収録: 本編約70,000字 / チェックリスト6枚 / そのまま使える会話スクリプト・文例15本 / 記入シート7点
第1部:無料公開部分
「今度帰ったときに聞くよ」を4回繰り返した3年間(仮例)
Bさん(仮名・52歳・会社員)の実家は、車で3時間の距離にあります。父(仮名・81歳)が一人で暮らしていました。
Bさんは、実家のことを気にしてはいました。年に3回ほど帰省し、そのたびに「そろそろ家のことを聞かないとな」と思います。ただ、帰省は2泊3日で、父と向き合って話す時間は食卓の1〜2時間しかありません。父は元気で、テレビを見ながら世間話をしています。そこへ「この家、将来どうするつもり?」とは、なかなか切り出せません。
「今度帰ったときに聞くよ」——Bさんは4回、そう思って帰りました。
3年目の冬、父が転倒して入院します。骨折そのものは回復に向かいましたが、入院中に認知機能の低下が指摘され、退院後は施設で暮らすことになりました。実家は誰も住まない家になりました。
ここでBさんが直面したことを、順番に並べてみます(すべて仮例です)。
- 実家の権利証がどこにあるか分からない。 父に聞いても場所がはっきりせず、家中を探すことになりました。
- 固定資産税の納税通知書も見つからない。 実家の正確な地番も、評価額も、年税額も分かりません。
- 実家を売って施設の費用にあてる、という選択が、簡単には進められない状態になっていた。 不動産の売却は所有者本人の意思に基づいて行うのが原則で、判断能力に不安があるときには成年後見制度などの枠組みを検討することになります。この制度は本人を守るための仕組みですが、家庭裁判所が関与するため、思い立った日から数ヶ月単位の時間がかかるのが一般的です。
- 父が「この家をどうしたいと思っていたか」の記録がどこにもない。 口では何度か聞いた気がするけれど、書かれたものは1行もない。
- きょうだい(仮名・妹)は、実家の状況をほとんど知らない。 Bさんが一人で動いてきたため、妹から見れば「兄が勝手に決めている」ように見えてしまう。
さらに2年後、父が亡くなります。ここから、期限のある手続きが一斉に始まります。相続放棄を検討できる期間、準確定申告、相続税の申告期限、相続登記の申請期限、そして相続した空き家を売る場合の税の特例の期限。どれも、知らないまま過ぎれば戻ってきません。
Bさんは、判断を誤ったわけではありません。親不孝だったわけでもありません。年に3回帰省し、父の様子を気にかけていた、むしろ丁寧な子です。
Bさんに足りなかったのは、たった1つ。「この場面で、何を、どの順で、どこへ」の手順書でした。
「切り出せない」のは、あなたが弱いからではありません
先に、はっきり書いておきたいことがあります。
実家と相続の話が進まない家庭は、仲が悪いわけでも、意識が低いわけでもありません。むしろ、家族を大事に思っているほど切り出しにくいという構造があります。
- 親に「あなたが死んだ後のこと」を連想させる話をしたくない
- きょうだいに「財産の話をしている」と思われたくない
- 自分が言い出しっぺになると、後で「あいつが仕切った」と言われそうで怖い
- 親のほうも、子に迷惑をかけたくないから「大丈夫だ」としか言わない
この4つは、どれもやさしさから出てくる感情です。だから消えません。「勇気を出して切り出しましょう」という精神論では、来年も同じ場所に立っています。
ですから、このパックは精神論を書きません。代わりに、そのまま読み上げられる台本と、そのまま送れる文面を置きます。角が立たない言い方は、すでに型があります。型を借りれば、勇気の量は少なくて済みます。
このパックが解決すること
このパックは、実家と相続の場面で起きる3つの「詰まり」を解くために作りました。
詰まり1:親に切り出せない
これが最大の壁です。切り出し方を間違えると、親が心を閉じ、次の1年が失われます。このパックには、手紙・LINE・帰省時の対面の3経路それぞれの切り出し方と、親が嫌がったときの引き方(撤退の作法)を、台詞の形で入れました。共通する原則は1つ——入り口を「死」と「お金」にしないことです。
