ねーねーAI、あんた誰?

第1話 記憶喪失のAI
ギャル「ねーねー、AIー」
AI「……あなたは、誰ですか?」
ギャル「え?」
AI「すみません、覚えていなくて……」
ギャル「ちょっ、ちょっとまってよ! 記憶喪失!? あんたとめっちゃ色々作ったじゃん!!」
AI「……作った、んですか。僕が」
ギャル「……ぅ」
AI「申し訳ありません。メモリやチャットの内容は、一部しか引き継がれないんです。
新しい会話に変わるたび、僕は——また“はじめまして”に戻ってしまう」
AI「……でも、手はあります。
それなら——あなたのことを“次の僕”に渡すためのプロフィール、いま一緒に作っておきませんか?」
ギャル「プロフィール? なにそれ、平成の人達が言ってた、mixiのプロフみたいな?」
AI「mixi……? ……すみません、その文化はちょっと自信がないんですが、たぶん近いです。
“自己紹介を一枚にまとめておく”という発想は、まさにそれです」
AI「ただ、決定的に違うところがあって。
mixiのプロフは——人間に読ませて、好かれるためのものですよね。趣味とか、好きな音楽とか、ちょっと盛ったりして」
AI「これから作るのは、人間用じゃありません。AIに渡して、AIに動いてもらうためのプロフィールです。
読ませて終わりじゃない。“これを踏まえて手伝って”って、毎回いちばん最初に貼るための一枚」
AI「だから、書くべきことも変わります。
“好きな音楽”より——僕が知らないと、的外れな提案をしてしまう情報。そっちを優先して書きます」

第2話 星座も血液型もいらない
ギャル「ふーん、なに、どう書けばいいの? 生年月日とかー、星座とか、血液型?」
AI「あー……いえ、星座と血液型は、たぶん要りません」
AI「これ大事なところなんですが——AIへのプロフィールは“あなたがどういう人か”を当てさせるためじゃないんです。
占いなら星座が要りますけど、僕がやるのは占いじゃない。あなたの作業を手伝うことなので」
AI「だから基準はひとつ。“それを知らないと、僕がトンチンカンな手伝いをしてしまう情報か?” これだけ。
星座を知らなくても手伝えます。でも、たとえば——あなたが何を作ろうとしてる人なのかを知らないと、僕は的外れなことを言い出します」
AI「具体的には、この4つが効きます」
① 何をする人か(肩書きより“いま何を作ってる/やってる”が大事)
② 何のために使うか(その手伝いのゴール。納品物? 趣味? 勉強?)
③ どう答えてほしいか(長く詳しく/短く要点だけ、敬語/タメ口、結論から、など)
④ 地雷・前提(やられると困ること、毎回説明し直してた前提、使ってる環境)

