🔶R07_Ⅲ-2|過去問題
山地から河川を経て海岸まで土砂が移動する場全体を流砂系という概念で捉え、この流砂系における土砂の移動に起因した様々な問題が、流砂系のそれぞれの領域において発生している。それらの問題は河川や海岸が有する様々な機能に対して大きな影響を与えており、各領域にまたがる又は流砂系全体に渡る要因により発生することが多いことから、個別領域で対策を実施しただけでは根本的な解決に至らない場合が多い。そのため、複数領域をまたいで総合的な対策を実施していく「総合土砂管理」により流砂系の状況を把握し適切に対策を実行していくことが必要とされている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)土砂動態は河川や海岸が有する様々な機能に対して大きな影響を与えることを考慮して、多面的な観点から、流砂系における土砂に起因する技術課題を3つ抽出し、観点の明記とともに、それぞれの技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち、最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対して総合土砂管理の視点から考えられる2つ以上の解決策を、専門技術を踏まえて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_Ⅲ-2|骨子例:③海岸保全
1.流砂系における土砂課題の多面的抽出
〇治水安全性の観点
・河道堆積による河床上昇と洪水リスク増大
・河口部土砂堆積による内水排除機能低下
〇河川環境保全の観点
・下流河川の河床低下・粗粒化による生息環境劣化
・土砂連続性分断による河川生態系多様性低下
〇海岸保全の観点
・土砂供給量減少による慢性的海岸侵食進行
・沿岸漂砂不均衡による港湾施設維持管理支障
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・流砂系全体の土砂収支不均衡による海岸侵食問題
・不可逆的現象による社会基盤への直接的被害
▽解決策1:ダム堆砂の有効活用システム
・排砂バイパス・排砂ゲート活用による土砂供給回復
・浚渫土砂の海岸域直接投入による土砂循環補完
▽解決策2:流域一体型土砂管理計画
・流域土砂管理データベース構築による統合管理
・関係機関連携による土砂有効活用と適正配置
▽解決策3:沿岸域総合土砂管理手法
・土砂動態精密観測・予測システム導入
・人工リーフシステムによる沿岸漂砂制御
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
1)下流河道の急激な変化リスク
・土砂供給量段階的調整と河床変動監視システム
・可動堰・樋門等機能点検強化と操作不良防止
2)海域生態系の攪乱リスク
・環境配慮型施工計画と生物影響評価徹底
・濁度拡散予測と適応的管理による生態系影響最小化
3)施設間の土砂管理調整不全リスク
・関係機関間情報共有システムと連携協定締結
・リアルタイム管理システムによる一元的土砂管理