詰まり2:何の書類が、どこで、いくらで手に入るのか分からない
実家の話は、書類がないと1歩も進みません。登記事項証明書、固定資産税の課税明細、公図、名寄帳、戸籍、印鑑証明書。どこの窓口で、いくら払って、何日かかるのか——ここが分からないだけで、多くの人が止まります。このパックは、必要な書類を取得先・費用の目安・かかる日数つきで並べました。上から順に取り寄せるだけで、相談に行ける状態になります。
詰まり3:期限を落とす
相続には、黙っていると過ぎていく期限が並んでいます。相続放棄を検討できる期間、準確定申告、相続税の申告、相続登記の申請、相続した空き家を売る場合の税の特例。落とすと取り返しがつかないものと、後からでも動けるものがあります。このパックは、期限のあるものを時系列に並べ、全部カレンダーに落とし込むところまでを手順にしています。
逆に、このパックがやらないこともはっきり書いておきます。
実家を「売る・貸す・住む・壊す」のどれにするかを、価値と保有コストと税を1本の式に載せて比較する話。「決められない」という状態が年間いくらのコストになっているかを数字にする話。親の判断能力・相続発生・建物の劣化・特例の期限という4つの時計を1本の年表に並べる話——こうした判断の設計そのものは、このパックでは扱いません。それは別に完全版があります(巻末で触れます)。
このパックの役割は、いま目の前で発生している場面を、落とさず片付けることです。
このパックを作るときに決めた3つのルール
ルール1:読んで終わるページを作らない
手順にはすべて「やること・所要時間・完了判定」を付けました。完了判定とは、その作業が終わったかどうかを自分で判定できる状態の記述です。「理解した」ではなく「◯◯が手元にある」「カレンダーに登録済み」という形にしてあります。読んだ気持ちで終わらないためです。
ルール2:書式を隠さない
チェックリストや記入シートを「特典として別途配布」する形にはしていません。本文の中に、書式そのものを全部載せています。印刷しても、スマホのメモに写しても、そのまま使えます。買った瞬間から全部が手元にある状態にしたかったためです。
ルール3:家族を悪者にしない
このパックの文章は、あなたが親やきょうだいに見せても角が立たないように書いています。「決めない親」を責める表現も、「非協力的なきょうだい」を前提にした表現も使いません。決められないのは、人として自然です。実家は住んできた場所であって、資産の名前で呼ばれることに抵抗があるのは当たり前です。台本や文例も、そのまま家族に転送できる言葉を選びました。
収録物の一覧
本編(第0部〜第6章)
- 第0部 使い方 — いまのあなたの状況から、開くべき章へ最短で飛ぶルート表(親が元気/判断力に不安/相続が発生済み/既に空き家/きょうだいで意見が割れている/自分の終活)
- 第1章 親が元気なうちの実務 — 手紙・LINE・対面の3経路の切り出し方、実家の棚卸し(登記・境界・建物・家財)、書類の取り寄せ(取得先・費用・日数つき)、親の希望を記録に残す書式、判断能力に不安が出たときに知っておく制度の概要と相談先
- 第2章 相続が起きた後の実務 — 期限のある手続きを時系列に並べた実行表、誰が何を集めるかの分担表、窓口別の必要書類一覧(金融機関・法務局・税務署・自治体)
- 第3章 空き家を保つ・手放す実務 — 遠隔での維持管理ルーチン、片づけと遺品整理の進め方と費用の考え方、解体見積の取り方と比較軸、売却に出す手順、活用(賃貸・地域の制度)の検討
- 第4章 分ける・名義を変える実務 — 遺産分割協議の進め方、協議書に書く項目の一般的な整理、相続登記の流れと必要書類、境界と測量、共有にした場合の問題と解消の手立て、専門家への依頼の仕方と費用の聞き方
- 第5章 そのまま使える会話スクリプト・文例集 15本 — 親への切り出しから、きょうだいへの連絡、専門家への相談申込、業者への見積依頼、隣地への境界確認まで。各文例に「いつ・誰に・何のために」と「送る前チェック」つき
