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いいことを書いているのに、なぜ届かない?

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つくれるくん|AI実践ラボ

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目次

いいことを書いているのに、なぜ届かない?

AIと磨く、読み飛ばされない言葉のつくり方

公開ボタンを押す直前まで、「今回はちゃんと書けた」と思っていた。

伝えたいことはある。役に立つ内容も入れた。言い切りすぎないように気をつけ、必要な説明も足した。それでも、書き終わった文章を読み返すと、どこかに埋もれてしまいそうな気がする。

そこで「絶対」「知らないと損」「たったこれだけ」を足したくなる。でも、文章の声を大きくするほど、自分の言いたかったことから離れていく。読んでほしい気持ちは本物なのに、読む人に渡す言葉だけが借り物になっていく。

この記事で扱うのは、その手前にある編集です。

「役立つ情報」を「自分が使える情報」として受け取ってもらうには、何を最初に見せ、何を具体的にし、どの順番で並べればいいのか。AIを使いながら、自分の文章の中にある読みにくさを見つけていきます。

たとえば、写真の整理について、こんな一文を書いたとします。

大切な思い出を未来につなぐために、日々の写真を適切に管理することが重要です。

意味はわかります。反対する理由も、とくにありません。けれど、写真を整理できずに困っている人が、これを読んですぐに手を動かせるでしょうか。

少し入口を変えてみます。

旅行の写真を見返したいのに、スクリーンショットの間から探せない。今日は、あの週末の写真だけを一か所に集めます。

後の文には、読む人が入れる場所があります。見返したい写真。探しにくい状況。今日やること。内容の価値を大きな形容詞で説明しなくても、何を受け取れる文章なのかが見えてきます。

写真管理の方針を説明する資料なら、最初の文が必要になることもあります。大切なのは、いまの読者と目的に合わせて書き方を選べることです。

AIに「もっと魅力的に」と頼めば、候補は増えるでしょう。でも、その中からどれを選ぶかは、わからないままです。

だからこの記事では、文章を直すときの問いを具体的にします。

読者は、どの場面でこの文章を開くのか。一文目は、本文で答えられる問いを置いているか。「便利」「わかりやすい」と書いた場所に、実際の動作を入れられないか。話が飛んだところには、どんな説明が一つ抜けているのか。

この問いが持てると、AIから出てきた「整ったけれど自分では使いたくない文」にも、理由をつけて修正を戻せます。

読みながら、いま直したい文章を一つだけ横に置いてください。投稿、案内文、記事の冒頭、商品説明。完成稿でなくてもかまいません。できれば、何を伝えるかは決まっているのに、うまく届く気がしない文章が向いています。

この記事には、書き換えの前後、修正理由、短い練習、AIに渡せる指示を入れています。例文と登場人物はすべて説明のために作成したものです。実際の反応を測った記録や、成果を保証する成功事例ではありません。

最後に目指すのは、誰にでも刺さる文章ではありません。あなたが届けたい相手が、「これは自分の話だ」と入り、途中で迷わず、読んだあとに一つ選べる文章です。その入口は、今ある下書きの中からつくれます。

第一部 読まれない原稿のどこを見るか

文章を責める前に目的を確かめる

「読まれない」という言葉の中には、いくつもの状態が入っています。

そもそも読者へ届いていないのかもしれません。タイトルは見られたけれど、自分に関係する内容だと伝わらなかったのかもしれません。途中までは読めたけれど、何を言いたい文章なのかがわからなくなったのかもしれません。

また、最後まで読んで理解したうえで、今は行動しないと決めた人もいるでしょう。それをすべて「文章が弱い」と呼ぶと、どこを直せばよいかわからなくなります。

この記事で主に扱うのは、文章の中で確かめられることです。読む相手と目的が合っているか。入口と本文のつながりがあるか。意味を補う負担が大きすぎないか。読んだあとに何を判断できるのか。配信の仕組みや表示回数の多寡だけで、文章の質を決めることはしません。

ここで、文章を二つ思い浮かべてください。一つは、商品のよさを知ってもらう紹介文。もう一つは、申し込んだ人へ開始時刻の変更を知らせる連絡です。

前者では、相手がまだ気づいていない使い道を示す必要があるかもしれません。後者では、「何が何時に変わったのか」を先に知らせたいはずです。どちらにも同じように「続きが気になる一文」を足すと、変更連絡では肝心の情報が後ろへ押しやられてしまいます。

