【イラストレーター】イラストPR案件で炎上を防ぐためのTips【チェック観点】

【イラストレーター】イラストPR案件で炎上を防ぐためのTips【チェック観点】

あひる

あひる

アツギの件はだいぶ顕著でしたが、企業からイラスト案件を受注しても、ただ描けばいいという訳ではありません。
受注したイラストが原因で炎上しないために、どんな観点でチェックができるか、どのような準備や情報が必要か考えてみました。

受注時に確認すること

  1. 納期はいつか
  2. 具体的な指示があるか(背景、人数、服装、小物、シーン)
  3. 目的、ターゲット層は明確か
  4. 使用媒体は何か
  5. 監修があるか
  6. リテイクに関して取り決めがあるか

具体的な指示や、目的・ターゲット層の情報がない場合、自ら分析を行う必要があります。
正直、かなり面倒なので、なるべく目的やターゲット層だけでも聞いておいた方が良いです。
逆に発注側としても、目的やターゲット層の分析が出来ていないまま発注したところで、適切な監修やリテイク指示は出来ませんし、折角のPRを最大限に有効活用する機会を逸してしまいます。

特にリテイクについてはモンスタークライアントを避ける意味でも、取り決めを行っておいた方が良いでしょう。

会社・ブランドのイメージとメッセージを把握する

  1. 会社が掲げている理念は何か
  2. ブランドが発信しているメッセージは何か

広告やPRとは、会社・ブランド・商品の認知を促進させるほかに、「社会に対してどういった価値観を広めようとしているのか」「どういった問題を解決しようとしているのか」など伝えたいイメージやメッセージがあります。
いくら顧客層を拡大しようとしていても、根幹のメッセージは変わりません。

例えば、「安全・安心・清潔感」といったイメージで、「自分の気持ちが楽しくなるために身につけて欲しい」ブランドの場合、そこに反してしまう(清潔感に欠ける・他人ウケを優先する)表現は出来ません。
また、最近ジワジワ広がりつつあるジェンダーニュートラルやジェンダーフリーと言った概念を掲げるブランドで「ジェンダーに対するアンコンシャス・バイアスを助長する描写」をしてしまえば、ブランドのイメージが毀損されることになります。

基本的なメッセージを変えず、ターゲット層に届く表現をするためにも、基本となる情報は押さえておきましょう。

会社、あるいはブランドの主要購買層を押さえる

  1. どの年齢層が多いか、あるいは幅広い年齢層を相手にしているか
  2. 男女比はどちらの方が多いか
  3. 学生か、特定の職業が多いか
  4. どういった属性が想定されるか(独身、既婚、親など)

どうして、会社やブランドの主要購買層を抑えておく必要があるかというと、それは最低限「敵に回してはいけない顧客層」というものがあるからです。

例えば「タカラトミー」であれば「子供の親」、「アツギ」であれば「20〜40代」で「職業柄、タイツを身につけなければいけいない女性」です。

新規顧客層へアピールするための広告だとしても、主要購買層の過度なイメージダウンを招いてしまうと、PRとしては失策と見られてしまうでしょう。
仮に特定層の反発を予想した上で意図的にPRする事(例えばナイキのように)も時には必要かも知れませんが、きちんと反発されるであろう内容の把握や、反発があったとしても負けないようなポジティブメッセージを含んでいない限り、単なる炎上マーケティングとして片付けられてしまうでしょう。

商品・サービスの特徴を考える

  1. どういったシーンで利用されるか
  2. どのような問題を解決するのか
  3. 既存の使い方を周知するのか、新しい使い方を啓蒙するのか

商品やサービスの特徴を押さえておくことで、一体どんな点を描いたり強調するべきか判断することができます。

例えば「タイツ」の場合、通年を通して「脚を美しく見せる」「ファッションのアクセント」「脚の浮腫を軽減する」、冬は「防寒」など、シーンや問題によってアピールするポイントが分かれます。

また、新しい使い方を提案するPRであれば、意外性を訴えたり、新しい使い方の有用性やポイントをわかりすく表現する必要があります。

広告のターゲット層を押さえる

  1. 主にどの年齢層か
  2. どの性別か
  3. どんな職業を想定しているか
  4. どんなライフスタイルを送っているか
  5. 特筆すべき価値観はあるか

