1. この記事で作るもの:相手別の比較表1枚と、提案書に載せる一文
提案書や紹介文の最初の一文を、思いついた1案だけで決めていないでしょうか。
「これで伝わるはず」と思っても、相手が経理担当者なのか代表なのかで、響く言葉は変わります。
逆に、よく見せようとして、事実にない言葉まで入れてしまうこともあります。
そこでこの記事では、無料のAIチャットを使って、相手別・切り口別に案を並べ、事実と照らして1案に絞ります。
使うのは無料のAIチャットとブラウザだけです。
コード、API、有料ツールは必要ありません。
コピーの反応率や成約率を保証する内容や、広告表示の法的判断は扱いません。
完成例を先に見ます。
会社名・サービス名・内容はすべて架空です。
架空の会社「サンプル社」の「経費チェック代行」を例にします。
| 相手 | 切り口 | 案 | 基づく事実 | 照合 |
| 相手A(経理担当者) | 手間の削減 | 月末の領収書チェックを、月1回の一覧返却にまとめます | 事実2 | ○ |
| 相手A(経理担当者) | ミスの防止 | 不備を一覧で返すので、提出前の見落としに気づけます | 事実2 | ○ |
| 相手B(代表) | 時間 | 経費の確認は、資料を渡してから3営業日で戻ります | 事実3 | ○ |
| 相手B(代表) | 安心感 | 導入企業の9割が満足しています | なし | ×(根拠なし) |
4案のうち、最後の案は事実リストに根拠がないため外します。
残った案から、確認の時間を取られたくない代表には「経費の確認は、資料を渡してから3営業日で戻ります」を選びました。
これが、提案書の冒頭に置く一文の完成形です。
この章のあとで、事実リストの作り方から1案を選ぶところまで、順に進めます。

2. 準備:必要なものと、貼る前に気をつけること
必要なものは、無料のAIチャット(ChatGPTまたはClaude)のアカウントとブラウザ、そして自社サービスの「事実リスト」と「相手像」のメモだけです。
追加の費用や契約はいりません。
事実リストは、自社サービスについて確かに言えることだけを、4項目ほど短く書いたものです。
この記事の架空例では、次の4項目を使います。
- 事実1:対象は従業員10〜50名の会社の経理担当者
- 事実2:月1回、経費の領収書を確認して不備を一覧にして返す
- 事実3:返却は資料を受け取ってから3営業日以内
- 事実4:初回の打ち合わせは30分
相手像は、提案先がどんな人かを一言で書いたものです。
例では、相手Aを「経理担当者。
提出前の見落としを減らしたい」、相手Bを「代表。
確認の時間を取られたくない」とします。
切り口は、案の方向を分けるための見方です。
この記事では「手間の削減」「ミスの防止」「安心感」の3つを使います。
これは案を比べやすくするための本ラボの整理であり、公式の方法論ではありません。
使いにくければ、自分の言葉で増やしたり減らしたりして構いません。
AIチャットに貼る前に、次の点を守ってください。
- 顧客名、価格の実額、未公開の取引条件は貼りません。必要なら架空の名前や言い方に置き換えます。
- パスワードや社外秘の資料など、案づくりに関係のない情報は貼りません。
入力した内容がAIの改善に使われるかどうかは、サービスの設定で変えられます。
公式ヘルプで確認できる範囲は次のとおりです。
- ChatGPT:Webでは、アカウントメニューから「Settings」→「Data controls」と進み、「Improve the model for everyone」をオフにして「Done」を選ぶと、これ以降の新しい会話がモデルの学習に使われなくなります。オフにしても、保存済みの会話は削除も非表示もされません。
- Claude:プライバシー設定で、モデル改善に使うかどうかをいつでも変更できます。シークレットチャットは、モデル改善の設定を有効にしていても改善には使われません。
画面の表示や項目名は変わることがあります。
