【エッセイ】サウンド・オブ・サイレンスな夜
ミカジー
深夜まで起きていると昔のことばかり思い出す。
結婚してからしばらく女遊びを控えていた自分だったけど00年代以降の出会い系サイトの隆盛ぶりには温厚で天使な俺もさすがに黙っていられなかった。
待ちガイルからのサマソを放つときがきたと思った。

ただしすでに30代半ばを迎えた自分は仕事やその延長での酒席の場が多くなるにつれて結婚前のようなスリムな体型は維持できていなかった。
とうの昔に若い女の子を魅了できるような見た目ではなくなっていた。
和製・金正男のような風貌になっていた。

せっかく利用できるようになった出会い系サイトでも必然的にぽっちゃりさんや年増を狙うようになっていた。
・・・・・・

季節は冬。
金曜日の19:00。
場所はJR池袋駅の北口。
俺は出会いサイトで知り合った女と待ち合わせをしていた。
その日に会う女の子は珍しく20代前半。
背は低めだけど顔写真は朝ドラ若手女優ふうの透明感を漂わせていた。

その女の子、ちゅらさん(仮名)とサイトで接点ができたのはそろそろコートを羽織り始める冬のころ。
若い子特有の短文進行。
その後さらにケータイ番号をGETしてショートメッセージへ移行する。
俺はメッセージ内で強めの「踏み絵」を迫った。
👼「会ったらホテルデートもあり?」
👩🏻「はい」
ちゅらは躊躇なく踏み込んできた。
👼(久しぶりの20代やで…)
・・・・・
季節は冬。
金曜日の19:00。
JR池袋駅北口。
円光とデリの待ち合わせ場所として有名なスポットでちゅらと待ち合わせしていた。
その日もそこかしこにいかがわしいカップルが合流する。
そして…
ちゅらが現れた。
ダークブルーのダッフルコートにカーキのミニスカート、黒のロングブーツ。
第一印象は想定を超える「当たり」だった😜
👼こんばんは!
👩🏻(コクリ)
👼よし、行こっか!
👩🏻(コクリ)
拒否感ゼロ!
👼(勝ちだよ…)
池袋駅から伸びる山手線の線路を右に見ながらホテル街へゆっくり歩く。線路の先に見える跨線橋。さらにその向こうにキラキラ光るゴミ処理場の高くて白い煙突がいつになく美しく思えた。

👼お仕事早めに終わったんだね
👩🏻(コクリ)
👼(なんやろ、緊張しとるんかな?)
歩いて10分程度で大きめの建物の前に着く。
👼寒いからここ入ってから話そう!
👩🏻(ニコニコしてコクリ)
ホテルin!
・・・・・・
部屋に入りお互いのコートを脱ぐ。
俺はエアコンの暖房をONにして女の子をソファへ呼ぶ。
少し話して和もうとしたときだった……
そそくさとちゅらは自分の黒いバッグを取りに行く。
ノートとボールペンを出してきてテーブルに置く。
そしてスラスラとなにやらメモをしている……
👼・・・・・・
ちゅらはその作業を終えてノートを自分に見せてきた。
私は言葉が話せません。それでも大丈夫ですか?
👼(なんや、この子はオシなんか……)
俺は少し戸惑ったけれどあくまでもポーカーフェイスに努めて今度は逆にボールペンを取りちゅらのノートに大きな字で書く。
大丈夫だよ。エッチはできるのか?
ちゅらはニコッと笑う。
・・・・・・
俺はちゅらの服を脱がして、ベットへ移る。
少し恥じらっている様子。
しかし、ゆっくりと体に触れていく。
ちゅらは思いのほかこの手の行為に慣れているようだった。言葉は発せられないけれど情熱的にこちらの動きに合わせてくる——。
サイレントなサウンドが響く。
👼「ちゅら、かわいいな!」
パンツを脱がす。
股の付け根をていねいに開いて俺は顔を近づけた。
そのとき……
激烈な異臭が鼻を突いた。
これまで嗅いだことのないような破壊的異臭だ。
俺は文字どおりベッドから転げ落ちて、のたうち回った。
涙が止まらなかった。

・・・・・・
👼ちゅらちゃん、ごめん…
👩🏻(・・・・・・)
俺はふと思い出したようにちゅらのノートを引き寄せて書いた。
ちゅらちゃん、君はかわいすぎて俺にはむりだった。だから今日はここを出て帰ろう
・・・・・・
池袋駅北口までの線路沿いの道をちゅらの手を引きながら歩く。
改札の前で握手して別れる。
ちゅらの姿が見えなくなるまで見届けた。
そして、俺はすぐに駅のトイレに駆け込んで水道水で鼻の穴をこれでもかと洗浄した。
ちゅらのその後の人生は誰も知らない。
(終わり)
