
AIの下書きが毎回バラつくのは、指示が足りないからじゃなくて、お手本を一本も渡してなかっただけでした今回いちばん伝えたいこと
AIに文章を頼むと、昨日はちょうどよかったのに、今日は妙にかたい。別の日は説明が長く、肝心のお知らせが埋もれている。そんな経験はないでしょうか。
こちらは毎回、目的や文字数、読み手まで丁寧に伝えている。それでも仕上がりがそろわないと、「もっと細かく指示を書かなければ」と考えがちです。僕も店舗の案内文を作るたびに条件を足していました。
普段、2店舗を経営しながら、店舗集客の自動化をして、3年以内に10店舗を目標に活動しつつ、AIの活用サポート/AIを使った自動集客の仕組みづくり/AIに関するセミナーを行っています。実務でAIを使うほど感じるのは、長い指示よりも「完成イメージのお手本を1本」渡したほうが、狙った文章に近づきやすいということです。
この記事では、手元にある過去の文章をお手本にして、AIの出力をそろえる方法を具体的に紹介します。特別な設定は不要で、今日の連絡文から試せます。
出力がブレる本当の原因

「丁寧に書いてください」と伝えても、丁寧さの基準は一つではありません。かしこまった敬語を重ねる丁寧さもあれば、短い言葉で相手を気づかう丁寧さもあります。AIは、指示だけではこちらの頭の中にある正解まで見られません。
同じように、「簡潔に」「親しみやすく」「店舗らしい文章で」といった言葉にも幅があります。指示が間違っているのではなく、言葉だけでは完成形の輪郭が広すぎるのです。
条件を増やし続けると、今度はAIがすべての条件を同じ強さで処理しようとして、文章が不自然になることもあります。足りなかったのは、指示の量ではなく「このあたりを目指してほしい」と示す完成の見本でした。
- 「丁寧に」は、人によって想像する言葉づかいが違う
- 「短く」は、何を残して何を削るかまで決まらない
- 「自分らしく」は、過去の文章がなければAIには判断しにくい
- 条件を足すだけでは、文の空気感や情報の順番まで共有しにくい
お手本を渡すだけで出力が安定する仕組み
お手本には、言葉で説明しにくい基準がまとまっています。1文の長さ、改行の間隔、最初に何を伝えるか、お願いをどの程度やわらかくするか、最後をどう締めるか。文章を1本見せるだけで、これらをまとめて共有できます。
大切なのは、お手本の内容を写してもらうことではありません。参考にしてほしい要素を指定し、新しく伝えたい事実は別に渡します。するとAIは「内容」と「仕上がりの基準」を分けて扱いやすくなります。
僕はこの考え方を、料理の完成写真に近いものだと捉えています。材料と手順だけでも作れますが、完成写真があると、盛り付けや全体の雰囲気まで合わせやすくなります。文章も同じです。
お手本を渡す3手順

難しい準備は必要ありません。過去に自分で書いた文章や、修正後に「これなら送れる」と思えた文章を1本選び、次の順番で渡します。
STEP1:用途が近い過去の文章を1本選ぶ
休業のお知らせを作るなら、過去の休業案内や営業時間変更の連絡など、目的が近いものを選びます。長文のお知らせを作りたいのに、短いSNS投稿をお手本にすると、構成の基準がずれやすくなります。
個人名、連絡先、予約情報などは、そのままAIへ渡さず、削除するか仮の表現に置き換えます。お手本として必要なのは文章の型であり、個人を特定できる情報ではありません。
STEP2:どこを参考にするか伝える
「この文章のように」だけで終わらせず、見てほしい点を3〜4個に絞ります。たとえば「文の長さ」「言葉のやわらかさ」「情報の順番」「締め方」です。逆に、元の文章にある日付や理由は写さないよう明記します。
STEP3:今回の事実と守る条件を分けて渡す
今回伝えたい日付、変更内容、相手にお願いしたいことを箇条書きにします。そのうえで文字数や文体、出力形式を指定します。事実と見本を分けることで、AIが古い内容を混ぜる事故を減らせます。
- 用途が近く、「この仕上がりなら使える」と思える文章を選ぶ
- お手本から参考にする特徴と、写してはいけない内容を伝える
- 今回の事実、文字数、文体、出力形式を別々に指定する
そのまま使える「お手本つき」の頼み方
以下は、店舗から利用者へ臨時休業を知らせる想定で検証したテンプレです。日付や事実、お手本部分を自分の用途に置き換えて使ってください。
これから文章を1本作ってください。
目的:店舗から利用者へ、臨時休業のお知らせを伝える
読み手:普段から店舗を利用してくださっている方
今回伝える事実:
・設備点検のため、8月12日は終日休業します
・8月13日から通常営業です
・すでに予約済みの方には個別に連絡します
