負けた直後ほど、大きく取り返したくなる。FXのメンタルは「崩れる方向」で管理する
仲値トレーダー
損切りが1回入りました。金額はいつもと同じです。
ただ、その日はどうしても取り返したくなって、次のエントリーでロットを上げました。
そして、その1回で日をまたぐ含み損を抱えます。
私も何度も経験があるのですが、こういうときに限って、翌朝のチャートは逆に走っています。
当時の私は「メンタルが弱いからだ」と思っていました。ただ、調べると違いました。
では、少しずつ解説していきます。
1.崩れ方には、決まった向きがあります
メンタルの話は、たいてい「強い」か「弱い」かで語られます。
ですが、研究を追うと違う絵が出てきます。
ストレスがかかったとき、人の判断はランダムに乱れるのではありません。決まった方向へ寄ります。
しかもその方向が、初心者がいちばん困っている症状とぴったり重なっています。利確が早くなり、損切りが遅くなる方向です。
つまり、性格の問題ではなく、反応の型の問題ということになります。
型が分かっていれば、先回りできます。まずは自分の記録からです。
2.私の18営業日でも、1日の結果は19.3倍ばらつきました
私はドル円の朝9時台だけを記録しています。7月20日から8月14日までの18営業日ぶんです。
1日の合計獲得幅を並べると、こうなりました。
- いちばん大きい日 104.4pips
- いちばん小さい日 5.4pips
- 104.4 ÷ 5.4 = 19.3倍
pipsは値動きを数える単位です。ドル円なら0.01円で1pipsになります。
同じやり方で、同じ1時間を見ています。それでも1日の結果は19倍ちがいました。
平均は25.57pips、中央値は17.75pipsです。そして平均を下回った日は18日中14日。77.8%でした。
つまり、うまくいっている期間でも、8割近い日は「平均以下」になるということです。
1か月を20営業日とすると、20 × 0.778 = 15.6日。毎日その日の結果で自分を採点すると、月に15日以上「今日はダメだった」という判定が出ることになります。
これでメンタルが持つほうが不自然です。私の記録なので母数は小さいですが、方向は次の研究と重なります。
3.ストレスは、利益では臆病に、損失では大胆にします
アメリカ、ニュージャージー州にある大学の研究者、ポルチェリ氏とデルガド氏の実験です。
参加者は27人。片手を氷水に2分間つけてストレスをかけた状態と、常温の水につけただけの状態で、同じ賭けを選ばせました。
賭けはすべて期待値が同じで、確率と金額の組み合わせだけが違います。「80%で0.75ドル勝つ」か「20%で3ドル勝つ」か。損を出す側も同じ形です。
結果はこうなりました。
- 利益が出る側の賭けでは、ストレス下で危険なほうを選ぶ割合が有意に減った
- 損を出す側の賭けでは、逆に危険なほうを選ぶ割合が増える傾向が出た
つまり、勝っているときは早く確定したくなり、負けているときは大きいほうに賭けたくなる。この2つが同時に起きるということです。
ちなみに同じときにやった単語の記憶テストは、正答率が0.87から0.80へ落ちています。判断の質が落ちながら、同時に向きも変わっている。ここが厄介な部分になります。
4.削っていたのは「負けた額」ではなく「読めなさ」でした
イギリス、ケンブリッジ大学の研究者、コーツ氏とハーバート氏は、ロンドンの実際の取引フロアで、17人の男性トレーダーから8営業日ぶんの唾液を集めました。
測ったのはコルチゾール。ストレスに反応して出るホルモンのことです。
ここが私にはいちばん意外でした。
- 「損を出した日」と「利益が出た日」で、コルチゾールに差はなかった
- 上がっていたのは、損益のばらつきが大きい人。ばらつきの大きさだけで、コルチゾールの高さの48%が説明できた
- さらに強く効いていたのが、市場が見込む今後の変動の大きさ。こちらは86%を説明した
負けた額ではなく、読めなさに反応していたということです。
野球で例えるなら、三振したことより「次に何が来るか分からない打席に立ち続けること」のほうが疲れる、という話になります。
だとすると、対策の向きが変わります。損失を減らそうとするより、読めない場面に立たないほうが直接的です。
5.ストレスが長引くと、今度は逆へ振れます
