不安・反芻思考・自己否定から、無理に考え方を変えずに「降りる」ための思考フレームワーク
「なぜか同じ不安をぐるぐる考えてしまう」の正体
問題化ループ理論
答えによって終われない問いに、答え続けていないか。
人は、苦しい思考があるから苦しみ続けるわけではない。
不安があるからでもない。
自己否定が浮かぶからでもない。
嫌な記憶を思い出すからでもない。
それらは最初、
起きている。
「失敗するかもしれない」
という思考が出る。
胸が少し重くなる。
過去の失敗が浮かぶ。
ここまでは、
起きた現象である。
問題は、そのあとに始まる。
本当に失敗するのではないか。
なぜ自分はこんなことを考えるのか。
どうすれば不安にならなくなるのか。
こんな自分で大丈夫なのか。
ここで人は、
起きた現象を、
答えを出さなければならない問題
へ変える。
そして、
答え始める。
一つ答える。
少し安心する。
すると、
「本当に?」
が出る。
また答える。
すると、
「そう思いたいだけでは?」
が出る。
また答える。
最初は、
一つの思考だった。
いつの間にか、
自分について答えを出し続ける作業になっている。
この理論では、
起きた現象を答えるべき問題として採用し、その回答からさらに新しい問いが生まれ続ける循環
を、
問題化ループ
と呼ぶ。
この理論の核心は、
一つである。
問題は、答えがないことではない。
答えによって終われない問いを、答え続けていることである。
第1部 問いは、どこから問題になるのか
1 現象と問題は、同じものではない
最初に、
この二つを分ける。
思考が浮かぶ。
不安になる。
胸がざわつく。
嫌な記憶を思い出す。
「自分はダメだ」
という言葉が浮かぶ。
ここまでは、
現象である。
すでに起きたことだ。
一方、
問題とは何か。
その現象について、
何らかの答えを出す必要がある
と扱い始めた状態である。
例えば、
「自分は嫌われているかもしれない」
という思考が出る。
これは現象である。
そこから、
「本当に嫌われているのか確かめなければ」
になる。
ここで問題化が始まる。
前者は、
頭に浮かんだもの。
後者は、
その浮かんだものに対して、
自分が始めた仕事である。
この違いは大きい。
人は、
思考が出た瞬間に、
それを質問として受け取り、
そのまま回答義務まで引き受けることがある。
しかし、
問いが出たことと、答える必要があることは別である。
2 脳は、問いまで勝手に作る
人間は、
考えようとしていないときにも考える。
思い出そうとしていないことを思い出す。
考えたくない未来を想像する。
矛盾した考えも出る。
そして、
問いも出る。
このままでいいの?
失敗したら?
嫌われているんじゃない?
本当に大丈夫?
自分って何なんだろう?
こうした問いは、
必ずしも自分が意識的に作ったものではない。
勝手に出ることがある。
だから、
問いが出たことを、
そのまま、
「今、自分が考えるべきこと」
と扱わない。
頭の中で電話が鳴った。
それだけかもしれない。
電話が鳴ったからといって、
必ず出る必要はない。
同じように、
脳が問いを出したからといって、
すべてに回答する必要もない。
3 問題化は「採用」から始まる
問題化ループは、
問いが出た瞬間に始まるわけではない。
重要なのは、
その問いを、
自分が答えるべき案件として採用したか
である。
「嫌われたかもしれない」
という思考が出る。
そのまま通ることもある。
一方、
「本当に嫌われているのか確かめよう」
となった瞬間、
回答作業が始まる。
過去の会話を思い返す。
LINEを見る。
相手のSNSを見る。
人に聞く。
自分の言動を検証する。
すると、
最初は一つだった問いが、
次々と仕事を生む。
問題化とは、
思考が出ることではない。
思考を案件化すること
である。
第2部 なぜ、考えても終わらないのか
4 問いには、終了条件があるものとないものがある
ここが、
問題化ループを見分ける最初の基準になる。
問いには、
答えることで終わるものと、
答えても終わらないものがある。
例えば、
「明日は何時に家を出る?」
7時半。
終わり。
「今月あといくら使える?」
収支を見る。
終わり。
「このミスをどう修正する?」
対応を決める。
実行する。
終わり。
ここには、
終了条件
がある。
一方、
「自分は大丈夫なのか」
はどうか。
大丈夫だと思う。
すると、
「本当に?」
が出る。
根拠を探す。
すると、
「その根拠で十分?」
が出る。
さらに答える。
すると、
「自分を安心させたいだけでは?」
が出る。
ここには、
明確な終了条件がない。
だから、
考える前に一度見る。
この問いは、何が起きたら終わるのか。
その答えが言えない問いは、
考えても終わりに近づかない可能性がある。
5 「安心したら終わり」は、終了条件にならない
終了条件を、
「自分が完全に安心したら」
にしない。
安心は、
内面の状態である。
内面は、
完全には固定できない。
一度安心しても、
また不安になることがある。
だから、
「安心できたら終わり」
を終了条件にすると、
問いは何度でも再開できる。
現実問題には、
できるだけ外から確認できる終了条件を置く。
必要な資料を確認した。
連絡をした。
支払いを済ませた。
専門家に必要な確認をした。
決めた手順を終えた。
ここまで来たら、
不安が残っていても、
回答作業を終える。
6 反芻とは、答えがない状態ではない
人は、
答えが見つからないから、
同じことを考え続けていると思いやすい。
しかし、
もう少し正確に言える。
反芻とは、答えによって完了できない問いに、答え続けている状態である。
ここは重要である。
なぜなら、
「もっと考えれば終わる」
という期待そのものを見直せるからだ。
普通の問題なら、
考えることで終了へ近づく。
終了条件のない問いでは、
考えることで、
次の問いが生まれる。
つまり、
考え続けても終わらないのは、
考え方が下手だからとは限らない。
最初から、
閉じない問いを閉じようとしている。
7 再質問可能性と「本当に?」テスト
終了しにくい問いには、
特徴がある。
どんな答えを出しても、
その答えに、
「本当に?」
を付けられる。
自分には価値がある。
本当に?
