はじめに
「ゲームを作るなんて、特別な才能を持った人にしかできない」「プログラミング？ 数学？ 文系の私には絶対無理…」
かつての私が、そう固く信じていた言葉です。
あなたも、子供の頃に夢中になったゲームの世界を、いつか自分の手で創り出してみたい、そう思ったことはありませんか？
キラキラした目でブラウン管（あるいは液晶画面）を見つめ、コントローラーを握りしめながら、「こんなゲームがあったら面白いのに」「自分ならこうするのに」と、胸を高鳴らせた経験はありませんか？
私はありました。毎日、飽きることなくゲームに没頭し、いつしか「遊ぶ側」から「作る側」への憧れを抱くようになりました。
しかし、その夢は、あまりにも高く、分厚い壁の前に、あっけなく砕け散りました。
立ちはだかったのは、「プログラミング」という名の巨大な壁。そして、「数学」という、私にとっては解読不能な暗号のような学問。
典型的な文系で、複雑なロジックや数式とは無縁の人生を送ってきた私にとって、ゲーム開発は、宇宙飛行士になるのと同じくらい、現実離れした夢物語だったのです。
「才能がないから」「知識がないから」「文系だから」… そんな言い訳を盾に、私は早々に夢を諦め、心の奥底にそっとしまい込みました。
──そう、あの日、AI（人工知能）に出会うまでは。
数年前から囁かれ始めたAIの進化は、私の想像を遥かに超えるスピードで進んでいました。そしてついに、文章や絵を描くだけでなく、「プログラムコードすら生成できるAI」が登場したのです。
最初は半信半疑でした。「そんな魔法のような話があるはずがない」と。しかし、インターネット上には「AIに指示するだけでゲームが作れた」「専門知識ゼロでも開発が可能に」といった、信じられないような報告が次々と現れ始めました。
「まさか… いや、でも、もしかしたら…？」
心の奥底でくすぶっていた小さな火が、再び燃え上がるのを感じました。
長年、私を縛り付けてきた「プログラミングの壁」「スキルの壁」が、音を立てて崩れ落ちるような、そんな衝撃的な感覚。
そして、私はAIと共に、かつて諦めたはずの夢への再挑戦を始めたのです。
もちろん、道は平坦ではありませんでした。
AIが生成したコードは、そのままでは動かないことも多く、エラーとの格闘、AIとの試行錯誤の対話が続きました。専門用語に戸惑い、何度もくじけそうになりました。
しかし、それでも──。
私はついに、自分の手で、ゼロからゲームを完成させ、そして、それをインターネット上で「販売」するところまで漕ぎ着けたのです。
特別なプログラミングスクールに通ったわけではありません。分厚い技術書を読破したわけでもありません。ただ、AIという強力なパートナーの助けを借り、試行錯誤を繰り返しただけです。
この本は、そんな「特別なスキルを持たない、どこにでもいる文系の人間」が、AIの力を借りて、どのようにしてゲーム開発という夢を実現し、さらにはそれを「販売」という形にまで結びつけることができたのか、そのリアルな軌跡を余すことなく記したものです。
本書でお伝えするのは、複雑なプログラミング理論ではありません。私が実際に経験した、
AIとどのように対話し、ゲームのアイデアを形にしていったのか？
立ちはだかる技術的な壁（エラーや知識不足）をどう乗り越えたのか？
完成したゲームを、具体的にどうやって販売に繋げたのか？
販売プラットフォームとのやり取りで、どんなことが起こったのか？
といった、泥臭くも実践的なプロセス、いわば「知識ゼロから始めるAIゲーム開発＆販売ロードマップ」です。
もしあなたが、かつての私のように、
「ゲームを作りたいけど、スキルがないから…」と諦めている
「プログラミング学習に挫折した経験がある」
「AIを使って何か新しいことを始めたい」
「自分のアイデアや創造性を形にして、できれば収益にも繋げたい」
そう考えているのなら、この本は、きっとあなたのためのものです。
AI時代の到来は、「ゲーム開発は一部の専門家のもの」という常識を、根底から覆しました。
今や、必要なのは専門知識や技術力よりも、「作りたい」という情熱と、AIというツールを使いこなすちょっとしたコツ、そして「まず一歩を踏み出す勇気」なのかもしれません。
この本が、あなたの「作りたい」という気持ちに火をつけ、諦めかけていた夢への扉を開く、ささやかなきっかけとなれば、著者としてこれ以上の喜びはありません。
さあ、ページをめくり、AIと共に、あなただけのゲーム開発ストーリーを始めましょう！
第1章：夢への再挑戦 - AIという名の魔法の杖
ブラウン管の前で夢見た日々
「ピコピコピコ…」あの独特の電子音と、ブラウン管の奥で繰り広げられる色とりどりのドット絵の世界。
私の子供時代は、ファミコンをはじめとするテレビゲームと共にありました。学校から帰るとランドセルを放り投げ、友達と集まってはコントローラーを奪い合う毎日。
画面の中の勇者になりきって冒険したり、レーシングカーで最速を目指したり、落ちてくるブロックをひたすら消したり…。そこは、現実の制約から解き放たれた、無限の可能性が広がる魔法の箱でした。
