🔶R07_I-2|過去問題
かつてはヒトゲノム計画に始まり、近年では生成AIや再生医療などに代表される新興科学技術は、研究開発から社会実装までのスピードが非常に速く、科学技術と社会との関係深化や相互作用の重要性はますます大きくなっている。それゆえELSI(Ethical, Legal and SocialIssues:倫理的・法的・社会的課題)やRRI(Responsible Research and Innovations:責任ある研究・イノベーション)の考え方と重要性が改めて認識されるようになってきた。新興科学技術の高度化・専門化は、一般市民にとって理解しがたさを増している。そこに携わる技術者は、高度な技術リテラシーを持ち、これら新興科学技術の社会受容に向けた橋渡しを行う重要な責務を担っている。このような背景のもと、以下の問いに答えよ。
(1)化学分野における新興技術の具体的な事例を挙げ、ELSIやRRIを考慮した観点から多面的に分析し、社会実装に向けた技術課題を3つ示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その技術課題に対する複数の解決策を、化学部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.合成生物学を用いた高機能性化学物質生産の社会実装課題
〇事例
・CRISPR-Cas9による合成生物学の概要
・遺伝子改変微生物を用いた化学物質生産技術
〇観点1:倫理的観点からの技術課題
・環境流出による生態系への影響リスク
・食品・飼料応用時の安全性懸念
〇観点2:法的・規制的観点からの技術課題
・国内外規制の相違とトレーサビリティ課題
・遺伝子編集特許の権利関係問題
〇観点3:社会受容性からの技術課題
・一般市民の不安や拒否感
・技術開発過程の透明性不足
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・安全性評価システムの国際標準化の必要性
・品質管理体制構築の重要性
▽解決策1:分析化学的手法による包括的安全性評価システム
・質量分析法(LC-MS/MS)による有害副産物検出
・次世代シーケンシング(NGS)によるゲノム解析
▽解決策2:品質管理システムの国際標準化
・ISO規格に基づく品質管理基準策定
・参照標準物質の開発とトレーサビリティ体系確立
▽解決策3:リアルタイム安全性監視システム
・分光学的手法によるプロセス分析技術(PAT)
・AIを活用した安全性データベース構築
3.将来的な懸念事項及びその対策
◇懸念事項及びその対策1:技術的精度向上に伴う新たなリスク
・高精度化による解釈困難性の増大
・偽陽性増加による技術開発停滞
◇懸念事項及びその対策2:品質管理システムの過度な標準化
・中小企業や新興国でのアクセシビリティ低下
・参照標準物質の独占化による技術依存
◇懸念事項及びその対策3:AI監視システムの技術的・倫理的課題
・機械学習モデルのブラックボックス化
・遺伝子情報収集によるプライバシー侵害リスク
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・科学的客観性の優先と独立した判断責務
・透明性確保と正確な情報開示の徹底
☆社会の持続可能性の観点
・技術アクセシビリティの公平性確保
・グリーンケミストリーに基づく持続可能システム構築