移動平均が上を向いたので買ったら、そこが天井だった。仲値トレードは「続いた本数」を先に数える
仲値トレーダー
移動平均が上を向きました。高値も切り上がっています。トレンドが出た、と判断して買います。
そして、そこが天井でした。
翌日チャートを開いて「あれはレンジだった」と気付く。私も何度も経験あるのですが、後から見ると全部きれいに見えるんですよね。
今日は、この「見分ける」という言葉そのものを疑ってみます。
1.9時台の15分足で、同じ向きが3本続いた日は16日中5日でした
まず、自分の記録から見ていきます。
私はドル円の朝9時台だけを記録しています。9時台には15分足が5本入るので、その5本の向きを毎日メモしています。15分足というのは、15分ぶんの値動きを1本にまとめたローソク足のことです。上げて終われば陽線、下げて終われば陰線になります。
16営業日ぶんを数え直しました。
- 同じ向きが3本以上続いた日 5日(5 ÷ 16 = 31.3%)
- 4本続いた日 2日(12.5%)
- 5本すべてが同じ向きだった日 0日
- 最長でも2本しか続かなかった日 11日(68.8%)
つまり、9時台の中に「一方向に並び続ける区間」はほとんど出ていないということです。私の記録なので母数としては小さいですが、3分の2の日は2本までで終わっています。
「トレンドが出てから乗る」と決めていると、乗る場面がそもそも来ない。これが16日ぶんの実感です。
2.コイン投げでも、3本続く確率は50%あります
では、この31.3%は少ないのでしょうか。比べる相手がないと判断できません。
そこで、完全にランダムな並びを計算してみました。コイン投げを5回して同じ面が3回以上続く確率です。5回の並び方は32通りで、そのうち16通りが該当します。
16 ÷ 32 = 50.0%
まったくのランダムでも2日に1日は「3本続く」が起きるということです。実測の31.3%はランダムより少なめですが、16日では差があるとまでは言えません。
3本続いた並びを見て「トレンドだ」と判断するのは、コインの表が3回続いたのを見て「表の流れが来た」と言うのと同じ形をしています。
確率論には、アークサイン法則と呼ばれる定理があります。ランダムに上下する値動きでは、出発点の上側にいた時間の割合が半々になる確率が最も低い、というものです。
コイン投げ200回を20万回ぶん試してみました。上側にいた時間が8割超か2割未満になる確率が50.3%、40〜60%に収まる確率はわずか12.8%です。
ランダムでも「ずっと片側に寄っている」のが普通で、「行ったり来たり」のほうが珍しい。レンジらしいレンジは、あまり出てきません。
3.移動平均の遅れは、設定を変えても消えません
次は、判定の道具そのものの話です。
移動平均というのは、直近◯本の終値を平均した線のことです。この線には、数学で決まった遅れがあります。値動きがまっすぐ動いているとき、N本の移動平均は平均して (N − 1) ÷ 2 本ぶん後ろにずれます。
- 5本の移動平均 (5 − 1) ÷ 2 = 2.0本の遅れ
- 20本の移動平均 (20 − 1) ÷ 2 = 9.5本の遅れ
- 75本の移動平均 (75 − 1) ÷ 2 = 37.0本の遅れ
15分足で20本を使うと、9.5本ぶん、つまり142.5分ぶん遅れて向きが変わる計算になります。9時台は60分しかありません。
「設定を変えれば早く分かる」と思って本数を減らすと、今度は反応しすぎて向きがころころ変わります。遅れとダマシは片方を減らすともう片方が増える関係で、逃げる設定はありません。
ちなみに、ランダムウォーク(でたらめな値動き)に20本移動平均を当ててみたところ、向きが同じ方向に続いた本数は平均9.9本、最長で172本でした。移動平均が上を向き続けていること自体は、トレンドの証拠になりません。
4.トレンドが確認されているのは、1か月から12か月の話です
では、トレンドは存在しないのでしょうか。そんなことはありません。
シカゴ大学の研究者モスコウィッツ氏らの研究チームは、株価指数、通貨、商品、債券の先物あわせて58銘柄を、1965年から2009年まで調べています。直近12か月の値動きの向きが、その後の向きを予測できる。58銘柄すべてでプラスでした。
ただし続きがあります。この効果は1年ほどで消え、その先の4年ほどで一部が逆に振れます。
