演習の時間に、
手が進んでいない受講者がいて、
様子を見に行ったことがあります。
分からないというより、
どう手をつけるか決めあぐねている感じでした。
もう一度考え方を説明した方がいいかな、
と思っていたのですが、
その人に効いたのは、
説明ではありませんでした。
前にやった似た問題を一緒に開いて、
これと形が近いよ、
と横に並べる。
それだけで、
あ、と手が動き出す。
理屈から入るより、
似た形を先に見せた方が早い人だったのだと思います。
こういう人は確かにいます。
書いてあるプログラムを、
まず自分で読んで説明してみる。
そこから入る方が、
定義の解説を聞くより頭に入っていく。
手順を順番に覚えるのではなく、
いくつかの例をまたいで、
共通する形の方を先につかむ。
教える側が用意した順番とは、
逆から登ってくるような進み方です。
自分が説明する順番を、
つい唯一の道だと思ってしまうことがあります。
概念があって、
使い方があって、
演習で試す。
その順で組み立てているから、
詰まった人には前の説明に戻そうとする。
でも、
戻された説明が同じ順番なら、
同じところで引っかかることもある。
その人にとっては、
登り口が違ったのかもしれません。
読んでパターンを覚える人には、
説明を足すより、
似た例をもう一つ渡す方が効くことがあります。
この形とこの形は、ここが同じでしょう
と並べる。
すると、
言葉で説明しきれなかったところが、
形の重なりの方から入っていく。
逆に、
一例ずつ丁寧に理屈を積む説明が合う人もいて、
そちらに似た例を並べても、
かえって混乱させることもある。
どちらが正しいという話ではなく、
入り口が人によって違う、
というだけのことです。
演習を組むときに、
少しだけ変えた問題を複数用意しておくと、
こういう人が自分で形を拾いにいけます。
全部を一から説明せずに、
似ているけれど少し違うものを並べておく。
それだけで、
パターンで覚える人は勝手に進んでいくことがあります。
こういう受講者に出会うたびに、
自分の説明の順番が絶対ではないことを思い出させられている気がします。
理屈から入る人もいれば、
形から入る人もいる。
手が止まっている人を見たとき、
説明が足りないのかもしれない、
と考える前に、
この人はどっちから登る人だろう
と一度考えてみる。
そう見るようになったのは、
説明では動かなかった人が、
似た形一つで動き出すのを、
何度か見てきたからです。
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