同じケンブリッジ大学の研究チーム、カンダサミー氏らは、これを逆から確かめました。
健康な36人に、8日かけてコルチゾールを実際に上げています。上げ幅の目標はおよそ68%。ロンドンのトレーダーで観測された水準に合わせたものです。
8日後、参加者は安全なくじばかりを選ぶようになりました。リスクを取る度合いは44%下がったと報告されています。
面白いのは、短時間だけ上げたときには、この変化があまり出なかった点です。
つまり、急なストレスと長く続くストレスでは、向きが逆になるということです。
- 急なストレス 損失側で大胆になる
- 長く続くストレス 全体に手が出なくなる
連敗の直後にロットを上げることと、しばらくして「怖くて入れない」になることは矛盾していません。時間の長さが違うだけです。
6.眠れていない日は、守りから攻めへ勝手に切り替わります
シンガポールとアメリカの大学に所属する研究チーム、ベンカトラマン氏らは、健康な29人に一晩まったく寝ないでもらい、翌日に賭けの選び方を調べました。
選択肢は「最悪の損失を小さくする」か「最大の利益を大きくする」かです。
一晩寝ないだけで、選び方は損失を守る側から利益を取りにいく側へ移りました。
そして重要なのが、この変化が眠気の強さとは相関していなかったことになります。
「眠いから鈍る」のではありません。眠っていないと、好みそのものがずれる。本人はいつもどおり考えているつもりのままです。
日本で相場を見るとなると、どうしても夜が中心になります。私が朝の時間だけに絞っている理由の一つです。
7.私の負けパターン
ここでは最後に、私がやってしまったルール外の負けパターンをお伝えします。
- 損切りの直後に、次を探しにいく 冷静なつもりでした。今なら、これは損失側でリスクが上がっている状態だと分かります。
- 利益が出た日に「今日はいける」と感じてロットを上げる 上げた日に限って平均以下でした。18日中14日が平均以下なので、確率どおりです。
- 寝不足の日に、いつもより長く画面を開く 取り返そうとして時間を伸ばすのですが、いちばん守りが緩んでいる日でもあります。
- 数字を1日単位で見る 19.3倍ばらつくものを毎日採点していました。実力ではなく、ばらつきを採点していたことになります。
ルールを守る。これが大事だと改めて気付きました。
8.まとめ
覚えて帰っていただきたいのは、次の3つです。
- ストレスは判断を鈍らせるだけでなく、向きを変える。利益では臆病に、損失では大胆になる
- 消耗させているのは負けた額ではなく、読めなさのほう
- 1日の結果は19.3倍ばらつく。日単位の採点は、実力ではなくばらつきを採点している
ただし、以下のような日は判断そのものを見送ります。
- 睡眠が明らかに足りていない日
- 前日に大きく損を出して、まだ気持ちが戻っていない日
- 指標の発表が重なって、値動きの幅が読めない日
今日やることは一つだけです。
いつもの記録に、2つだけ項目を足してください。前の晩に眠れたかどうかと、取引の前に感じていた焦りを5段階で。それだけでOKです。
1週間ぶんたまると、負けた日の並びが相場ではなく自分の状態と重なっていることが見えてきます。
以上が、メンタルが崩れる仕組みと、その先回りの仕方になります。ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました。
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ただ、実際にやろうとすると、次の壁が出てきます。
- 疲れている日ほど、確認の手順を飛ばしてしまう
- その日の自分の状態を、取引の前に判定できない
- 見送る判断を、毎回同じ基準で下せない
どれも意志の問題ではありません。毎回同じ基準を通し続けること自体が、それなりに重い作業だからです。だとすると、判断の前工程は道具に任せたほうが楽になります。
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矢印は、条件が揃ったという事実の表示です。勝ちの合図ではありません。損切りとロットは、必ずご自身のルールで決めてください。
まずは今日の記録から始めてください。受け取るのは、そのあとで大丈夫です。