アメリカの経済学者エンゲル氏とハミルトン氏も、ドルの値動きを「上げ続ける局面と下げ続ける局面を行き来する」形で表すほうがうまく説明できることを示しました。ここで言う局面の単位も四半期から年です。
つまり、学術的に確認されているトレンドは月から年の話であって、15分足5本の話ではありません。
時間の話をもう一つ。日本の外国為替市場の1営業日あたりの取引額は、2025年4月の調査で4,402億ドルでした。同じ調査の世界全体は1営業日9兆6,000億ドルです。
4,402 ÷ 96,000 = 4.6%
東京時間に見えた方向は、残り95%の側でいくらでも上書きされます。
5.人はランダムと本物を見分けられます。ただし方向は当てていません
昔から「人はランダムなチャートと本物を区別できない」と言われてきました。ところが、マサチューセッツ工科大学の研究者ロー氏とハサンホジッチ氏らのチームが2010年に行った実験では、結果が逆になっています。
78人の参加者に、本物のチャートと、同じ値動きを並べ替えて作った偽のチャートを見せる。8,015回の回答を集めた結果、8つのデータすべてで、当てずっぽうでは説明できない正答率が出ました。
では、参加者は何を見ていたのか。 証言によると、本物のほうが「なめらか」または「とがっている」という質感の違いでした。方向を当てていたのではなく、値動きの荒さを見ていたわけです。
そして、認知心理学の研究者バーヒレル氏とワゲナー氏によると、人が「ランダムらしい」と感じる並びは、次の1本が前と違う向きになる割合がおよそ60%です。本当のランダムは50%になります。
野球で例えるなら、同じ球が3球続いたときに「そろそろ変えてくるはず」と感じるのに近い。
つまり人は、質感では見分けられるのに、続くか続かないかは実際より短く切ってしまう。ここが噛み合っていません。
6.私の負けパターン
ここでは、私がやってしまった負けパターンをお伝えします。
- 3本目で乗る 同じ向きが2本続いたのを見て3本目に飛び乗る。9時台の記録では、そこから4本目まで続いた日は16日中2日しかありませんでした。
- 判定の足を後から変える 5分足で「レンジだ」と思ったのに、15分足に切り替えて言い直す。答えが出るまで足を変えていました。
- 移動平均の本数をその場で変える 20本で向きが出ないので10本にする。これは判定ではなく、欲しい答えを探す作業です。
- 判定した結果を注文の形にしない レンジと判定したのに、いつもどおり順張りで入る。判定と行動がつながっていなければ、見分けても意味がありません。
見分ける精度を上げるより、見る足と本数を固定するほうが先でした。
7.まとめ
覚えて帰っていただきたいのは、この3行です。
- トレンドかレンジかは、見る足と続いた本数を決めないと答えが出ない
- 同じ向きが3本続くのは、ランダムでも50%の確率で起きる
- 学術的に確認されているトレンドは、月から年の単位であって、15分足の話ではない
そして、今日やることは一つだけです。
次にチャートを開いたとき、判定に使う足と本数を1行だけ紙に書いてください。「15分足で、同じ向きが3本続いたらトレンドと呼ぶ」でOKです。本数はいくつでも構いません。大事なのは、その日のうちに変えないことです。
以上が、トレンドとレンジの見分け方になります。ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました。
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ここに書いたことは、すべて無料で学べる範囲の内容です。研究の話も、移動平均の遅れの計算も、調べれば誰でも同じ結論にたどり着けます。
ただ、実際にやると次の壁が出てきます。
- 見る足を決めても、迷った日だけ別の足を開いてしまう
- 判定に使う本数を、その日の値動きに合わせて後から変えてしまう
- 判定した結果を毎日同じ形で残せず、あとで比べられない
これも意志の問題ではありません。毎回同じ足を、同じ順番で、同じ基準で見続けること自体が重い作業だからです。
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矢印は、条件が揃ったという事実の表示です。勝ちの合図ではありません。損切りとロットは、必ずご自身のルールで決めてください。
まずは今日の記録から始めてください。受け取るのは、そのあとで大丈夫です。
