あの日、
君の声を探して歩いた。
君の本心がどこかに落ちていないかと、思いながら。
ずっと、夢を見ていた。
二人が、結ばれる夢を。
独りきりにすることが
できなくて、
帰って行こうとする君と、肩を並べて歩いた。

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君が離れていった夜には、
海辺をわたる轟きの中で、俺たち二人の感情が、からみあっていた。
遠くまで探しに行くつもりだった、
君の本心が、
砂浜に落ちていた。
君といられた日の記憶の中に俺がいて、
それは想いとともに、
強く燃えあがる。
そして、
俺の記憶のなかに、君がいる。
この前の引っ越しの時に荷物を整理していたら、
残された記憶の痕跡から、君について分かることがあった。
君の本心の答えは、俺の記憶の中にあった。
ーー俺は今、
君と居られた町から、ずっと遠くへ越すことになって、
こうして新しい部屋で、真夜中の潮騒を聴いている。
仕事上の事情だから、
ここへ来るなんて、全く意図していなかったけれど、
思いも寄らなかった所が俺の新しい居場所となった。
打ち明けると、
今、俺が住んでいる所は、
君を連れて一緒に暮らそうと考えていた部屋のある、あの港から、
すぐ近くの場所だ。
ここは、
異なる文化の、異なる風の吹く、異なる砂浜が広がる場所で、
それなのに、
海だけは、
相変わらず波うっている。

ここが”新天地”っていうには、
それとはそぐわないかもしれないけれど、
数週間前に、いつか一緒に住もうと思っていた場所から近いと知った時には、
さすがに喰らった。
暫くの間、ここのやり方に馴染むまでは、多忙な日々が続くけれど、
少し記そう、と思った。
新しい場所へ行けと言われた時に、
明確に分かったのは、
君と俺とが結ばれる事は無いんだ、という徹底的な事実。
結ばれる相手とは、
多分、
もっとシンプルに流れ着くようになっている。
ここでの業務が今より落ち着けば、
時々だけど、
君と一緒にいられたあのビルを訪れる日が来る。
だから、
その時はまたどこかで、
擦れ違うことができるかもしれない。
でも、はっきりとわかっているのは、
一緒に居られたあの日々のように、
体の一部が震えるくらい感情を確かめられる時は、
たぶん二度と戻らない。
もっと早く伝えていられたら、と思った。
けれど、
俺からの通信手段は皆無で、