🔷R07_I-1|過去問題
我が国の造船業がより持続可能で競争力のある産業として発展していくための方策の1つとして、造船建造現場のスマート工場への転換が取り上げられている。
スマート工場は、複雑な作業工程を伴う労働集約型の造船業において、生産性や品質の向上を目的として、少子高齢化による労働力不足、技術継承にも対応するために、生産ラインの自動化やロボット化を実現するものである。
(1)スマート工場化を目指すうえで、造船工場の生産活動を支える基盤整備として先ず取組むべき技術課題を、多面的な観点から3つ抽出し、観点の明記とともに、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、船舶・海洋部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例
1.スマート工場化基盤整備課題
〇観点1:生産システムデジタル化
・IoT技術を活用したリアルタイムデータ収集・解析基盤
・MES導入と船体ブロック製造のデジタルツイン化
〇観点2:人材・技術継承
・熟練溶接工の技能デジタル化とパラメータ最適化
・ベテラン技術者のノウハウのAI学習モデル組み込み
〇観点3:設備・インフラ
・既存設備と新規ロボット化設備の統合制御システム
・5G通信網とエッジコンピューティング基盤整備
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・熟練技能の形式知化による技能継承システム確立
・ロボット化・自動化の前提となるデータ収集基盤構築
▽解決策1:溶接技能デジタル化システム
・アークセンサーによる溶接プロセス計測とデータベース化
・機械学習による欠陥発生確率最小化の最適溶接条件導出
▽解決策2:船体構造設計AI支援システム
・ジェネレーティブデザインによる構造最適化AI開発
・FEM解析と経験則を統合した船体強度評価システム
▽解決策3:VR技能訓練・評価システム
・危険作業・高所作業のVR空間での安全技能訓練
・AIによる技能評価と個人別訓練プログラム最適化
3.波及効果および懸念事項への対応策
◇波及効果
・造船工場全体のスループット向上とリードタイム短縮
・船体構造品質均質化と新人技術者習熟期間短縮
◇懸念事項1:技術的信頼性の課題
・AI判断結果に対する人間の最終確認システム構築
・溶接ロボットの安全停止機能と定期的モデル精度検証
◇懸念事項2:雇用への影響とセキュリティリスク
・既存技能者のDX人材への転換教育プログラム提供
・多層防御型セキュリティシステムによる機密情報保護
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・船舶安全性確保とAI判断への過度依存回避
・技術革新の恩恵を公平に共有する責任遂行
☆社会の持続可能性の観点
・環境調和型船舶建造推進と脱炭素社会実現貢献
・造船技術の持続的発展と海事産業国際競争力維持