女性向け雑誌やウェブメディアを考えるとわかりやすいですが、年齢層やファッションの方向性、ライフスタイルで表現が全然異なっています。

職業・ライフスタイルですと、学生と社会人のタイムスケジュールは違います。
同じカフェのシーンでも、放課後にお友達と利用するのか、同僚とランチを楽しむのか、休日にわざわざ脚を運ぶのかでは、描く必要のある時間帯が違います。

そして、年齢層やライフスタイル・価値観によって服装の変化も変化します。
例えば、郊外や地方に住む若年層には、原宿のフェティッシュでハードな服装ではなく、手に入れやすいカジュアルなGUの方が高い共感性を得られるでしょう。
逆にコンサバでエレガントなスタイルを好む30代後半女性に、韓流プチプラコスメとゴスロリファッションを持ってきても、共感性はありません。

特筆すべき価値観ですが、例えば、石油製品よりオーガニックを好む「自然派」にナイロンの製品をアピールしても響かないので、この場合は綿やウールなどの原料をアピールする必要があります。
また、背景や小物においても、無機質なプラスティックの小物ではなく、木の温かみやグリーン(植物)を配置する必要があります。

このように、一体何を取捨選択するべきか、考えるヒントになります。

使用されるメディアに合わせる

  1. SNS(Twitter、Instagram)の場合は、サムネイルの見え方を意識
  2. ウェブメディアの場合は、PCよりスマホの見え方を優先
  3. 紙媒体(雑誌、ポスター)の場合、印刷用データの仕様を確認
  4. 最も求められているのは、利便性・共感性・憧れのどれなのか

使用される媒体によって、見え方はもちろん、リーチの仕方にかなり差があります。
特に、SNSではサムネイルひとつで閲覧数が変わってしまうことも珍しくありませんので、必ず媒体に適したサイズや構図を意識しましょう。

Twitterではひとつのツイートに画像を何枚添付するかによって、サムネイルの比率が変わるため、最適なサイズと構図が左右されます。
Instagramでは複数枚投稿した際に、右上にアイコンが表示されるため、大事な文字やアピールするべき小物がかからないようにする必要があります。

ウェブメディアの場合、SNSよりは比較的自由度が高いです。
スマホで見た場合とPCで見た場合のバランスを考える必要はあるものの、近年はスマホで閲覧することが多いので、スマホの見え方を優先した方がいいでしょう。

紙媒体の場合、印刷に適したデータを作成する必要があります。
巨大ポスターの場合、印刷時の見え方や密度が想像よりも間延びしてしまう場合や、遠目から見た場合に読めないなどの問題がありますので、設置場所や用途をよく確認した方が良いでしょう。

また、SNSでは共感性が大きく評価されますが、雑誌などの誌面では憧れなど「ちょっと背伸びした」目標にしたくなる所を求められる場合もあります。
「なんのために、その媒体をターゲットは見ているのか」「見た時にとって欲しい行動は何か」という事を念頭に置いてみましょう。

適切な構図や表現を考える

ファッション系

  1. アイレベルがウエストにあることが多い
  2. コーディネイトを見せるために全身を入れることが多い
  3. 体型よりも服装の質感やシルエットが大事

グラビア系

  1. 太ももやお尻を強調するローアングルや、胸元を強調する俯瞰が多い
  2. 肉感を感じるような表現が好まれる
  3. ひねりを入れたり、関節を曲げてダイナミックなポーズをとる

アイレベルやアングル、ポージングによって人に与える印象はかなり異なります。
アツギの記事でも使用しましたが、例えば同じ「タイツ」でも「ファッション系」なのか「グラビア系」なのかでは全然傾向が違います。

