収録: 本編約50,000字 / チェックリスト8枚 / そのまま送れる文例15本 / 記入シート8点
第1部:無料公開部分
3年後、自分の家に戻れなかった(仮例)
Dさん(仮名・44歳・会社員)は、ある年の1月に転勤の内示を受けました。赴任先は遠方、期間は「3年程度」。持ち家のマンションをどうするかを、2週間で決める必要がありました。
Dさんは、ポータルサイトの査定申込フォームから連絡が来た会社に相談しました。担当者は感じがよく、「空けておくのはもったいない。貸しましょう」と言いました。契約書が送られてきて、Dさんは署名し、家は借主に引き渡されました。
3年後、帰任の辞令が出ます。Dさんは管理会社に「戻りますので、そろそろ退去のご案内を」と連絡しました。返ってきたのは、こういう趣旨の説明でした。「この契約は普通借家契約ですので、借主さんが住み続けたいとおっしゃる場合、貸主さん都合では原則お出しいただけません」。
Dさんは家族と一緒に、勤務先の近くで賃貸を借り直すことになりました。自分の家のローンを払いながら、別の家の家賃を払う生活が始まりました。
——このDさんが落としたものを、順番に並べてみます(すべて仮例です)。
- 戻る予定があるのに、契約の種類を選んでいませんでした。 期間満了で確定的に終了する契約の形(定期借家)という選択肢があり得ましたが、説明を受けた記憶がありません。聞かなかったし、聞くべき項目だと知りませんでした。
- 賃料の査定を1社しか取っていませんでした。 提示された家賃が相場に対してどの位置にあるのか、判断する材料が手元にありませんでした。
- 借入先の金融機関に事前相談をしていませんでした。 住宅ローンは本人が住むことを前提とした商品であるのが一般的で、賃貸に出すときは事前の相談・届出が必要になり得ます。「聞いたら断られそう」と思って避けたのですが、転勤は金融機関にとって想定内の相談です。
- 売却の税の特例には期限の枠組みがあります。 居住用財産の特例には「住まなくなった日から一定期間内に売ること」を要件の柱の一つとするものがあり、貸し続けているうちに、その期間を過ぎてしまう可能性がありました。
- さらに、赴任先で借りていた賃貸を退去したとき。Dさんは入居時の写真を1枚も撮っていませんでした。立会で指摘された傷が、自分がつけたものか元からあったものか、証明する材料がありませんでした。その場で渡された書面に、金額が入らないままサインしました。
Dさんは、難しい判断を誤ったわけではありません。「この場面で、何を、どの順で、どこへ」を知らなかっただけです。
家を動かす場面——売る・貸す・出ていく——で損をする人の大半が、これです。制度は複雑ですが、やることのリストは有限です。順番も、ほぼ決まっています。だからリストにできます。
そしてもう1つ。Dさんが取り逃したものがあります。聞けば出てきたはずの情報です。
賃料の根拠になった事例。管理委託契約の解約条件。入居審査の基準。退去時の精算の考え方。これらは隠されていたわけではありません。聞かなければ出てこないだけです。そして、聞かれなかった情報は、そのまま数年後の負担になって現れます。
住まいを動かす実務には、この構造がずっと続きます。
- 書面をもらえば分かることを、口頭の説明だけで済ませてしまう
- 期限のあることを、期限を知らないまま通り過ぎる
- 比べられるものを、比べないまま決める
この3つを潰すだけで、結果はかなり変わり得ます。特別な交渉力も、専門知識も要りません。リストと、送る文面があればいい。それがこのパックです。
このパックが解決すること
このパックは、家を動かす場面で起きる3つの「詰まり」を解くために作りました。
詰まり1:何から手をつけるか分からない「売ると決めたが、まず何をすればいいのか」「貸すとして、誰に何を頼むのか」「退去まであと3週間、今日やることは何か」。ネットで調べると解説は出てきますが、自分がいま立っている場所からの次の一歩が書かれていないことが多い。このパックは全編を「やること・所要時間・完了判定」の形で書いています。手を動かして、終わったかどうかを自分で判定できます。
詰まり2:何を聞けばいいか分からない不動産会社にも管理会社にも、聞けば答えてもらえることが山ほどあります。ただし聞かなければ出てこない。何を聞けばいいか分からない人は、出てきた情報だけで判断することになります。このパックには、査定の前・契約の前・立会の前に投げる質問リストと、そのまま送れる文例を15本入れました。コピーして、宛名と日付を変えて送ってください。
詰まり3:期限を落とす解約予告の期限、媒介契約の満了日、定期借家の満了と再契約の通知、確定申告、居住用財産の特例に関わる期間、敷金の返還時期。家を動かす場面には、黙っていると過ぎていく期限が並んでいます。期限を落とすと、取り返せるものと取り返せないものがあります。このパックは、期限のあるものを全部カレンダーに落とし込むところまでを手順にしています。
逆に、このパックがやらないこともはっきり書いておきます。「売る・貸す・空けておく・明け渡す」のどれを選ぶべきかを計算式で設計する話、出口で手元にいくら残るかを1本の式に載せる方法、変数を動かして答えの安定性を確かめる方法——こうした判断の設計そのものは、このパックでは扱いません。それは別に完全版(巻末で触れます)があります。このパックの役割は、決めたあと、あるいは決める前に、目の前で発生している手続きを落とさず片付けることです。
このパックを作るときに決めた3つのルール
