🔶R07_I-2|過去問題
近年、国内における水産物の消費量は減少傾向にあり、特に若年層の魚離れが顕著になっている。一方で、漁業・養殖現場では、国際市場での燃油、資材、餌料などの価格高騰により、生産コストが大幅に上昇し、従来の価格体系では採算が取れなくなっている。
このため、水産業界においては、水産物の消費拡大と持続可能な漁業・養殖業の確立が喫緊の課題となっている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)水産部門全般を念頭に、水産物消費の拡大と持続可能な漁業・養殖業の両立を図るうえでの課題を、技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題の中で、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、水産部門の専門技術用語を交えて説明せよ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と、新たに生じうる懸念事項について専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の実現において、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.多面的観点からの課題抽出
(1)観点1:生産コスト削減と経営基盤強化
・燃油・資材・餌料価格高騰による収益性悪化とコスト構造改革の必要性
・漁獲量予測技術や操業管理システムによる効率的操業体制の構築
(2)観点2:消費者ニーズへの対応と流通改革
・若年層の魚離れと簡便性を追求した加工技術の必要性
・コールドチェーンやトレーサビリティによる安全・安心な流通体制
(3)観点3:資源管理と環境保全の両立
・資源評価技術の精度向上と科学的根拠に基づく資源管理計画
・疾病予防技術や環境負荷低減技術による生態系影響の最小化
2.最重要課題およびその解決策
(1)最重要課題
・燃油・資材・餌料価格高騰による持続可能性への脅威
(2)解決策1:省エネルギー型漁業への転換
・LED集魚灯や省エネエンジンによる燃油消費量削減
・漁獲量予測システムとGPS漁業情報システムによる効率的操業
(3)解決策2:養殖飼料コストの削減技術
・低魚粉配合飼料や代替タンパク源による原料コスト低減
・給餌管理システムと自動給餌システムによる飼料効率改善
(4)解決策3:共同化・省力化による経営効率化
・共同出荷施設や共同冷蔵庫整備による設備投資負担軽減
・IoT技術による遠隔監視システムと省力化の実現
3.波及効果および懸念事項
(1)波及効果
・CO2排出削減と若手漁業者の新規参入促進
・養殖魚生産単価低下と水産業のスマート化進展
(2)懸念事項1:初期投資負担と技術格差
・中小零細経営体の資金調達困難と高齢者の技術習得負担
・経営体間の技術導入格差と競争力の二極化
(3)懸念事項2:代替飼料の品質管理リスク
・養殖魚の成長速度や肉質への影響懸念
・栄養バランス変化による疾病抵抗性や生残率への悪影響可能性
4.業務遂行に必要な要件
(1)技術者としての倫理の観点
・科学的根拠に基づく正確なデータ提示と過度な効果誇張の禁止
・養殖魚の健康状態モニタリングと消費者の安全・安心の最優先
(2)社会の持続可能性の観点
・水産資源の持続的利用と長期的資源管理計画との整合性確保
・生態系保全と中小零細経営体への技術移転支援