実際に使う前に、各サービスの公式ヘルプで最新の手順を確認してください。
準備ができたら、次の章で案を出してもらいます。
3. 手順①:事実リストと相手像を渡して、相手別の案を出してもらう
無料のAIチャットを開き、事実リストと相手像、下の指示文を貼り付けて送ります。
サービスごとのボタン名や画面の操作はここでは書きません。
やることは「事実リストと相手像を貼り付けて指示文を送る」だけです。
【事実リスト】
事実1 対象は従業員10〜50名の会社の経理担当者
事実2 月1回、経費の領収書を確認して不備を一覧にして返す
事実3 返却は資料を受け取ってから3営業日以内
事実4 初回の打ち合わせは30分
【相手像】
相手A 経理担当者。提出前の見落としを減らしたい
相手B 代表。確認の時間を取られたくない
あなたは提案書の文章を手伝うアシスタントです。上の事実リストだけを根拠に、相手A・相手B別に、切り口(手間の削減・ミスの防止・安心感)ごとの一文を表にしてください。各案に「基づく事実の番号」を書き、事実リストにない数字・実績・順位・断定は書かないでください。根拠がない切り口は【根拠なし】と書いてください。
送信後、AIの回答を見ます。
期待する形は、相手Aと相手Bの行に、切り口ごとの一文が並び、各案に「基づく事実の番号」が付いている表です。
たとえば相手Aの手間の削減に「事実2」、相手Bの時間に「事実3」が付いていれば、案出しの依頼としては進んでいます。
根拠のない切り口に【根拠なし】と書かれていれば、指示が働いている目安になります。
ここで確認するのは表の形だけです。
表の中の言葉が事実に合っているかは、次の章で自分で確かめます。

4. 手順②:事実照合の列で、根拠のない表現を外す
AIの案は、読みやすく整っていても、事実にない言葉を含むことがあります。
表に「照合」の列を足し、事実リストと見比べて、○か×を自分でつけます。
AIに「合っていますか」と聞くだけで済ませず、事実リストの文を自分の目で追って確かめてください。
AIが足しがちな表現には、次のようなものがあります。
ここに挙げる例はすべて例示用で、架空のサービスの話です。
- 根拠のない数字:「導入企業の9割が満足」のような満足度や実績の数字。事実リストになければ外します。
- 順位や肩書き:「業界No.1」のような表現。根拠を示せないなら外します。
- 断定:「必ずミスがなくなる」「ミスゼロ」のような言い切り。事実2が言えるのは「不備を一覧にして返す」までなので、「提出前の見落としに気づけます」のように事実の範囲に弱めます。
直し方は2つです。
基づく事実がない案は外します。
基づく事実はあるが言い切りが強い案は、事実の範囲に言い換えます。
外した切り口を残したい場合は、事実リストにある別の事実で置き換えます。
たとえば、安心感の案は、事実4を使って「初回の打ち合わせは30分です」と、事実だけを述べる形に置き換えられます。
一般消費者向けの広告や商品説明に使う場合は、注意が必要です。
消費者庁の説明では、品質や規格などを実際のものや競争業者のものより著しく優良だと示す表示を優良誤認表示、価格などの取引条件を実際のものや競争業者のものより著しく有利だと誤認される表示を有利誤認表示としています。
提案書のように事業者間で使う場合でも、事実と違う表現は信用を損ないます。
この記事は法的な判断をするものではありません。
迷うときは、消費者庁などの公式の案内や専門家に確認してください。
また、AIに「この言葉で成約率は上がりますか」と聞いて数値を求めることはしません。
コピーの効果は、使ってみた反応を見て判断します。
5. 具体例:4案を比べて、提案書に載せる1案を選ぶ
ここでは、架空のサンプル社「経費チェック代行」の4案を、照合まで終えた形で並べます。
| 相手 | 切り口 | 案 | 基づく事実 | 照合 |
| 相手A | 手間の削減 | 月末の領収書チェックを、月1回の一覧返却にまとめます | 事実2 | ○ |
