「生まれはどこでしたっけ?」
「えーっと、それは生まれたところ?それとも育った年数が長いところって意味?」
場が白ける。まあいつものことだ。俺はノルウェーで生まれたけれど、ノルウェーでは暮らすことなく最初に戸籍を与えられたのは南アフリカだった。それからすぐにサンフランシスコに引っ越した。西海岸で小学校卒業まで過ごした。小学校でひどいいじめにあっていたから、祖父母を頼ってニューヨークに引っ越した。親はついてきてはくれなかった。高校まで。優秀な成績だとかなんとか褒められて、ハーバード大学だイェール大学だMITだと色々選択肢を用意されたけれど、俺は自分のルーツが知りたくて日本に渡った。
大学は東京で過ごした。すごく不思議な街で魅了されて、三ヶ月に一回の割合で都内で引っ越しを繰り返した。それから、やっぱり本格的に学びたいことをみつけて25でイギリスへオックスフォード大学を卒業して、また日本に帰ってきた。今は33歳。
定職につかないバイトリーダーってあだ名で呼ばれていることは知っている。それが何を意味するのかはわからないけれど、まあ俺の標識なんだろうと思っている。
俺の学歴を誰も知らない。だから時々こんなふうに話題が振られるんだけど、俺が正直に丁寧に話そうとすればするほどに場が白ける。
日本はいいところだ。ありとあらゆることが生まれている気がする。覇気のないエネルギーの中で気だるそうに色んなものが生まれる、そのエネルギーの行方に魅了されている。どこからいきなりギアチェンジをするのか、その瞬間を見つけたいと思っている。漲るような巨大なエネルギーはどこにも見つけられないのに、毎日が惰性で流れていくようにしか見えないのに、知らない間にあらゆるものが生まれている。まるで魔法使いがいるかのようだ。理論化できない。
俺は日本の中にあるエネルギーの正体を突き止めたくて滞在している。多種多様な人と出会うために住まいを東京にしている。
これは俺の東京エネルギー解明日記だ。
to be continued....