プロを目指すわけじゃない。完璧を目指すな。最初の一歩を踏み出せば、たった20時間で驚くほど成長できる。
第1章 新しいスキルを学ぶ意義
学習への挑戦
「新しいスキルを身につけたい」そう思う人は多い。けれど、心のどこかでこうも思っていないだろうか。
「自分には才能がない」「もう年齢的に無理かもしれない」「1万時間も努力できない」
よく知られている「1万時間の法則」は、確かに一定の信ぴょう性を持っている。それは、プロレベルを目指す場合に必要な練習時間として語られてきた。
だが、私たちが必要としているのは、本当に“プロ”の技術だろうか?趣味で楽しんだり、日常で使えるようになる程度であれば、そこまでの努力は必要ない。
実は――たった20時間でも、実用レベルには十分到達できる。
「は?たった20時間で?ウソやろ」と思ったかもしれない。けど、本当に可能なんです。
学習の壁
多くの人がスキル習得を途中であきらめてしまうのは、能力の問題ではない。実は「自分には無理だ」と思い込んでいることが最大の壁となっている。
「もう若くないから覚えが悪い」「自分にはセンスがない」といった思い込みが、スタートすら切らせないのだ。
しかし、認知科学の研究によれば、人間の脳は年齢に関係なく新しい神経回路を形成することができるとされている。つまり、何歳からでも、新しいスキルを習得することは可能だ。
そしてその壁を超えるのに必要なのが、「20時間学習法」である。
20時間学習法の紹介
この考え方を提唱したのが、ジョシュ・カウフマンという人物。彼はTEDで「20時間でスキルを習得する方法」という講演を行い、世界中から注目を集めた。その再生回数は、なんと4,000万回以上にのぼる。
この方法の最大の特徴は、次の点にある。
- 特別な才能は必要ない
- 高額な教材や講座も不要
- ただ、最初の20時間だけ“本気”で取り組むことが条件
「20時間」と聞いてどう感じるだろうか?1日1時間なら、たった3週間。1日2時間なら、わずか10日。
「えっ、ほんまにそれで形になるん?」と疑うのも無理はない。
だが、実際にこの方法で英会話、プログラミング、ウクレレ、動画編集など、さまざまなスキルを身につけた人が世界中にいる。
この学習法は、「やってみたい」と思っていたことを「できる」に変えてくれる。しかも短期間で、そして驚くほど手軽に。
この章では、「なぜ20時間で十分なのか?」という考え方の土台をお伝えしました。次の章では、具体的にどう学習を進めればよいのか、そのステップを詳しく解説していきます。
第2章 「1万時間の法則」の誤解
1万時間の法則の背景
「1万時間の法則」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「どんな分野でも、その道のプロになるには1万時間の練習が必要だ」という有名な理論だ。
この考え方は、フロリダ州立大学のアンダース・エリクソン教授の研究に基づいている。彼は、ヴァイオリン奏者やチェスのプレイヤーなど、世界トップレベルの専門家たちの訓練時間を調査し、彼らが1万時間以上の練習を積んでいることを示した。
ただし、ここで大きな誤解が生まれてしまった。
この研究はあくまでも「世界の頂点を目指す人たち」に関するものであり、すべての人に当てはまる話ではない。趣味で楽しむレベル、日常でちょっと使いたいレベルにおいては、1万時間も必要ないのだ。
趣味と専門家の違い
ここで、ひとつの例を挙げよう。
例えば「テニス」。友人と楽しむための週末テニスと、オリンピックに出場するためのテニスは、当然ながら求められるレベルも、必要な練習時間もまったく違う。
「そらそうやん。遊びでやるんに、プロと同じ時間かける必要ないわ」
この違いに気づけるかどうかが、学習のハードルを下げる大きな鍵になる。つまり、私たちの多くが求めているのは「プロレベル」ではなく「実用レベル」や「楽しめるレベル」だということ。
そのために1万時間もかける必要は、まったくない。
学習曲線の理解
ここで重要なのが、学習曲線という考え方だ。
スキル習得の成長曲線は直線ではない。実際には、最初の数時間で急激に伸び、その後なだらかに成長が鈍化していく。
これは、多くの分野に当てはまる。英語、プログラミング、動画編集、楽器演奏……最初の10~20時間で、「何もできない」から「ちょっとできる」へ一気に変わる。
にもかかわらず、多くの人はこう考えてしまう。
「どうせ1万時間もかかるんやろ? そんなの無理やわ」「最初から上手くいかんし、やめとこ」
この「誤解」が、多くの可能性を潰してしまっている。
では、その“最初の急成長ゾーン”をどう使えばいいのか?次の章では、いよいよ「20時間で身につける」ための具体的なステップを解説していく。