| 相手A | ミスの防止 | 不備を一覧で返すので、提出前の見落としに気づけます | 事実2 | ○ |
| 相手B | 時間 | 経費の確認は、資料を渡してから3営業日で戻ります | 事実3 | ○ |
| 相手B | 安心感 | 導入企業の9割が満足しています | なし | ×(根拠なし) |
相手Bの安心感の案は、事実リストのどこにも満足度の根拠がないため×にして外します。
代わりに「初回の打ち合わせは30分です」(事実4)に置き換える手もあります。
次に、提案先ごとに1案を選びます。
相手Bは代表で、「確認の時間を取られたくない」人です。
この相手には、事実3に基づく「経費の確認は、資料を渡してから3営業日で戻ります」が合います。
理由は、いつ結果が戻るかが一文で分かり、確認の時間の見通しが立つからです。
このように「相手像のどこに合うか」を一言で言えることが、選んだ理由になります。
採用した一文は、提案書の冒頭に次のように置きます。
経費の確認は、資料を渡してから3営業日で戻ります。(サンプル社 経費チェック代行のご提案)
相手Aに出す場合は、「不備を一覧で返すので、提出前の見落としに気づけます」を選べます。
同じ事実リストから、相手に合わせて別の一文を選ぶことができます。
自分のサービスに置き換えるときは、次の書き込み欄を作り、指示文と一緒にAIチャットへ貼ります。
【事実リスト】(自社サービスで確かに言えることだけ。4項目ほど)
事実1
事実2
事実3
事実4
【相手像】(提案先の人と、その人が気にしていること)
相手A
相手B
【照合メモ】(AIの案を確認するときに使う)
案: 基づく事実の番号: ○か×: 外した理由:
事実リストは、パンフレットや契約書など、すでに手元にある資料の記載を見ながら書くと確かめやすくなります。
書けない項目は空欄のままにして構いません。
その切り口は、AIに【根拠なし】と返してもらいます。
次回も同じやり方を使い回すには、今回の指示文と表の列(相手・切り口・案・基づく事実・照合)をメモに残します。
サービスや相手が変わったら、事実リストと相手像だけを書き換えて、同じ指示文と一緒にAIチャットへ貼り直します。

6. 完了確認と、うまくいかないときの戻り方
完了の目安は3つあります。
1つ目は、各案に基づく事実の番号が付いていることです。
番号がない案は、根拠が分からないので、そのまま使いません。
2つ目は、根拠のない表現を削ったことです。
数字、順位、強い断定が残っていないか、表を上から見直します。
3つ目は、相手像に合う理由を一言で言える1案を選べたことです。
「代表は確認の時間を取られたくないから、3営業日で戻る一文」のように言えれば合格です。
うまくいかない例と戻り方を示します。
AIが事実リストにない実績を足してきた場合は、「上の事実リストだけを根拠にしてください。
リストにない数字・実績・順位は書かず、根拠がなければ【根拠なし】と書いてください」と指示文に入れ直して、もう一度頼みます。
案がどれも似ている場合は、切り口ごとに言い方を変えるよう指示を足します。
たとえば「手間の削減は作業が減る言い方、ミスの防止は気づける言い方、安心感は事実を淡々と述べる言い方で書いてください」と加えます。
断定が強すぎる場合は、「事実リストに書いてある範囲の言い方に弱めてください」と頼み、自分でも事実リストと見比べて直します。
貼ってはいけない情報を貼ってしまった場合は、その会話を使い続けず、情報を架空に置き換えたうえで、新しい会話で貼り直します。
入力の扱いは、サービスの公式ヘルプで確認してください。
次の一歩として、実際の自社サービスの事実リストを4項目書くところから始めてください。
事実リストが書ければ、あとは相手像を1行足して、この記事の指示文を貼るだけです。
初心者にも分かりやすいAI活用情報をこれからもお届けします。
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