この作品の著者である長江俊和さんは、作家というよりもテレビディレクターの顔の方が有名であり、『放送禁止』というホラー系フェイクドキュメンタリーを手掛けている。
この『放送禁止』というテレビ番組は、ドキュメンタリーという体で、様々な出来事や登場人物によるコメントが一見普通の取材風景でありつつ節々に違和感や不審な描写を見せてゆき、その伏線を積み重ねることで最終的に恐ろしい真実が顔を出すというものである。この各所に散りばめられている細かい伏線からどのような真実が隠されているのかを番組を通して推理することができる点が視聴者に受けて人気シリーズとなった。
この出版禁止はそんなテレビ番組を手掛けたディレクターが作家として手掛けているシリーズであるため、『放送禁止』と同様に複数の散りばめられた伏線を読み解く楽しさがある。
この本の帯には「究極のどんでん返し」と書かれているため、ネタバレが嫌な人は訝しがるだろうが、この作者にはそのネタバレを超越した面白さがある。もともと『放送禁止』には衝撃的な真実があることはシリーズを通して視聴者知っているうえで、細かい伏線や仕掛けを探す行為を楽しんでいるので、どんでん返しがあるというネタバレはその楽しみ方を全く阻害しない。どんでん返しされた後でも読み返すことで初読では全く気に留めていなかった描写が活き活きと物語に深みを増してくれる。
あらすじとしては、人に対して深い恨みを持つ人が集まる村に「呪いで人を殺している」という噂が立っていることについて、あるルポライターが取材を行うために滞在するという話である。
しかし、この本そのものにはとある設定が存在することが冒頭で明かされる。
それは、本来このルポルタージュはお蔵入りとなるはずだったはずが、ネット上で流出してしまい、その内容の過激さゆえに広く出回って収拾がつかなくなったために仕方なく再編集して出版することとなった。。という設定である。
なぜ、そのような設定があるのか、そして村は本当に呪いで人を殺しているのか。是非あなたもこの呪われた本を手に取ってみてほしい。