アイレベルは腰、視線はフラット、スカートの丈は様々です。

俯瞰や煽りなどフラットな視線は少なく、足や太もも・お尻を強調するようなポージングが多いです。

ファッション系の案件なのにグラビア系の構図・ポージングを採用してしまうと場違い感が半端ないですし、共感が得られず好感度が下がってしまう場合があります。

また、グラビア系の案件なのに、面白みや迫力に欠けるファッション系の構図・ポージングを採用してしまうと、目を引くことが出来ず埋もれてしまいます。

用途やターゲット層にあった構図・ポージングを採用する様に心がけましょう。

イメージの調べ方

  1. ハッシュタグ検索を活用する
  2. Google画像検索で傾向を確認する
  3. 媒体資料を読んでみる

InstagramやTwitterのハッシュタグはUGCの塊です。
なので、もし若年層向け案件の場合、ハッシュタグ検索を行なって「今、何が盛り上がっているか」を調査するのに最適です。
しかし、ハッシュタグ検索は、どのハッシュタグタグを知っているかで検索結果が左右されてしまうため、なるべく多くのハッシュタグを知る事が大事です。
また、似たようなタグでもイケてるイケてないが別れている場合もあるので、「検索結果がいつの投稿か」「今、盛り上がりがあるのか」確認するようにしましょう。

もし、ハッシュタグ検索が不安な場合、Google画像検索も併用していきましょう。
ファッション系・グラビア系でも使いましたが、以前どのようなPRが行われていたかや、どのような画像が好まれているのか傾向が掴みやすくなります。
ここでざっくり検索してから、ハッシュタグをストックしていくのもアリです。

もし、ターゲット層が読んでいそうな雑誌・メディア等の情報があれば、媒体資料を読んでみるのも手です。

国内No.1の媒体資料ポータル「メディアレーダー」媒体資料を無料でダウンロード。媒体社様は成果報酬でリード獲得。media-radar.jp

例えば、女性向けアプリメディアのLUCRAだと、以下の情報が公開されています。

株式会社Gunosyが提供する、女性向けアプリメディアMAU No.1*「LUCRA(ルクラ)」は、記事タイアップ(ネイティブアズ)、インフィード広告など多彩な広告メニューをご用意しています。*2019年4月〜2019年6月、Google Play「ニュース&雑誌」および iOS App Store「ライフスタイル」(合算)に属する、女性ユーザーの比率が70%以上のアプリが対象
【LUCRAの特徴】すべての女性に贈る、毎日が楽しくなるアプリ「流行っていることは知っておきたい」「おしゃれには常に敏感でいたい」「きれいになるための方法を知りたい」誰もが思う望みや悩みを解決してくれ、たくさんの女性に支持されています。LUCRAは女性たちの"アクションのキッカケになる"情報アプリです。25歳〜39歳女性の利用者が半数以上、様々な世代の女性に利用いただいているメディアです。

具体的な性別や年齢層、どういった内容を軸に発信しているかがわかりやすくまとめてあるので、ターゲット層が好むライフスタイルや服装、価値観を掴みやすくなります。

これらの結果で、どういった色味や服装・構成が好まれるのか把握しやすくなります。

広告とPRの違いを知る

  1. 広告は企業が広告枠を利用して直接メッセージを発信する
  2. PRは第三者を通じて企業のメッセージを発信する

SNSでも企業広告が広がってきて、PRと広告が区別がわからなくなってきましたよね。
実は、広告とPRは違うもの(とは言いつつ半ば広告のようなPRも多い)なので、ポイントを押さえてみましょう。

「広告」は、新聞やテレビ、ネットなどの広告枠を買い取り、自ら製品やサービスをアピールすることです。企業側が考えたタイミングで打ち出したいメッセージを発信できるため、上手にやれば即効的な効果が得られます。ただ最近では、「どうせ広告だから」と最初から消費者に敬遠されたり、内容を信用してもらえなかったりするケースも少なくありません。
一方の「PR」は、「パブリックリレーションズ」の略。自社や製品のことを広く一般の方に知ってもらい、良好な関係を築くための活動をいいます。

例えばPR活動の一つである「パブリシティ」は、メディアにニュースや記事として、商品やサービスを取り上げてもらうことです。広告ではないので、取り上げられるかどうかはメディア側の判断次第。紹介時期や記事の内容をコントロールすることはできません。その一方で、メディアが第三者の視点から価値ある情報だと判断して紹介してくれるので、その製品・サービスに対する消費者の信頼が増す効果があります。うまくいけば、低コストで会社や製品の宣伝をしたり、企業イメージを高めたりすることができるのです。「PR」と「広告」の違いとは?知られていないPRの仕事、ここがポイント | 特集 | PR会社 | 株式会社Enjin(エンジン)| ブランディングPRブランディングPR、無料動画サイト、KENJA GLOBALや覚悟の瞬間、Qualitasを企画運営するPR会社。クライアwww.y-enjin.co.jp

