🔷R07_I-1|過去問題
機械製品に求められる仕様は高度化し、設計製造をとりまく社会的な環境も変化してきている。これらの状況に対応して新しい技術を開発する必要があるが、その利用に当たっては社会や環境に重大な影響を与える可能性があることを十分に認識する必要がある。
本問は、公益を確保するために、新しく開発した技術を負の側面も含めて多面的に理解したうえで製品に採用する際の考え方について、問うものである。
(1)公益に影響を及ぼしうる新しい技術を1つ想定せよ。機械部門における技術者としての立場で、その技術を機械製品やシステムに適用する場合に公益を確保するために解決すべき技術課題を多面的な観点から3つ抽出し、観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その理由を述べよ。また、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても残存しうる、若しくは新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例:④次世代熱電変換技術
1.次世代熱電変換技術の多面的課題
〇公益に影響を及ぼしうる新しい技術
・熱・動力エネルギー機器分野における技術概要
・ゼーベック効果による温度差の電力変換技術
〇観点1:安全性の観点
・高温動作時の材料安全性確保
・長期使用における材料特性変化と安全性評価手法
〇観点2:環境保護の観点
・希少金属使用による環境負荷低減
・ライフサイクル全体での環境影響評価と持続可能性確保
〇観点3:社会基盤の観点
・大規模導入時の電力系統安定性確保
・既存インフラとの協調制御システム開発と標準化
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題及びその理由
・希少金属使用による環境負荷低減
・将来世代への広範囲かつ長期的影響と持続可能性の観点
▽解決策1:代替材料技術の開発
・希土類元素に依存しない新規熱電材料の研究開発
・ナノ構造制御技術による高効率化実現
▽解決策2:リサイクル技術の確立
・使用済み熱電変換素子からの希少金属回収技術開発
・製品設計段階からの分解・回収考慮設計手法
▽解決策3:材料使用量最適化技術
・有限要素法による熱電性能シミュレーション
・熱電素子のモジュール化技術によるシステム全体効率向上
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
◇リスク1:代替材料の性能不足リスク
・既存材料と同等の変換効率達成課題
・マテリアルズ・インフォマティクスによる高性能材料探索
◇リスク2:リサイクル工程での環境汚染リスク
・有害物質や排水発生による新たな環境汚染
・クローズドループ型システムによる排水・排ガス最小化
◇リスク3:最適化設計による信頼性低下リスク
・材料使用量極限最適化による早期破損可能性
・デジタルツイン技術による状態監視と予防保全
4.業務遂行に必要な要件・留意点
☆技術者としての倫理の観点
・関係者への誠実かつ正確な情報開示と説明責任
・人命安全と公衆利益を最優先とした予防原則アプローチ
☆社会の持続可能性の観点
・将来世代への影響を考慮した持続可能な技術開発
・産学官連携による社会実装と社会的合意形成