もちろん、ゲームは大好きでした。遊ぶのは最高に楽しかった。でも、心のどこかで、それだけでは満たされない気持ちが芽生え始めていたのです。
「このキャラクター、もっとこう動かせたらいいのに」「こんなルールのゲームがあったら絶対面白いのに」。
そんな風に、ゲームの世界にもっと深く関わりたい、自分の手で何かを生み出してみたい、という漠然とした「作り手」への憧れが、むくむくと膨らんでいきました。
しかし、その淡い夢は、現実という名の分厚い壁の前に、いとも簡単にはじき返されます。当時の私にとって、「ゲームを作る」ということは、星に手を伸ばすような、途方もないことでした。
雑誌の後ろの方に載っている、謎の英数字の羅列（今思えば、あれがプログラムコードだったのでしょう）。ゲーム開発には「数学」や「物理」の知識が不可欠だという噂。
思い出してください。「はじめに」でも少し触れましたが、私は根っからの文系人間。数学のテストは、赤点を回避するのがやっと。教科書を開けば、そこに並ぶ数式や記号は、まるで古代の呪文のようにしか見えませんでした。
論理的に物事を考えたり、複雑なルールを組み立てたりするのは大の苦手。「ゲームを作るなんて、理系の、それも数学が得意な一部の天才にしかできないことなんだ」。そう自分に言い聞かせ、憧れは憧れのまま、手の届かない場所にそっと封印することにしたのです。
「ゲームづくりも出来たらよかったんだけど、残念ながら文系。数学は欠点だし、今でもプログラムやコードなんて書けません」──そう呟きながら。
AIとの出会い - 「できるかもしれない」という衝撃
時は流れ、すっかり大人になった私は、相変わらずゲームを愛する一消費者として日々を過ごしていました。作る夢は、遠い昔の記憶の彼方。
そんなある日、世界を揺るがすニュースが飛び込んできました。「AI（人工知能）が、人間のように文章を書き、絵を描き、さらにはプログラムコードまで生成できるようになった」というのです。
「AIでテトリスが作れるらしい」。そんな衝撃的な情報に、私の心は大きく揺さぶられました。
Claude、Geminiといった具体的なAIの名前と共に、「素人でもゲーム開発が可能になった」という体験談が、インターネット上に溢れ始めたのです。
長年、私をがんじがらめにしていた「文系だから」「プログラムなんて書けない」というコンプレックスの鎖が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちるような感覚でした。
「もしかして… 私にも？」
震える指でキーボードを叩き、AIとの対話を始めました。まずは噂のテトリスから。「テトリスみたいなゲームを作ってみたい」と、恐る恐るAIに語りかけます。
すると、驚くべきことに、AIは即座にそれらしいプログラムコードを提示してきました。しかし、現実はそう甘くはありません。
「言われた通りやっても、同じように出来ませんでしたが…」そう、ネットの情報のように、魔法のようにゲームが完成するわけではなかったのです。
コードをコピペしてもエラーが出たり、意図した通りに動かなかったり。AIの答えがいつも正しいとは限らず、質問の仕方を変え、エラーメッセージを根気よくAIに伝え、修正を繰り返す、地道な作業が必要でした。
それでも、諦めませんでした。試行錯誤を繰り返すうちに、いくつかの発見がありました。一つは、複雑なゲームを一足飛びに作ろうとするのではなく、もっとシンプルな、昔ながらのレトロゲームのようなものであれば、AIの助けを借りて形にできる可能性が高いということ。
そしてもう一つは、特別な開発環境を必要としない「ブラウザゲーム」という形式であれば、技術的なハードルが比較的低いということでした。
テーブルテニス、インベーダー、そしてライフゲーム…。AIに指示を出し、生成されたコードを理解しようと努め、動かなければまたAIに質問する。
その繰り返しの中で、少しずつですが、画面上で何かが動く、「ゲームらしきもの」が形になっていく手応えを感じ始めていました。
かつて、呪文のようにしか見えなかったプログラムコードが、AIという通訳を介することで、少しずつ意味のあるものとして立ち上がってきたのです。それは、暗闇の中に差し込んだ一筋の光のようでした。
最初の「作品」の誕生 - ライフゲーム・バトル
数えきれないほどの試行錯誤と、AIとの長い対話の末、ついに一つのゲームを完成させることができました。それが、本書の制作にも繋がった「戦略的ライフゲーム・バトル」です。
これは、生命の誕生と淘汰をシミュレートする古典的な「ライフゲーム」のルールをベースに、プレイヤー（青いセル）とAIが操る敵（赤いセル）が、限られた盤面上で生き残りをかけて争う対戦型のシミュレーションゲームです。
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