序章:鎖を断ち切るために
「幸せな結婚とは何だろう?」
19歳。私は純粋にそう信じて誓いました。
結婚し、20歳で長男を出産。22歳で次男。25歳で双子の長女と三男。27歳で四男。そして、32歳で五男。
13年の間に、六人の命をこの手で抱きました。子沢山になったのは、私が望んだ結果ではありません。夫が頑として避妊を拒否し続けたからです。
夫は言いました。「子育ては女の仕事だ」「俺の種だ、産んで当然だ」と。
その言葉は、暴力、借金、浮気という、夫が私に浴びせ続けた地獄の三重苦の、ほんの序章に過ぎませんでした。
突きつけられる現実
あなたは今、天井を見上げては「なぜ私だけがこんな目に」と涙を流し、「このまま死ぬまで耐えるしかない」と諦めているのではないでしょうか。あるいは、「この子たちの父親は彼しかいない」と、心の奥底で夫の存在に依存しているかもしれません。
――その思考こそが、あなたを縛る鎖です。
その鎖は、夫が巻いたものではなく、あなたが自ら「私には無理だ」という恐怖で固く締めてしまったものです。
私は34歳で、その鎖を断ち切りました。
長男は14歳、五男はまだ2歳。双子の長女と三男も、四男もまだ手がかかる年頃でした。六人の子どもたちを連れてゼロからのスタートを切ることは、想像を絶する困難でした。周囲の冷たい視線、法的な手続きの煩雑さ、そして何よりも、「本当に子どもたちを幸せにできるのか」という夜ごとの自問自答。そのすべてが、私を押し潰そうとしました。
でも、声を大にして言います。あなたが今、どんな状況にあろうとも、人生は必ずやり直せます。
誰も教えてくれなかった「子沢山の離婚の現実」
私は知っています。今、あなたが抱えている不安は、「夫への恐怖」だけではないことを。
六人の子どもたちを連れての生活は、想像以上の現実が突きつけられます。「この先、自分ひとりで六人の子どもたちをどうやって食べさせていくのか」という、現実的な経済の壁です。離婚を決意したあの夜、私の銀行口座にはわずかな貯金しかなく、社会人としてのキャリアは、13年の結婚生活によって完全に途絶えていました。
「避妊すら拒否する男の尻拭いを、どうして私がしなければならないのか?」
怒りと絶望に打ちひしがれる中、私は立ち上がりました。
本書では、そこから私がどのように情報を集め、役所の公的支援を頼り、夫に気づかれないよう水面下で準備を重ねていったのか。すべてのステップを隠さずに公開します。この本は、あなたの「離婚したい」という強い思いを、「六人の子どもを連れて離婚できた」という事実に変えるための、具体的な行動マニュアルになるでしょう。
愛の消滅と、母親としての本能
最初の暴力、繰り返される浮気、家のローンにまで手を出す借金。それらを私は、「いつか夫が変わってくれる」という間違った愛の幻想で包み込んでいました。子どもたちの存在が、私の心を弱くし、同時に強くしていました。
しかし、34歳で鏡を見たとき、そこにいたのは、生気のない、老け込んだ一人の母親でした。その顔が私に囁いたのです。
「あなたは、この子たちの未来を、この地獄の中に閉じ込めていいと思っているの?」
長男が父親と同じ道を歩むのではないかという恐怖。五男にまでこの暴力を目撃させるわけにはいかないという本能。愛は完全に消滅しました。残ったのは、母親としての責任と、人間としての生きたいという本能だけでした。
この本を読み終えたとき、あなたの中にある「無理だ」という固定観念は崩れ去っているでしょう。
私たちには、愛する子どもたちの笑顔を守る義務があります。そして、自分自身の人生を生きる権利があります。私たちが手を取り合い、この長いトンネルの先に光を見つける旅を、今、ここから始めます。
さあ、六人の子どもたちとの、自由な人生を取り戻すための、最初の一歩を踏み出しましょう。