良い文章の型を先に当てるより、今回その文章にしてほしい仕事を決めます。関心を持ってもらう。手順を理解してもらう。条件を比べてもらう。変更点を確認してもらう。同じ書き手でも、仕事が違えば編集の判断は変わります。

まず、あなたの下書きの上に、読者に何を持ち帰ってほしいかを一文で書いてください。「よいと思ってもらう」では、まだ広すぎます。「自分の状況で使える方法かどうか判断できる」「二つの案の違いを説明できる」といった、読み終えた状態まで進めてみます。

一つの案内を読み手の側から見直す

写真整理のオンライン練習会を開く澪さんの案内を、解説用の例として使います。ここで示す条件の範囲で、文章の直し方を考えます。

企画の内容は、次のとおりです。

参加者は、見返したい一回の旅行の写真を選びます。同じ場面の写真を見比べ、自分が探しやすい一つのまとまりにし、名前をつけます。選びきれない写真は、その場で削除せず、あとで見直すものとして分けます。保存先を移す方法や、端末の写真を全部整理する方法までは扱いません。

澪さんの最初の案内は、こうなっていました。

写真整理に興味がある方へ。初心者にもわかりやすく、効率的な写真管理の方法をお伝えするオンライン講座です。実践的なワークを通じて、写真整理の基本を丁寧に学べます。大切な思い出を整理し、暮らしを豊かにする第一歩を踏み出しましょう。

この原稿を見て、すぐに「書き出しが弱い」と結論を出さないでください。最初に、読み手が知りたいことへ答えているかを見ます。

写真を探せなくて困っている人なら、「何をどう整理するのか」を知りたいでしょう。写真を消すのが怖い人なら、「削除しなければ参加できないのか」が気になるかもしれません。保存先の変更を学びたい人なら、その内容を扱うかどうかが判断に必要です。

元の案内は、「写真整理の講座だ」という種類は伝えています。一方で、対象と作業と範囲がぼやけています。「丁寧に学べる」という評価が悪いのではなく、その評価を読者が判断するための材料が少ないのです。

そこで、この段階の修正方針は「もっと強い言葉にする」ではありません。「どの写真を、どこまで扱う会なのかを、読者が判断できるようにする」です。修正の目的をここまで決めれば、AIの提案が目的に合うかも確かめられます。

試しに、次の短い案内へ変えます。

一回の旅行の写真を、あとから見返せるまとまりにする練習会です。写真を選び、自分が探しやすい名前をつけるところまで試します。全部の写真を整理する方法や、保存先を移す手順は扱いません。

これは完成版ではありません。入口の情景や親しみやすさは、あとから調整できます。まずは、何のための案内なのかと、読者が判断する材料がそろうことを優先しました。

元の原稿と比べて、なくなったのは「豊かな暮らし」という大きな表現です。代わりに、読む人が自分の目的と照合できる内容が入りました。文章を良くするために、何かを足すだけではなく、約束の範囲を明確にする方法もあるのです。

読者の年齢より読む直前の行動を書く

読者を考えるとき、年齢、職業、暮らし方から始める方法があります。そうした情報が役立つ場面もありますが、それだけでは今回の一文を決められないことがあります。

同じ人でも、旅行から帰った直後と、家族へ写真を送ろうとしたときでは、知りたいことが違います。前者は、増えた写真をどう扱うかを考えているかもしれません。後者は、とにかくあの一枚を見つけたいのかもしれません。

文章の中で扱う場面を決めるなら、読む直前の行動を具体的に書いてみます。

「写真整理に関心がある人」より、「旅行の写真を送ろうとして、画像一覧を開いたところで止まった人」。「文章を上達させたい人」より、「案内を書いたけれど、最初の一文だけ何度も消している人」。行動が書けると、文章のどこから説明を始めるかが見えてきます。

ただし、具体的であれば何でもよいわけではありません。「火曜日の夜、青い椅子に座っている三十二歳の人」のように細かくしても、今回の説明に関係しない情報なら、書く判断にはつながりません。

役立つ具体化は、次の三つに関係します。

読者が今やろうとしていること その途中で止まっている箇所 今回の文章で選べるようになること

たとえば、澪さんの案内なら、「一回の旅行の写真を見返したい」「全体の整理を考えると始められない」「まず一回分だけなら対象を決められる」と置けます。

この場面は、文章を組み立てるために置いた例です。実際の質問や相談から場面を選べるなら、その記録を使います。記録がない場合には、「こういう人が多い」と断定せず、「この場面の人へ書く」と範囲を決めます。

