🔷R07_I-1|過去問題
機械製品に求められる仕様は高度化し、設計製造をとりまく社会的な環境も変化してきている。これらの状況に対応して新しい技術を開発する必要があるが、その利用に当たっては社会や環境に重大な影響を与える可能性があることを十分に認識する必要がある。
本問は、公益を確保するために、新しく開発した技術を負の側面も含めて多面的に理解したうえで製品に採用する際の考え方について、問うものである。
(1)公益に影響を及ぼしうる新しい技術を1つ想定せよ。機械部門における技術者としての立場で、その技術を機械製品やシステムに適用する場合に公益を確保するために解決すべき技術課題を多面的な観点から3つ抽出し、観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その理由を述べよ。また、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても残存しうる、若しくは新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例:①AI活用自動設計システム
1.AIを活用した自動設計システムの技術課題
〇公益に影響を及ぼしうる新しい技術
・機械学習による設計者知見の学習と最適化アルゴリズムの活用
・設計効率向上と公益への重大影響の可能性
〇観点1:設計品質・安全性確保
・AIの判断根拠不明確化による設計結果妥当性検証の困難
・学習データの偏りによる想定外使用条件下での安全性確保不備
〇観点2:技術者の技能維持・継承
・自動設計への依存による設計スキルの低下
・熟練技術者の暗黙知継承不備による技術断絶リスク
〇観点3:社会的責任・倫理
・AI設計による事故発生時の責任所在不明確化
・設計プロセス透明性欠如による第三者技術検証困難化
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題及びその理由
・設計品質・安全性確保課題の人命・財産への直接的影響
・構造強度不足による破損事故の緊急性と重要性の最高位
▽解決策1:説明可能AI技術の導入
・AI設計プロセス透明性確保による設計判断根拠の可視化
・設計パラメータ選択理由の理解可能形式での出力
▽解決策2:多段階検証システム構築
・FEM解析・疲労解析等の複数検証手法自動実行システム
・設計基準・安全係数適合性自動チェック機能
▽解決策3:人間AI協調設計体制確立
・重要部位設計の熟練技術者による最終承認義務化
・AI設計結果の複数専門技術者による技術的妥当性検証体制
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
1)設計効率低下による競争力喪失
・並列処理技術による検証高速化とリスク度階層化対策
・材料力学に基づく構造的重要度定量評価システム
2)技術者の過信による判断力低下
・定期的設計レビュー訓練と検証能力テストの継続実施
・複合故障モードの実機試験とシミュレーション乖離検証
3)新技術適用時の予測精度低下
・段階的導入プロセスによる小規模試作から本格展開への移行
・多物理現象連成解析と加速劣化試験組み合わせによる多角的評価
4.業務遂行に必要な要件・留意点
☆技術者としての倫理の観点
・公衆の安全と福利を最優先とした安全性重視判断
・AI判断結果不明確部分の誠実な報告と妥協回避姿勢
☆社会の持続可能性の観点
・技術継承断絶回避のための教育機関連携と人材育成支援
・AIシステム運用エネルギー消費を含む総合的環境負荷評価