はじめに:海がくれた、心を癒す小さな宝物
あなたは「シーグラス」をご存じですか?
海辺に佇み、波打ち際を歩いていると、ふと目に飛び込んでくるガラスのかけら。
それはただのゴミではありません。長い年月をかけて波に磨かれ、角が取れ、曇りガラスのようなやさしい風合いをまとった、自然が生み出したアート作品です。
シーグラスには、海の記憶が閉じ込められています。
どこから流れ着いたのか、どんな旅をしてきたのか──。同じものは二つとない形や色に、つい想像を膨らませてしまう。そんなロマンと癒しの力を秘めています。
私が初めてシーグラスを拾ったのは、落ち込んで一人で訪れた冬の海でした。
冷たい潮風の中、何も考えずに歩いていたとき、足元にきらりと光る小さな青いかけらが転がっていました。それを手に取った瞬間、不思議と心が温かくなったのを覚えています。
それ以来、私は休日のたびに海へと足を運ぶようになり、シーグラス拾いが私の癒しとインスピレーションの源になりました。そして、ただ集めるだけでなく、それをアクセサリーにしたり、写真を撮ってSNSに投稿したり、気づけば“表現”の手段にもなっていました。
この本は、そんな私自身の体験と、シーグラスに魅せられてきた日々の記録です。
第1章では、シーグラスとの出会いや拾うときのコツ。
第2章では、自然の美しさを引き出す磨き方やコーティング方法。
第3章では、アクセサリーとして形にする方法を、初心者でも再現できるように丁寧に解説しています。
そして第4章では、実際にハンドメイド作品として販売するための導線やブランディングのコツをまとめました。
「ものづくりは苦手…」という方もご安心ください。
本書では、難しい工具や特別な技術を使わなくても、自然の美しさとあなた自身の感性で“作品”になるコツをお伝えしています。
誰かにとっては“ただのガラス”かもしれない。
けれど、あなたの手で命を吹き込めば、それは“世界に一つだけの宝物”になります。
この一冊が、あなたとシーグラスとの素敵な出会いのきっかけになり、
日常の中に、ほんの少しの癒しとときめきを運ぶことができたなら、これ以上の喜びはありません。
さあ、あなただけの物語を、海から見つけに行きましょう。
第1章:シーグラスとの出会い ― 自然がくれた宝物
1-1. シーグラス拾いの楽しさと注意点
波打ち際を歩いていると、キラリと光る小さなガラス片が目に入ります。初めてそれを見つけたとき、「これがシーグラス?」と半信半疑ながらも手に取り、その滑らかさと淡い輝きに、心を奪われたのを今でも覚えています。
シーグラス拾いは、まるで宝探しのようなワクワク感があります。でも、ただ歩けば見つかるというものでもありません。コツがあります。
まずは「タイミング」。潮が引いた直後、波が砂や石を洗い流した後が狙い目です。特に干潮時には、普段は見えない場所に小さなガラスのかけらが顔を出します。前日に雨が降ったり風が強かったりすると、波が強くなり、シーグラスが打ち上げられやすくなります。
次に「場所」。人が多く訪れる観光地よりも、少し外れた浜辺のほうが“掘り出し物”に出会える確率は高いです。ただし、私有地や保護区域には立ち入らないようにしましょう。シーグラスは「自然物」ですが、場所によっては採取が禁止されていることもあります。事前に地域のルールを調べておくことが大切です。
そして「装備」。サンダルよりも靴、素手よりも手袋。ガラスは滑らかに削られているとはいえ、まれに鋭い破片が混じっていることもあります。安全第一で楽しむのが、長く続けるコツです。
1-2. ダラースターンの探し方 ― 旅と発見の記録
私がシーグラス拾いに本格的にのめり込むきっかけになったのは、ダラースターンを探しに行った旅でした。ダラースターン――それは北米西海岸の一部で見つかる、星形の陶片の愛称。もともとは古い皿やタイルの一部で、海を旅して角が削れ、美しい星形だけが残されたものです。
太平洋沿岸を南下しながら、いくつもの浜辺を訪ね歩きました。朝日を浴びながら無心に波打ち際を歩く時間。ガラス片のきらめき、波の音、鳥の声。自然の中で心がリセットされていくような、そんな感覚。
ある日、小さな入り江で、ついにその“星”と出会いました。白地に青い模様が浮かぶ五角形。それを手にした瞬間、「旅をしてよかった」と心の底から思えました。
ダラースターンは運に頼るところも大きいですが、見つけるコツはあります。例えば、川が流れ込む場所や、瓦礫の多い浜辺は陶片が溜まりやすい傾向があります。そして何より、「今日は見つからなくても、また来よう」と思える気持ちこそが、発見へとつながる一歩なのです。
1-3. お気に入りを見つけた瞬間
どんなに小さくても、特別なひとつがあります。それは「見つけた瞬間の感動」と強く結びついているからです。