学習障害(LD)とは何か

寄り添わない心理カウンセラー【Y】:代表
学習障害(LD: Learning Disabilities)は、知的発達に問題はないにもかかわらず、特定の学習能力(読む・書く・計算する)が極端に苦手になる発達障害の一種 知的水準は平均またはそれ以上であることが多いが、学校の授業についていけなかったり、試験で極端に点数が取れなかったりするため、「努力不足」や「怠けている」と誤解されやすい LDは生まれつきの脳機能の特性によるもので、本人の意思や環境だけでは解決できない問題を抱えることが多い
1. 学習障害の主な種類
LDは大きく分けて3つのタイプがある
① 読字障害(ディスレクシア)
- 文字を読むのが極端に苦手(単語を間違えて読む、飛ばす、読むのが遅い)
- 音読がスムーズにできない(文章の意味を理解しにくい)
- 文字を正しく認識できず、似た形の文字を混同する(「お」と「め」など)
→ 本を読むことが苦痛になりやすく、学習意欲の低下につながる
② 書字障害(ディスグラフィア)
- 文字をうまく書けない、形が崩れる(「しんにょう」がうまく書けない、漢字を覚えにくい)
- 書いた文字のバランスが悪い(大きさや間隔がバラバラ)
- 手が疲れやすく、ノートをとるのが遅い
→ 授業での板書やノート作成に時間がかかり、学習の遅れにつながる
③ 算数障害(ディスカリキュリア)
- 数字や計算が極端に苦手(簡単な足し算や引き算でもミスが多い)
- 時計の読み方がわからない、九九が覚えられない
- 図形の概念や数量の感覚が理解しづらい
→ 数学の授業についていけず、計算を避けるようになる
2. 学習障害の原因
LDの原因は脳の情報処理の特性によるものであり、単なる「勉強不足」や「怠け」ではない 具体的には、以下のような要因が関係していると考えられる
- 脳の神経回路の違い(特に言語や数の処理に関わる部分の機能が異なる)
- 遺伝的要因(家族にLDの人がいると発症率が高まる傾向)
- 胎児期の発達過程の影響(妊娠中の環境要因や低出生体重児など)
しかし、知的発達の遅れや視覚・聴覚の問題とは別のものであり、特定の分野だけに困難を抱えるのが特徴である
3. 学習障害の診断と発見の遅れ
LDは幼少期から症状が現れることが多いが、診断されるのが遅れることがある 特に日本では、「勉強が苦手なだけ」「努力不足」と見なされやすく、適切な支援を受けるまでに時間がかかることが多い
診断の基準
- 知能指数(IQ)は正常範囲内
- 特定の学習分野にのみ著しい困難がある
- 環境の影響(家庭環境や教育不足)だけでは説明がつかない
発見の遅れが問題になる理由
- 本人が「自分はダメだ」と思い込み、自信を喪失する
- 無理に努力させられ、精神的ストレスが増す
- 周囲の理解がないと、学校でのいじめや孤立につながる
LDは周囲の理解がないと、単なる「勉強ができない子」と見なされがちであり、適切な支援がないと学習意欲の低下や二次的な精神的問題を引き起こしやすい
4. 学習障害の対処法と支援
LDの特性を持つ人は、「努力で克服する」のではなく、適切な支援を受けることが重要になる
① 読字障害への対応
- 音読ではなく「耳で聞く学習」(オーディオ教材や音声読み上げソフトを活用)
- 文章を短く区切って読む(一気に読もうとせず、負担を減らす)
- フォントを工夫する(ディスレクシア向けフォントを使う)
② 書字障害への対応
- 手書きを強要せず、パソコンやタブレットを活用(タイピングの方が得意なことが多い)
- ノートを取るのではなく録音・写真撮影を活用
- 音声入力やスペルチェック機能を使う
③ 算数障害への対応
- 数の概念を視覚的に学ぶ(数直線や図を活用する)
- 電卓や計算アプリを許可する(計算の負担を軽減する)
- 具体的なものを使って学ぶ(お金や積み木を使って計算を学習)
④ 心理的なサポート
- 「努力が足りない」という誤解を解く(本人のせいではないと伝える)
- 得意な分野を伸ばす(学習以外の分野で成功体験を積ませる)
- 自己肯定感を高める支援(できることに焦点を当てる)
LDの人は、適切なサポートを受けることで、学校教育や社会生活に適応しやすくなる
5. まとめ
学習障害(LD)は、知的発達に問題がないにもかかわらず、読む・書く・計算することが極端に苦手になる発達障害である LDを持つ人は、学校の授業についていけず、自信を失いやすいが、努力不足や怠けではなく、脳の情報処理の特性によるものである 診断が遅れると「自分はダメな人間だ」と思い込みやすく、適切な支援が受けられないまま成長してしまうことが多い しかし、音声教材、タブレット学習、視覚的な学習法などを活用することで、学習の負担を軽減できる LDの特性を正しく理解し、適切な支援を受けることで、本人の可能性を最大限に引き出すことが重要である