目の前に美女が歩いている、それを目で追う、話しかける、ホテルに誘う、一発やれる、感謝して帰宅する。
これが一連の流れね。
ここから、オプションがついたりはずれたりして、女の価値って変わっていくんだけど、絶対落ちない女はこの一連の流れのどこにも属さない。まず目の前に歩いてない、だってもう売約済みだからね、いい男が連れていることがほとんど。
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花苗ちゃんは望の彼女だった。いや、違うな、婚約者だった。いつも望の後ろに隠れている子だったからすごい感じ悪くて、俺はお前みたいな女興味もねえよって意味ですごく丁寧に優しくしていたんだけど、どうやら普通に人見知りなだけみたいで、数ヶ月後には俺のこと「聖くん、聖くん!」ってどこへいくにもついてきたし、しつこいくらいに連絡するようになっていた。
変な能力があることは望から聞いていた。そのせいで定職につくことができないし、病気じゃないから誰かに説明することもできない、と。でも実際は「私じゃないと誰もできないこと偉い人はわかっているの」という軽い言葉以上に国家の最重要人物だった。
花苗ちゃんが祈ると世界はその通りになる。花苗ちゃんが泣くと世界は爆発する。花苗ちゃんが喜ぶと景気が良くなって、なんだか知らない地球の裏側の人までラッキーの連鎖がつながっていく。自分の立場をよく知っているから、花苗ちゃんを花苗ちゃんとしてしか見れないような鈍感な望と付き合っているんだなあと俺は思っている。
花苗ちゃんはモテる。その立場を利用したい悪い大人が花苗ちゃんにゴマスリに毎日望の家に列をなしている。あまりにひどいと花苗ちゃんは泣いてしまうから、そうすると、行きすぎた行動をとった人は各関係機関から難癖をつけられて刑務所にぶち込まれてしまうらしい。
「匙加減が難しいんだよなあ」
望も大概変わっているから、そんなことを花苗ちゃんの前であっけらかんと言ってしまう。俺なんか怖くて、絶対言えないけれどと薄ら笑いを浮かべてビールを飲んでいる、花苗ちゃんと目があった。なぜか花苗ちゃんが「聖くんになら何を言われてもいいのに」という声と微笑みを感じた。
え!?
という顔をした自分の顔が鏡に映ったと思ったらそこにあったのは鏡じゃなくてやっぱり花苗ちゃんだった。
翌日、午前5時。
俺のもとに公安を名乗る海坊主みたいな男が4人来て、俺をしょっ引いていった。
大きな部屋の真ん中に連行された。部屋には内閣総理大臣とローマ法皇とアメリカ大統領がいて、挨拶もしないまま話が始まった。単刀直入に言いますと前置きをしてからこう言った、
「あなたはメシアです。私たちの救い主です」。
何を??!!何が??!!何で??!!
この話は長くなりそうだから、今日はこの辺にしておく。
to be continued...