🔶R07_I-2|過去問題
海洋プラスチックによる環境問題がクローズアップされたことだけでなく、2017年の中国や東南アジア諸国での廃棄プラスチックの輸入禁止措置により、我が国の廃棄プラスチックが滞留したことを受けて、プラスチック資源のリサイクルや再利用の取組が、政府、企業、市民の協力によって進められている。
以上を踏まえ衛生工学分野の技術者として以下の問いに答えよ。
(1)あなたの専門分野における廃棄プラスチックやプラスチック資源循環の問題について、技術者としての立場で多面的な観点から、3つ以上の課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)前問(1)~(3)の事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.水質管理分野における課題
〇観点1:マイクロプラスチックによる水質汚染
・既存処理技術での除去困難性と飲料水への混入リスク
・水生生物への蓄積と食物連鎖を通じた人体影響の懸念
〇観点2:水処理施設における廃プラスチック処理負荷
・スクリーンや沈砂池での夾雑物増加による設備故障とコスト増大
・脱水汚泥への混入による再資源化品質の低下
〇観点3:水処理過程で発生する廃プラスチックの適正処理
・薬品容器や膜モジュール等の大量使用と更新時の廃棄物発生
・汚泥や薬品付着による廃材のリサイクル困難性
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・水環境中に拡散したマイクロプラスチックの回収困難性と長期的生態系影響
▽解決策1:高度処理技術の導入
・浄水場へのMF膜・UF膜導入と下水処理場の最終段階での膜ろ過追加
・オゾン処理や活性炭吸着との組み合わせによる除去効果の向上
▽解決策2:発生源対策の強化
・雨水排水路や下水管渠への流入防止スクリーン設置
・家庭・事業所の排水設備への微細目ストレーナー設置と啓発活動の展開
▽解決策3:監視体制の構築と技術開発
・水道水源や放流水中の濃度定期測定とリアルタイム水質管理の実現
・産学官連携による生分解性プラスチック評価と除去技術の研究開発推進
3.リスク及びその対策
◇リスク及びその対策1:経済的負担の増大
・高度処理設備導入の多額投資と水道料金値上げによる住民負担増加
・補助金活用と広域化による段階的導入とコスト削減の実施
◇リスク及びその対策2:新たな環境負荷の発生
・濃縮マイクロプラスチックの最終処分と焼却時の温室効果ガス発生
・除去物の資源化技術開発と再生可能エネルギー導入によるカーボンニュートラル化
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・水質データの科学的根拠に基づく正確な評価と誠実性の確保
・予防原則に基づく安全側判断と公正・透明性のある技術選定プロセスの確立
☆社会の持続可能性の観点
・水環境保全と経済性のバランスを考慮した長期的視点での計画策定
・産学官や地域住民との協働による発生源対策から処理・監視までの一体的取組