広告の場合、企業あるいは広告代理店からの依頼で、細かい指示書があったり、監修がなされるかと思います。
この場合、指示書の内容は最低限クリアしていなくてはいけません。

メディア経由のPRでも、編集さんから指示書や監修が入る事があり、慣れない分野でも比較的安心感があるのではないでしょうか。
(ただし、これもどの程度チェックされるかは運です)

一番頭を悩ませるのは恐らく、SNS上でのPR案件になると思います。
正直、コスメや美容グッズに多いのですが、現物支給のみの場合、あんまり割に合わないですし、趣味の一環として受ける以外の対応はオススメしません。

AD寄りのPRの場合は監修が入る事もあるかも知れませんが、基本的には丸投げが多いかと思います。
リサーチに自信がない場合、割に合わないと感じる場合は、断っても良いと思います。

最終的な確認項目

  1. 特定の属性を揶揄したり、侮辱する表現がないか
  2. 企業・ブランドメッセージに反していないか
  3. PRを投稿する時のキャプションが、PRの内容を反映しているか

よく考えずに使った単語で炎上する事もあります。
使用した単語に「揶揄・侮辱」の属性が含まれていないか、検索などでよく確認しておきましょう。

アツギの件でもそうですが、社会的な会社・ブランドのイメージから離れた表現をしてしまうと、顧客が正しいメッセージを受け取れなくなってしまいます。
意外性を打ち出す場面ならまだしも、そうでない場合はイメージを逸脱していないか確認しましょう。

近年は広告・PRとしてわかりやすく表記されているかも信頼性(ステマ防止)に関わってきます。
自身で投稿する場合には、しっかりとPR系のタグが含まれているか確認しましょう。
また、情報量も評価に関わるため、キャプションの内容に広告として伝えたい事が充足しているか確認しましょう。

まとめ

  1. 会社・ブランドのイメージとメッセージを確認し、遵守する
  2. 媒体や使用用途を確認、リテイクに関して取り決めをする
  3. ターゲット層や媒体にあった構図を採用する
  4. 現代に価値観に合っているか、モラルに反していないか確認する

振り返ってみると意外とやる事多いですよね?
細かい指示書があるのであれば別ですが、もし丸投げでお任せの場合、自分で行わなければいけない手間が、報酬に見合うかどうか考えて受注を決めると良いです。

なんとなくただ描くだけなら、イラストレーターではなく一般の人でも出来る人はそれなりにいるでしょう。
広告系・PR系で強くなるためには「どうしてこの表現を使ったのか」意図をビジネスとして説明できる必要があります。

SNSマーケティングがスタンダードになりつつある現状ですと、ある程度提案できるイラストレーターの方が強いというのは否めません。
自らの得意な分野を伸ばすために、方向性を決めてニーズを調査しておくのもいいと思います。

恐らくコミック系イラストレーターとファッション系イラストレーターがあまり混じり合わないのは、こういう点があるかも知れませんね。
(中には自身のブランディングとして名義を使い分けて、案件を受注している方もいらっしゃると思います)
コミック系イラストレーターでも、しっかりポイントを押さえれば、ファッション系PRでも活躍できると思いますので、気になる方は頑張ってみてください。

あと、単価が見合わず、マジでヤバい手抜きをするぐらいなら案件を請けない方がいいです。
とあるイラスト系インフルエンサーの方で「足痩せ用圧力タイツ」のPRに、ほとんど下書き状態の漫画を載せた方がいますが、PRの件数をこなすために適当な仕事をされても消費者として全く響きません。
正直、真面目に監修をしていたら絶対に通らないものです。
私はたまたま生でこの件を目にして、プロとして信用できない要注意人物として心のリストに入れてあります。

こういったケースもあり、一律商品を配ってPRさせる手法や、イラストレーターに丸投げ案件の場合は、著しく消費者や関係者の信用が下がる結果になる可能性も視野に入れておきましょう。

私自身、まだまだ知らない事は沢山ありますし、実践してみてうまく形にできる事もまだまだ少ないですが、観点を知って創意工夫した方がより良い仕上がりになると思います。
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