将来は大丈夫だと思う。
本当に?
嫌われてはいないと思う。
本当に?
この選択で良かった。
本当に?
もう十分考えた。
本当に?
どの答えからも、
新しい問いを作れる。
この性質を、
再質問可能性
と呼ぶ。
今考えている問いが、
回答によって終わるものか。
試す方法は簡単である。
自分なりの答えを一つ出す。
その答えに、
「本当に?」
を付ける。
それだけで、
また最初から証拠探しが始まりそうなら、
その問いは、
回答によって終了しにくい可能性が高い。
例えば、
「自分は仕事に向いているのか」
向いていると思う。
本当に?
また判定が始まる。
「自分は幸せなのか」
幸せだと思う。
本当に?
また採点が始まる。
答えが悪いのではない。
問いが永久に再審できる構造になっている。
8 安心できる答えでも終わらない
問題化ループは、
ネガティブな答えによって続くとは限らない。
安心できる答えによっても続く。
「自分には価値がない」
と思う。
「いや、自分には価値がある」
と答える。
少し安心する。
すると、
「本当にそう思っている?」
が出る。
また答える。
「人から必要とされたこともある」
と思う。
すると、
「必要とされなくなったら?」
が出る。
内容は、
前向きになっている。
構造は、
一度も変わっていない。
ずっと、
「自分には価値があるか」
という問いに参加している。
だから、
問題化ループの出口は、
より良い答えではない。
回答作業を終えられること
である。
第3部 問いは、いつの間にか自分を裁き始める
9 問いは途中で別の問いへ変わる
問題化ループには、
もう一つ大きな特徴がある。
問いが、
途中で変わる。
例えば、
明日の仕事が不安だった。
最初は、
「明日うまくできるかな」
だった。
そこから、
「なぜ自分はこんなに不安になるんだ」
へ変わる。
さらに、
「自分は精神的に弱いのでは」
になる。
その次に、
「こんな自分でこの先やっていけるのか」
になる。
最初は、
明日の仕事について考えていた。
最後には、
自分の人生について答えようとしている。
この変化を、
問いの転移
と呼ぶ。
問いは、
出来事から、
能力へ。
能力から、
性格へ。
性格から、
価値へ。
さらに、
将来や人生全体へ広がることがある。
一度仕事でミスをする。
「なぜミスした?」
ここまでは具体的である。
そこから、
「自分は仕事ができないのでは」
へ進む。
さらに、
「何をやってもダメなのでは」
になる。
最後には、
「こんな人生でいいのか」
まで行く。
一つのミスから、
人生の判定まで飛んでいる。
本人には、
ずっと同じことを考えているように感じる。
実際には、
問いの対象が、
何度も拡張されている。
10 自己問題化
問いの転移が進むと、
最後に、
自分そのものが問題になる。
「どう直す?」
ではなく、
「なぜ自分はこうなの?」
になる。
「次は何を変える?」
ではなく、
「こんな自分で大丈夫?」
になる。
「今回の失敗をどう防ぐ?」
ではなく、
「自分には能力がないのでは?」
になる。
現実に問題があったはずなのに、
途中から、
自分という人間そのものが、解決すべき対象になる。
これを、
自己問題化
と呼ぶ。
一つの出来事は修正できる。
一つの行動も改善できる。
しかし、
「自分」という人間全体を、
いつ修正完了とするのか。
そこには、
明確な終了条件がない。
だから、
自己問題化は終わりにくい。
11 出来事を直すことと、自分を直すことを分ける
仕事でミスをした。
原因を見る。
必要なら謝る。
チェック工程を増やす。
ここまでで、
現実問題は処理できる。
そのあと、
「なぜ自分はこんな人間なんだ」
が出る。
ここからは、
別の仕事が始まっている。
もうミスを修正していない。
自分全体に、
説明を付けようとしている。
だから、
現実問題を扱うときは、
一つ見る。
何をすれば、この出来事への対応は終わるのか。
そこまで終わったら、
そのあとに出てくる、
「自分はどんな人間なのか」
まで引き受けない。