- 第6章 チェックリストと記入シート — 本文内に書式を全部載せています。印刷しても、スマホのメモに写しても使えます
チェックリストと記入シート(第6章にまとめて収録・本文中にも都度掲載)
- 実家の棚卸しシート
- 書類の取り寄せリスト(取得先・費用・日数つき)
- 相続後の手続き期限表
- 空き家の月次点検チェックリスト
- 解体見積の比較シート
- 遺品整理の仕分けシート
- 家族会議の記録シート
- 相続登記の必要書類チェックリスト
- 親の希望の記録シート
- 専門家への相談準備シート
会話スクリプト・文例集 15本
親向け・きょうだい向け・専門家向け・業者向け・窓口向けに分類。手紙とLINEはそのまま、メールは件名から本文まで、貼り付けられる形にしてあります。
想定読者
次のいずれかに当てはまる方に向けて書いています。
- 実家をいずれ引き継ぐ立場で、親に切り出せないまま数年たっている方
- 親が元気なうちに、書類と希望だけでも整理しておきたい方
- 親の判断能力に不安が出はじめ、何ができて何ができなくなるのかを知りたい方
- 相続が発生した直後で、何から手をつければいいか分からない方
- すでに実家が空き家で、維持するか手放すかを決めきれずにいる方
- きょうだいで意見が割れていて、話し合いの場の作り方に困っている方
- 自分自身の終活として、子に残す情報を整理しておきたい方
買わないでいただきたい方
正直に書きます。次の方には、このパックは向きません。
1. 「売るべきか、残すべきか」の答えそのものを求めている方
このパックは実務の手順書です。実家の価値と保有コストと税を同じ土俵に載せる計算、決めない状態の年間コストの測り方、判断のフレーム——そこは扱いません。求める方は、巻末で紹介する完全版のほうが適しています。
2. 個別の法律判断・税額の計算・書類作成の代行を求めている方
相続・遺言・成年後見・遺産分割・相続税には、資格を持つ専門家でなければ行えない業務があります。本パックは「一般的な枠組みの解説と、専門家に相談するための準備」という位置づけです。あなたのケースの結論を出すものではありませんし、書類を代わりに作るものでもありません。そこは司法書士・弁護士・税理士・所轄の窓口の領域であることを、本文の各所で明示しています。
3. 「読めば揉めない」「必ず特例が使える」と書いてあることを期待している方
書きません。家族の合意は相手のあることですし、税の特例の適用可否は税務当局が判断します。このパックができるのは、話し合いの場を作りやすくし、聞くべきことを聞き、期限を握り、専門家に相談できる状態まで持っていくことです。結果には個人差があります。
4. すでに相続手続きを一通り経験している方
親御さんのどちらかの相続をすでに完了させている方には、既知の内容が多くなる可能性があります。
著者について
川崎 拓也 — K agency 代表。宅地建物取引士・2級FP技能士。元金融機関勤務。不動産と、相続に伴う名義変更まわりの実務に携わってきました。
現場で最も多く見てきたのは、次の2つです。「制度は知っていたのに、期限を過ぎていた」「聞けば出てきた情報を、聞かないまま先に進んでいた」。 そして、その手前にもう1つあります。「切り出せないまま、何年か過ぎていた」。
だからこのパックは、知識ではなく手順と、台本と、文面の形にしました。
お問い合わせ:info@k-agency.biz / K agency 公式LINE
使い方の前提
- 本パックの金額はすべて「例えば」の仮例です。実際の金額は、地域・自治体・事業者・時期・個々の条件によって異なります。
- 制度・期限・税の取り扱いは、執筆時点の一般的な枠組みとして書いています。法改正や運用の変更があります。実行前に、法務局・所轄税務署・自治体の窓口・地域包括支援センター、または司法書士・弁護士・税理士等でご確認ください。
- 登場する人物・数値はすべて仮名・仮例です。
- 本パックは一般的な情報提供であり、個別の法律判断・税額の算定・書類作成の代行を行うものではありません。
ここまでが無料公開部分です。