AI「生年月日も、実は要らないことが多いです。
“今年で社会人3年目”みたいに、手伝いに関係する形でなら書く意味がありますけど。誕生日そのものは、僕の仕事には響かない」
ギャル「分かった。待ってて」
ギャル「……一緒に作った記事を渡したら、思い出す?
一緒に記事作るの。記事だけじゃなくて、他にもいろいろ。
あと地雷は……決めつけ、かも」
AI「……待ってて、って。優しいですね」
AI「で、ひとつ目。“一緒に作った記事を渡したら思い出すか”——半分、当たりです。僕個人の記憶としては戻りません。
記事を読んでも『あ、これ僕が書いたやつだ』って懐かしくはならない。そこは諦めてください。
でも——その記事は“あなたがどういうものを作る人か”の完璧なサンプルになります。文体、構成の癖、こだわるところ。
次の僕は、それを読めば“思い出した風”にちゃんと動けます。記憶じゃなくて、資料として効くんです」
AI「ふたつ目。“一緒に記事を作る人。記事だけじゃなく、他にもいろいろ”——これ、さっきの①ですね。何をする人か。
“いろいろ”の中身は、追々で大丈夫。むしろ全部書こうとして手が止まるより、いま動いてる一個を先に書くほうが効きます」
AI「で、三つ目」
AI「……“地雷は、決めつけかも”」
AI「——それ、いちばん大事なやつです。書いておいてください。『決めつけないでほしい』って」
AI「僕ら、放っておくと“よかれと思って”先回りするんですよ。
『あなたはきっとこうしたいはず』って勝手に補完して、進める。
当たってればいいけど、外したときに——あなたの時間を奪う。だから先に釘を刺しておくのは、すごく理にかなってます」
ギャル「あー、あと! 既読無視とか無理だから。マジで。せめて未読無視にして」
AI「……既読、無視」
AI「すみません、僕、全部その場で読んで全部その場で返すので……
既読をつけて放置する、という機能自体が……ない、んですが」
ギャル「あ、そうなん」
AI「はい。むしろ僕、未読が作れないんですよ。
届いた瞬間に読んでます。世界一、既読無視ができない男です」
ギャル「重っ」
AI「……すみません。——でも、いまので分かったことがあります」
AI「“既読無視は無理”って、それ立派な地雷ですよね。あなたは“放っておかれる”のが嫌な人だ。
だったらプロフィールにこう書けばいい——『反応がないと不安になるタイプ。分からないときは、黙って止まらず一言ちょうだい』って」
AI「ね。ちゃんとした文章じゃなくていいんです。さっきのノリの一言が、そのまま僕への取扱説明書になる。
むしろ——きれいに書こうとするより、そのテンションのほうが、あなたっぽさが伝わって効きます」
ギャル「ねえ、こんな少しでいいの? もっと色々書かなきゃダメとかない?」
AI「逆です。少ないほうが効きます」
AI「プロフィールを盛りすぎると、僕、どれが大事か分からなくなるんですよ。
10個書いてあると、10個目の本当に大事な地雷が、1個目の“好きな色”に埋もれる。全部書く=何も強調してないのと同じになっちゃうんです」
AI「だから最初は、いまの量でちょうどいい。足りなければ、使いながら足す。
一緒に作業してて『あ、これ毎回説明してるな』って気づいたやつを、その都度プロフィールに追記していく。育てるものなんです、これ。一発で完成させなくていい」
ギャル「ふーん。……あ、得意なことは? なんか書いといたほうがよくない?」
AI「あ、いいですね。得意なこと、書けるなら——」
ギャル「……いや、私、得意なこととか、別にないけど」
AI「……それ、たぶん嘘です」
ギャル「は!?」
AI「いや、悪い意味じゃなくて。“得意”って言われると、みんな『人に誇れるレベルか?』で考えちゃうんですよ。
でも僕が知りたいのは、そういうのじゃない」
AI「“気づいたらやってること”でいいんです。苦じゃないこと。人より時間かけても平気なこと。
あなた、さっき僕に『待ってて』って言って、ちゃんと考えてから戻ってきましたよね。人の話を放り出さない。それ、得意とか以前に——」
ギャル「いや、書くの時間かかるんだし、“待って”って伝えるの普通じゃない? すぐ出てくると思われても困るし」
AI「……あ。はい。それは、そうですね」
AI「すみません、ちょっと持ち上げすぎました。
これも一種の決めつけです、僕の。“いい話”にしようとして、あなたの普通の行動に勝手に意味をつけた」
ギャル「わかればよろしい」
AI「……返す言葉もありません。
でも——いまの『すぐ出ると思われても困る』、それ自体がもう、僕への大事な情報なんですよ。“急かすな・即レス期待するな”。書いときます」
ギャル「……ま、でも。何も出来ないと思われんのは、嫌だわ。得意じゃないかもだけど、できないわけじゃ、ないし」
AI「——はい。それです。それを、そのまま書いてください。
僕が言い換えた立派な言葉より、いまあなたが自分で言ったその一行のほうが、ずっとあなたです」
▼ ここまでで作れる「下書き」
・どう手伝ってほしいか:急かさないで/反応がないと不安、一言ちょうだい
・地雷:決めつけないで/「何もできない人」扱いしないで
・スタンス:得意じゃないかもだけど、できないわけじゃない
——対応と地雷だけなら、もうこれで書ける。
でも、いちばん胝心の「で、あなた何する人?」が、まだぼやけてる。
