🔷R07_I-1|過去問題
2024年1月1日に石川県能登地方を震源とした最大震度7を観測した地震により、石川県を中心に富山県や新潟県において様々な被害が発生した。この地震や津波で、漁船や水産関連施設が損壊し、漁村集落が崩壊するとともに生活インフラも破壊された。
さらに、海岸や海底の地盤隆起により、未だに漁港の利用や漁業の操業に大きな支障が生じている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)水産部門全般を念頭に、大規模災害対策としての復旧・復興業務を実施するうえでの課題を、技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題の中で、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、水産部門の専門技術用語を交えて説明せよ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と、新たに生じうる懸念事項について専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の実現において、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例
1.多面的観点からの課題抽出
〇観点1:水産インフラの機能回復(水産土木)
・地盤隆起による漁港機能の喪失
・段階的復旧計画の策定
〇観点2:水産資源管理と漁業操業の継続性(水産資源及び水域環境)
・海底地形変化による漁場環境の変化
・持続可能な資源管理手法の再構築
〇観点3:水産加工流通機能の復旧と食品安全確保(水産食品及び流通)
・コールドチェーンの寸断
・HACCP体制の確保と生産能力回復
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・水産インフラ機能回復の優先性
▽解決策1:緊急浚渫と段階的航路確保
・海底地形データに基づく優先浚渫
・浚渫土砂の有効活用
▽解決策2:可動式係船施設の導入
・フローティングピア等の早期設置
・漁船の安全性と作業効率の向上
▽解決策3:漁港施設の耐震補強と長寿命化
・液状化対策と耐震性能向上
・ライフサイクルコストを考慮した復旧設計
3.波及効果および懸念事項
◇波及効果
・早期漁業再開による地域経済活性化
・将来災害への強靱性向上
◇懸念事項1:海洋環境への影響
・大規模浚渫による底生生物への影響
・環境モニタリングと対策工の必要性
◇懸念事項2:復旧コストと維持管理負担
・初期投資と事業費負担の増大
・補助制度活用による持続可能な財源確保
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・公益優先と説明責任
・科学的根拠に基づく環境評価
☆社会の持続可能性の観点
・資源循環型施工と環境負荷最小化
・技術的記録の保存と次世代継承