ここを混同すると、AIが作った人物像が、いつの間にか読者の事実として扱われてしまいます。今回の文章が向いている相手を決めることと、その相手が市場に何人いるかを確かめることは、別の作業です。ここでは、文章の中身を選ぶための場面を扱います。

読む前に知っていることを分ける

場面が決まったら、読者がすでに知っていることと、これから知ることを分けます。同じ説明をする場合でも、出発点によって必要な情報が変わります。

澪さんの練習会を、三人が読む場面を考えてみましょう。三人とも説明のために設定した読者です。

一人目は、写真整理の方法を調べ始めた人です。練習会の存在も知りません。この人には、何をする会で、どんな困りごとを扱うのかから説明する必要があります。

二人目は、前に澪さんの案内を読んだ人です。練習会があることは知っていますが、自分の写真を使うのか、用意された例で練習するのかを覚えていません。この人へ同じ理念の説明を長く送るより、作業の内容を示すほうが目的に合います。

三人目は、すでに申し込んだ人です。参加を決める文章は、もう必要ありません。今知りたいのは、事前に何を用意し、当日どこから参加するかです。

一人目向けの文章を、そのまま三人目へ送ると、知っている話が続き、必要な準備を探さなければなりません。三人目向けの短い連絡を一人目に見せると、「そもそも何の会か」が伝わりません。

ここで使えるのが、読む前と読んだあとを二行で書く方法です。

読む前:会の存在は知っているが、自分の写真を使うかどうかは知らない。

読んだあと:自分の写真で練習する会だとわかり、参加前に対象を選ぶ必要があると判断できる。

二行の差が、今回説明する内容になります。その差に入らない話は、別の場所へ移せないかを考えます。

この練習は、文章を短くするためだけのものではありません。読み手に初めて伝えるべきことを、うっかり省くのを防ぐためにも使えます。書き手が毎日使っている企画名や作業名は、初めて読む人には説明が必要かもしれません。

小さな課題で出発点の違いを見つける

次は、地域図書室が開く読書会の案内を使った練習です。参加者は、持ち寄った本から気になった一文を一つ選びます。紹介を聞くだけの参加もできます。本の貸し借りは当日は行いません。

原稿は、こうなっています。

次回も、いつもの形で開催します。まだの方は、お好きな一冊をご準備のうえ、お気軽にどうぞ。

この文を初参加の人が読むと、何がわからないでしょうか。書き直す前に、わからないことを三つ挙げてください。

回答の一例は、「いつもの形とは何か」「本のどこを紹介すればよいか」「話さずに聞くだけでもよいか」です。日時や場所も必要ですが、ここでは本文の表現から見つかる説明不足を取り上げています。

修正例は、こうできます。

今回は、持ち寄った本から気になった一文を一つ選び、その一文について話します。紹介を聞くだけの参加もできます。初めての方も、ご自分に合う参加のしかたを選んでください。

「お気軽に」を強める代わりに、何をする会なのかと、参加方法の選択肢を示しました。読者が気軽だと感じるかは、その人次第です。書き手ができるのは、判断に必要な材料を渡すことです。

一方で、前回も参加した人へ送る連絡なら、同じ説明をすべて繰り返す必要はないかもしれません。「今回は、本の貸し借りは行いません」と、前回との違いを先に知らせる必要がある場合もあります。読む前に知っていることが変われば、同じ素材でも順番が変わります。

この例で持ち帰りたいのは、初参加者へいつも長く説明しよう、という結論ではありません。「いつもの」「あれ」「前と同じ」という言葉の外側にいる読者がいないかを確かめることです。内輪では短く伝わる言葉でも、入口にいる人には中身が見えないことがあります。

読者の気持ちを決めつけずに障害を見つける

読む人の場面を考えるとき、「不安なはず」「面倒なはず」「本当は変わりたいはず」と、心の中まで決めてしまうことがあります。気持ちに寄り添おうとして、読者が言っていない感情を押しつけないようにします。

たとえば、写真整理の案内で「写真が片づかず、毎日罪悪感を抱えていませんか」と書く場合を考えます。実際にそう話す読者がいて、その人へ書くなら、気持ちを扱う意味はあります。しかし、単に旅行の写真を探したいだけの人にとっては、急に重い話へ連れていかれたように感じるかもしれません。

