連絡先を安全な名前で保存するか、暗記・紙で保管する
・信頼できる人と合図を決める
ただし、パスワード変更や共有設定の解除が相手に通知され、危険が高まることがあります。監視が疑われる場合は、先に安全な端末から相談窓口へ連絡してください。
手順3:「証明」より「記録」を始める
完璧な証拠を集めるために危険を冒さないでください。
安全にできる範囲で、次の事実を日付とともに記録します。
・渡された生活費と不足した支出
・お金や仕事について言われた言葉
・口座から勝手に引き出された履歴
・借金や契約を強要された経緯
・通院、食事、子どもの用品を断られた事実
・怒鳴る、脅す、物を壊すなど他の行為
・相談した機関、担当者、日時
通帳、給与明細、税金、保険、住宅、借金、契約書なども、無理なく確認できるものだけ控えます。
記録は自宅の分かりやすい場所や共有クラウドへ置かず、信頼できる人、相談機関、安全な別アカウントなど、相手がアクセスしにくい場所を検討します。
手順4:生活を守る書類と情報を整理する
避難や相談の際、次の情報が役立つことがあります。
・本人確認書類
・健康保険や医療に関する情報
・通帳、口座情報、給与明細
・子どもの学校・保育・医療情報
・薬、お薬手帳、診察券
・住宅、保険、年金、税金、ローン、借金の資料
・緊急連絡先
原本を持ち出すことで気づかれる場合は、写真やコピーで足りるかを支援者へ相談します。
また、安全が確認できるなら、自分名義の口座、少額の現金、充電器、薬、最低限の衣類などを準備する方法もあります。
共有財産や多額のお金を動かす行為は、後の争いにつながる可能性があります。大きな資金移動や契約変更の前に、弁護士などへ個別に相談してください。
手順5:味方を一人ではなく「一つのチーム」にする
友人一人へ話すだけでなく、役割の違う支援先につながると選択肢が増えます。
DVの相談と安全確保
・DV相談ナビ:#8008
電話した地域の配偶者暴力相談支援センターにつながります。各相談機関の受付時間内に利用できます。
・DV相談+:0120-279-889
電話は24時間、チャットは12時〜22時、プラス相談箱は24時間受け付けています。
・女性相談支援センター:#8778
各都道府県の女性相談支援センターにつながります。一部の回線・地域では短縮番号を利用できない場合があります。
相談先:DV相談について|内閣府男女共同参画局/DV相談+/あなたのミカタ|厚生労働省
法律相談
法テラスには、DVなどを受けている方や受けるおそれがある方を対象とする法律相談援助があります。資産が300万円以下の場合は相談無料と案内されています。条件や費用は変わる可能性があるため、利用時に確認してください。
・法テラス 犯罪被害者支援ダイヤル:0120-079714
・IP電話:03-6745-5601
・平日9時〜21時、土曜9時〜17時
相談するときは「離婚を決めていない」と伝えても大丈夫です。相談は、離婚を約束する場ではなく、選択肢を知る場です。
手順6:年代ごとの失いやすいものを確認する
20代:名義と信用情報を守る
結婚直後で家計を任せた結果、自分名義の借金や契約に気づかないことがあります。
・自分名義の口座、カード、ローン、携帯契約を確認する
・退職や扶養への変更を急いで決めない
・奨学金や結婚前の貯金の状況を記録する
30代:子どもとキャリアを同時に守る
育休・時短・退職によって収入差が広がり、相手の支配が強くなる場合があります。
・子どもの医療・保育・学校情報を把握する
・自分の雇用契約、給与、育休・復職情報を保管する
・病児対応や送迎による就労への影響も記録する
40代:住宅・年金・長期資産を見落とさない
住宅ローン、保険、退職金、年金、親の介護など、生活再建に関わる項目が増えます。
・住宅とローンの名義を確認する
・保険、年金、貯蓄、投資、借金の存在を把握する
・介護費や教育費を誰が負担しているか記録する
分からない資料があっても、それを理由に相談を遅らせないでください。
手順7:避難・別居・継続の選択を一人で決めない
同居を続けながら準備する、短期間離れる、一時保護を相談する、別居する、法的手続きを検討する。選択は一つではありません。
大切なのは、相手へ計画を先に伝えることではなく、次の点を支援者と確認することです。
・いつ、どこへ移動するか
・子どもやペットをどうするか
・移動手段と緊急連絡先
・学校、職場、自治体へ何を伝えるか
・位置情報や住所をどう守るか
・生活費、住居、医療をどうつなぐか
・警察や裁判所の制度が必要か
2024年4月に施行された改正配偶者暴力防止法では、接近禁止命令等の対象となる脅迫に、自由・名誉・財産への害を告知する脅迫も加わりました。ただし、経済的DVがあれば自動的に保護命令が出るわけではありません。要件は個別に判断されるため、配偶者暴力相談支援センターや弁護士へ相談してください。
周囲の人ができること
経済的DVの被害を打ち明けられたら、「すぐ離婚して」「なぜ今まで我慢したの」と決断を迫らないでください。
・話を否定せずに聞く
・本人の安全な連絡方法を確認する
・現金を渡すだけで終わらず、専門窓口へつなぐ
・本人の許可なく相手へ連絡しない
・記録や荷物を安全に預かれるか考える
・緊急時の合図と行動を決める
逃げられないのではなく、住居、子ども、仕事、お金、安全が複雑に結びつき、動くほど危険が高まることがあります。
最後に:「自分名義のお金がない」ことと「選択肢がない」ことは同じではない
経済的DVは、相手に「一人では生きられない」と思わせることで続きやすくなります。
今すぐ離婚を決めなくても構いません。
証拠がそろっていなくても構いません。
自分がDV被害者か断定できなくても、相談して構いません。
最初の一歩は、相手を説得することではなく、安全な場所から第三者へ状況を話すことです。
お金を管理されて今は動けないと感じていても、あなたの選択肢がなくなったわけではありません。次の一歩を、支援者と一緒に決めてください。