ルール1:読んで終わるページを作らない手順にはすべて「やること・所要時間・完了判定」を付けました。完了判定とは、その作業が終わったかどうかを自分で判定できる状態の記述です。「理解した」ではなく「◯◯が手元にある」「カレンダーに登録済み」という形にしてあります。読んだ気持ちで終わらないためです。
ルール2:書式を隠さないチェックリストや記入シートを「特典として配布」する形にはしていません。本文の中に、書式そのものを全部載せています。印刷しても、スマホのメモに写しても、そのまま使えます。買った瞬間から全部が手元にある状態にしたかったためです。
ルール3:結果を保証しないいくらで売れるかは市場と買主が決めます。家賃をいくらで貸せるかは需給が決めます。敷金がいくら戻るかは、契約の内容と部屋の状態によります。このパックが約束できるのは、判断してもらうための材料と、判断される前にできる準備を、漏れなく並べることだけです。そこは正直に書きます。
収録物の一覧
本編(第0部〜第6章)
- 第0部 使い方 — いまのあなたの状況から、開くべき章へ最短で飛ぶルート表
- 第1章 売る実務 — 自分査定の作り方、複数社への査定依頼と横並び比較、媒介契約の選び方と切り替え、内見準備の全項目、指値への応答、契約・決済・引き渡しの段取り、降りるときの伝え方
- 第2章 貸す実務 — 戻れる貸し方の組み方、募集条件と家賃設定の根拠づくり、管理委託契約のチェック項目、入居審査の物差し、家賃入金と滞納の初動、確定申告と減価償却の年次ルーティン
- 第3章 出ていく実務(敷金を守る) — 入居時・退去前の証拠化、退去立会当日のプロトコル(台本つき)、精算書を自分で引き直す手順、交渉から書面請求までの段階、引き下がるべき線の見極め
- 第4章 引っ越しと新居の実務 — 業者見積の取り方と約款の使い方、荷造り・インフラ切替の工程表、新居の初期不良対応、引っ越しを機に住居費を組み直す手順
- 第5章 そのまま送れる文例集 15本 — 査定依頼から、敷金返還の書面請求、新居の初期不良の申告まで。各文例に「いつ・誰に・何のために」と「送る前チェック」つき
- 第6章 チェックリストと記入シート — 本文内に書式を全部載せています。印刷しても、スマホのメモに写しても使えます
チェックリストと記入シート(第6章にまとめて収録・本文中にも都度掲載)
- 内見準備チェックリスト
- 査定比較シート
- 媒介契約の確認チェックリスト
- 管理委託契約の確認チェックリスト
- 入居時の証拠撮影チェックリスト
- 退去立会チェックリスト
- 引っ越し前後のやることリスト
- 資金イベントの時間表ほか、本文中に記入欄つきのシートを収録しています。
文例集 15本不動産会社向け・管理会社/貸主向け・引越業者向けに分類。件名から本文まで、そのまま貼り付けられる形にしてあります。
想定読者
次のいずれかに当てはまる方に向けて書いています。
- 売ると決めたが、査定依頼から何をどう進めるか分からない方
- 査定を取ったが、どの会社と契約すべきか判断できない方
- 貸すことを検討しているが、契約の形・家賃・管理会社の選び方を知りたい方
- 転勤が決まり、持ち家と現住居の両方の段取りを同時に回す必要がある方
- 賃貸を退去する予定で、敷金精算を対等な土俵でやりたい方
- 精算書が届いたが、金額の妥当性を自分で確かめる手順がほしい方
- 不動産会社や管理会社に何をどう聞けばいいかの言葉がほしい方
買わないでいただきたい方
正直に書きます。次の方には、このパックは向きません。
1. 「売るべきか貸すべきか」の答えそのものを求めている方このパックは手続きの実務書です。出口で手元に残る金額を式に置き直して4択を比較する枠組み、変数の感度、税引き後での並べ替え——こうした判断の設計は扱いません。そこを求める方は、巻末で紹介する完全版のほうが適しています。
2. 収益不動産の運用ノウハウを期待している方投資物件の選び方、利回り、規模拡大の話は一切扱いません。扱うのは、あなたが住んでいた(または住んでいる)家と部屋の手続きだけです。
3. 「読めば高く売れる」「必ず敷金が戻る」と書いてあることを期待している方書きません。成約価格は市場が、精算の内容は契約と部屋の状態が決めます。このパックができるのは、落とせる書類を落とさず、聞けることを聞き、期限を守る——結果が変わり得る余地を、自分の側で最大化することだけです。結果には個人差があります。
4. すでに売却・賃貸転用・退去精算を一通り自分で回した経験がある方2回目・3回目の方には、既知の内容が多くなる可能性があります。
著者について
川崎 拓也 — K agency 代表。宅地建物取引士・2級FP技能士。元金融機関勤務。住まいの資金計画と、その前後で発生する手続きの実務に携わってきました。「制度は知っていたのに、期限を過ぎていた」「聞けば出てきた情報を、聞かないまま決めていた」——現場で最も多く見てきたのは、この2つです。だからこのパックは、知識ではなく手順と文面の形にしました。
お問い合わせ:info@k-agency.biz / K agency 公式LINE
使い方の前提
- 本パックの金額はすべて「例えば」の仮例です。実際の金額は物件・地域・時期・契約内容によって異なります。
- 法令・約款・税制は執筆時点の一般的な枠組みとして書いています。改正や各社の約款改定で変わります。実行前に、国税庁サイト・税務署・自治体・国土交通省の公表資料・管理会社・専門機関等でご確認ください。
- 登場する人物・社名・数値はすべて仮名・仮例です。
- 本パックは一般的な情報提供であり、特定の不動産取引の勧誘や、個別の税務・法務判断を行うものではありません。
ここまでが無料公開部分です。