場面を表す言葉なら、相手が当てはまるかを確かめやすくなります。

写真を送りたいのに、探すところで手が止まることはありませんか。

これなら、罪悪感があるかどうかを決めずに、起きている行動を示せます。感情を書くな、という意味ではありません。本人が言った感情、自分が実際に感じた感情、書き手が想像した感情を混ぜないことです。

特に避けたいのは、文章を読ませるために悩みを大きくする修正です。「写真が見つからない」を「大切な時間を失い続けている」へ変えると、扱う問題の大きさまで変わってしまいます。本文が一回分の写真をまとめる練習なら、入口もその範囲で十分に具体的にできます。

読者の障害を探すときは、まず行動で書きます。「準備するものがわからない」「二つの方法の違いがわからない」「自分が対象に含まれるか判断できない」。感情の言葉がなくても、説明すべきことは見えてきます。

四つのつまずきを原稿の中で探す

ここでは、読む途中のつまずきを四つに分けてみます。厳密な心理分類ではなく、編集の場所を探すための点検用の分け方です。

一つ目は、関係がわからないことです。「重要なお知らせ」と書かれていても、誰に何の関係があるのかわからなければ、読む必要を判断しにくい。対象者や出来事を探します。

二つ目は、対象が見えないことです。「これを整理します」「適切に対応します」のように、何を扱うのかが省かれている場合です。書き手には見えているものが、読者の画面にはないかもしれません。

三つ目は、つながりが見えないことです。方法の説明はあるけれど、なぜそれを使うのかわからない。結論はあるけれど、どの例からその結論になったのかわからない。段落の間で一つ説明が抜けている場合があります。

四つ目は、読み終えたあとが見えないことです。内容は理解できたけれど、何を選ぶ、何を準備する、何を確認すればよいかがわからない。行動を求めない文章でも、持ち帰る問いや見方がぼやけていないかを確認します。

たとえば、次のレビュー依頼を見てください。これも説明用に作成した例です。

お忙しいところ恐縮ですが、資料をご確認いただき、ご意見をお願いいたします。必要に応じて修正を進めたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

礼儀はあります。ただ、受け取った人は何を見ればよいでしょうか。どのページか。誤字を探すのか。構成を選ぶのか。回答はどの形か。文章の丁寧さとは別に、対象と読み終えたあとの動作が不足しています。

今回の設定が「二、三ページにある二つの構成案から、進める案を選んでほしい」であれば、診断は具体的になります。「お願いの言葉を強める」より、「確認箇所と判断してほしいことを示す」のが先です。

修正例は、こうです。

資料の二、三ページにある構成案を見て、どちらで進めるかご意見をください。今回は、文章表現の修正は不要です。案を選んだ理由も一言添えていただけると助かります。

実際の依頼なら、資料へのアクセス方法や期限も必要に応じて添えます。ただし、元の材料にない期限をAIに作らせてはいけません。足りない項目を見つけることと、その中身を勝手に決めることは分けます。

最初に直す場所を一つ選ぶ

点検すると、気になる場所がいくつも見つかるかもしれません。全部に同じ重みで手をつける前に、読者の判断を止めている箇所を探します。

写真整理の案内で、少し硬い言葉がある一方、何をする会かが書かれていないなら、後者を先に直します。予定変更の連絡で、語尾が重なっている一方、変更後の時刻が見つからないなら、先に時刻を明示します。

この優先順位は、「魅力を後回しにする」という意味ではありません。読者に伝わる材料がないまま表現を磨くと、曖昧な内容をなめらかにするだけで終わることがあります。まず内容を判断できる状態へし、そのあとで入口や言葉を整えます。

次の三つの問いを使えます。

これがわからないと、文章の意味そのものを取り違えるか これがわからないと、自分が対象か判断できないか これがわからないと、次の動作を間違えるか

どれかに当てはまる箇所は、言葉の好みより先に確認します。一方で、「こちらの表現のほうが柔らかい」といった違いは、意味をそろえてから比べられます。

練習として、「参加しやすい会です。いつもと違う場所で行うため、詳細をよくご確認ください」という文を見ます。気になるのはどこでしょうか。

回答の一例は、「違う場所がどこなのか、文面からわからない」です。「参加しやすい」を「気軽に参加できる」へ変えても、この問題は残ります。詳細へのリンクを置くなら、そこに何があるかを示し、集合先を本文で知らせる必要がないかも考えます。読者が当日使う連絡なら、場所の情報を遠くへ追いやらないほうがよい場合があります。

