新幹線の駅を降りて、タクシーに乗り込む。窓の外を流れる景色は、6年前とほとんど変わっていない。
営業職として日々、数字と納期に追われる東京での暮らし。そんな毎日に慣れきった俺にとって、この地元の空気はあまりにも静かだ。
実家に顔を出す前に、どうしても寄りたい場所があった。高校を卒業するまで、毎年正月になると家族と訪れていた駅裏の蕎麦屋。あの店で蕎麦を食べるまでが、俺の「正月」だった。
店先に立つと、記憶の中の匂いがそのまま鼻をくすぐる。暖簾をくぐり、カウンターの端に座って「天ぷら蕎麦」を注文した。
運ばれてきた蕎麦を一口すする。ああ、これだ。