次の文章を「完成イメージのお手本」として使ってください。
内容を写すのではなく、文の長さ、言葉のやわらかさ、情報を伝える順番、締め方を参考にしてください。
---お手本---
いつもご利用いただき、ありがとうございます。
誠に勝手ながら、館内メンテナンスのため、7月10日はお休みをいただきます。
ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますと幸いです。
翌日からは通常どおり営業いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
---ここまで---
条件:
・事実にない理由や予定を足さない
・200字以内
・やわらかく、簡潔なです・ます調
・完成文だけを出力する実際にこの形で試すと、伝えるべき事実を保ちながら、お手本に近い長さと順番で文章がまとまりました。出力後は、日付、営業状況、予約済みの方への対応が元の事実と一致しているかを、人の目でも確認します。
いつもご利用いただき、ありがとうございます。
設備点検のため、8月12日は終日休業いたします。8月13日からは通常どおり営業します。
すでにご予約いただいている方には、個別にご連絡いたします。ご不便をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。実際にAIが出力した文章
この出力は、指定した事実以外を足さず、200字以内に収まり、やわらかいです・ます調になっています。お手本の文章をそのまま写さず、「感謝→変更内容→補足→お願い」という流れを引き継いでいる点も確認できました。
お手本がないときは、良し悪しの基準を先に伝える
初めて作る文章で、過去のお手本がないこともあります。その場合は、いきなり完成文を頼むのではなく、まず良い文章と避けたい文章の基準を短く渡します。
- 良い状態:冒頭で要件がわかり、必要な行動が迷わず読める
- 良い状態:1文を短くし、やわらかい敬語でまとめる
- 避けたい状態:前置きが長く、変更点が後半まで出てこない
- 避けたい状態:事実にない事情や、過度なおわびを付け足す
この基準で最初の文章を作り、修正して完成したら、その完成版を次回からのお手本にします。最初から理想の見本がなくても、一度の仕事を次の仕事の基準へ育てられます。
なお、他社の文章を見本にする場合は、固有の表現や内容を写すのではなく、構成や文の長さなどの特徴だけを参考にします。いちばん安全で使いやすいのは、自分で作成・確認した過去文です。
うちの店舗の連絡文で試して、直しの往復が減った話
うちの店舗でも、利用者へ送る連絡文をAIに下書きさせています。以前は「もう少しやわらかく」「最初に要件を出して」「おわびが重すぎる」と、出力を見てから修正を重ねることがありました。
そこで、過去に実際に使い、読みやすいと感じた連絡文を1本選びました。「この文章の文の長さ、情報の順番、締め方を参考にする。ただし内容は写さない」と添えたところ、最初の下書きから意図に近い文章が出やすくなりました。
結果として、AIとの直しの往復は減りました。AIが急に賢くなったのではなく、こちらが合格ラインを見える形にしたからです。複数の店舗で文章の雰囲気をそろえたいときにも、同じお手本を共有すると判断基準を合わせやすくなります。
ただし、毎回そのまま送ることはしません。日時、対象者、営業への影響など、間違えると困る事実は必ず確認します。お手本は仕上がりをそろえる道具であり、事実確認の代わりではありません。
今日からできる「見本を一枚用意しておく」習慣
まずは、よく作る文章を一種類だけ選んでください。店舗のお知らせ、問い合わせへの返信、社内共有、SNS投稿など、繰り返し発生するものが向いています。
その中から「次もこの雰囲気で作りたい」と思える完成版を1本だけ保存します。ファイル名は「休業案内のお手本」「問い合わせ返信のお手本」のように、用途がすぐわかる名前にしておくと迷いません。
- よく作る文章を一種類だけ決める
- 自分で確認済みの完成文を1本選ぶ
- 個人情報や古い日付を削除して保存する
- 参考にする特徴を3つメモしておく
- 次回は、新しい事実と一緒にAIへ渡す
AIへの指示を長くする前に、完成イメージを1本見せる。これだけで、毎回ゼロから好みを説明する負担を減らせます。まずは今日使った文章の中から、次回も使いたい1本を残してみてください。
ThreadsやInstagramでも、2店舗の運営で試しているAI活用を発信しています。日々の仕事に取り入れやすい使い方を知りたい方は、@tatsuya.nishiwaki_ をのぞいてみてください。