同じ知らせでも目的が変わると冒頭が変わる

イベントの開始時刻を午後六時から六時半へ変更する、という条件で考えます。会場は変わりません。参加可否の返答は不要という設定です。

下書きは、こうでした。

皆さまによりよい時間をお届けするため、運営一同準備を進めております。このたび一部内容について調整を行うことになりました。お忙しいところ恐縮ですが、最新のご案内をご確認いただけますと幸いです。

この文章では、何が変わるかを読む人が探せません。もし目的が「変更点を間違いなく確認してもらう」なら、診断の軸も明確です。

開始時刻を、午後六時から六時半へ変更します。会場は変わりません。参加可否のご返信は不要です。

この修正は、言葉を派手にしていません。それでも、連絡として必要な情報を読み取れます。理由やお詫びが必要なら、そのあとへ続けます。

一方、まだ申込みをしていない人へ初めて紹介する文章で、冒頭から「六時から六時半へ変更します」と書いても、何の催しかはわかりません。初回の案内には企画の対象や内容が必要です。同じ情報でも、誰へ何の目的で届けるかによって、先に置くものが変わります。

ここからわかるのは、強い書き出しの一覧だけで文章を選べないということです。冒頭の技術を学ぶ前に、今の読者の出発点を決めておくと、魅力的な候補の中から、役割に合うものを選べます。

AIには読者のふりより不明点を拾ってもらう

「読者になりきって評価して」と頼むと、もっともらしい感想が返ってくることがあります。ただし、その感想は実際の読者の反応ではありません。高評価が出ても、文章が読まれることを確かめたことにはなりません。

この段階では、原稿に書かれていることと、足りない説明を分ける補助として使います。

次の下書きを初めて読む人が、本文だけから確認できる情報を整理してください。対象者、扱う内容、今回の範囲、読むことで判断できることを示してください。書かれていないことは推測で埋めず「本文からは不明」としてください。その不明点が、読者のどの判断を妨げるかを説明してください。読者の実際の反応や人気は予測しないでください。

澪さんの最初の案内にこの指示を使うなら、「写真整理に関心がある人向け」「オンラインの講座」という情報は拾えます。一方で、「自分の写真を使うのか」「保存先の変更も扱うのか」は、原稿だけでは不明です。

AIから不明点が出たら、全部を本文へ足すわけではありません。今回の目的に必要かを判断します。たとえば、短い予告では申込み方法がまだ必要ないこともあります。参加直前の案内では、接続先や準備物が不可欠になるでしょう。原稿の役割を先に決めたのは、ここで足す内容を選ぶためです。

また、AIが見つけなかった不明点を、書き手が見つけることもあります。AIの診断が完了したから原稿も完成、とはせず、自分の目的と読者の場面へ戻って確認します。

第一部の練習 原稿に短い診断をつける

手元の原稿を一つ選び、本文を変えずに、次の五行を書いてください。

この文章を読む直前、相手は何をしようとしているか。

すでに知っていることは何か。

今回初めて知る必要があることは何か。

読み終えたあと、何を判断できるとよいか。

その判断を止めている説明不足はどこか。

澪さんの案内なら、回答例はこうなります。

読む直前:見返したい旅行の写真を探し、全体を整理することまで考えて手が止まった。

既知:写真が多いと探しにくいこと。自分の写真をまとめたいという目的。

必要な新情報:この会では一回の旅行を対象にし、写真を選んで名前をつけるところまで試すこと。

読み終えた状態:自分がしたい整理と、この会で扱う作業が合っているか判断できる。

最初に直す場所:対象にする写真の範囲と、行う作業が曖昧なところ。

この五行が書けたら、原稿に対して「何となく弱い」とだけ感じていた状態から進んでいます。まだ、心をつかむ一文を作れていなくてもかまいません。どこから、誰を、どんな内容へ案内するかが決まったからです。

次に扱うのは、その場面を文章の入口へどう置くかです。読者の悩みを大げさにせず、説明のすべてを一文に詰め込まず、それでも自分に関係する内容だとわかる入口をつくっていきます。


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