陽線なのに次の足で下げる。FXのローソク足は「値幅」から読む
仲値トレーダー
チャートを開きます。大きな陽線が出ています。
買いが強い、と本には書いてありました。そのとおりに入ります。次の足で、すっと戻されます。
パターンを20個くらい覚えて、それでも同じことが起きる。私も長いことこれをやっていました。覚え方が足りないのだと思っていましたが、原因はそこではありませんでした。
1.ローソク足が伝えているのは4つの数字だけです
まず前提をそろえます。
ローソク足というのは、決められた時間の中の始値、高値、安値、終値を1本にまとめた図形です。実体(四角い部分)は始値と終値の差、ヒゲ(上下の線)は高値と安値までの距離になります。
つまり、1本が持っている情報はこの4つだけです。
「買いが強い」「売りに押された」は、その4つに人間があとから付けた説明であって、数字そのものではありません。ここを分けておかないと、この先の話がぼやけます。
2.私の9時台の記録では、陽線がちょうど半分でした
では、実際の数字で説明していきます。
私はドル円の朝9時台だけを記録しています。その中に15分足の方向を書き残した日が20営業日ぶん、1日5本なので合計100本あります。
内訳は、陽線50本、陰線47本、同値(始値と終値が同じ足)3本。陽線がちょうど50.0%でした。
つまり、1本の色を見て方向を語るのは、コインの裏表を見て語るのとほとんど変わらないということです。
もう一つ。5本すべてが同じ向きに並んだ日は0日、同じ向きが3本以上続いた日は7日(35.0%)でした。
私1人の記録なので母数は小さいです。それでも、自分で数えた100本が半々だった事実は、私にはかなり効きました。
3.28個のパターンをまとめて検証した研究があります
海外の研究でも、同じ方向の結果が出ています。
ニュージーランドの大学の研究チーム、マーシャル氏らは、アメリカの代表的な株価指数の構成銘柄35社について、1992年から2002年までの11年ぶんを調べました。対象は28種類です。
結果を3つ挙げます。
- 強気とされる1本の形が出たあと、リターンがプラスだったのはいずれも50%未満。いちばん多く出た「長い陽線」で47.54%でした
- 反転を示すとされる形は、そもそもほとんど出ません。ハンマー(下ヒゲの長い形)は11年で57回だけ。35銘柄で割ると1銘柄あたり約6.8年に1回です
- 弱気とされる長い陰線のあとのリターンは、平均より高いほうへ有意にずれていました。理論と逆向きです
乱数で作った偽のチャートと比べるやり方(ブートストラップ)で検証し直すと、28種類のどれにも優位は残りませんでした。
同じチームは日本の株でも、1975年から2004年の30年ぶんで同じ結論です。ドイツの研究チーム、フォック氏らも、日中の先物データで19種類を試して否定的でした。
発祥地でも、株でも先物でも、日足でも日中足でも同じでした。
4.それでも「ヒゲ」には情報があります
ローソク足は無意味だ、という話ではありません。
形には情報が乏しい。でも、幅には情報があります。
1980年に、パーキンソン氏という研究者が面白いことを示しました。値動きの大きさを見積もるとき、終値どうしの差より、その時間の高値と安値の幅を使うほうが、およそ5倍効率が良いというものです。
終値だけで100本ぶん眺めて分かることが、高値と安値を使えば20本で分かるという意味になります。
100 ÷ 5 = 20
同じ年に、ガーマン氏とクラス氏が始値と終値も加えた式を出し、さらに効率が上がると報告しています。
大事なのは、どちらも「ヒゲが長いから反転する」とは一言も言っていないことです。
ヒゲが示しているのは方向ではありません。その時間にどれだけ動いたかです。
だから私は、ヒゲを見たときに「反転だ」ではなく「今日は動く相場だ」と読むようにしています。
5.日本の制度が測っているのも値幅です
ちなみに、幅を測っているのは研究者だけではありません。
日本には、法人がFXをするときの証拠金を決める「為替リスク想定比率」という数字があります。金融先物取引業協会が毎週金曜に計算して公表しているもので、方法も公開されています。過去26週と過去130週について、1日1本の価格の変化率の標準偏差を出し、片側99%をカバーする係数2.33を掛ける、というものです。
2026年8月21日を基準日とした回では、ドル円が1.48%。レバレッジになおすと67.56倍でした。
100 ÷ 1.48 = 67.56
逆算すると1日ぶんの標準偏差は 1.48 ÷ 2.33 = 0.6352%。ドル円が150円なら0.9528円、約95pipsになります。
面白いのはここからです。この公的な計算は、1日1本の価格しか使っていません。高値も安値も入っていません。
制度は終値だけで動き、研究は高値と安値のほうが5倍効率が良いと言う。ヒゲは制度の側ではむしろ捨てられているわけです。
6.そもそも足の形は「時計」が決めています
もう一つ、覚えておくと効く話があります。
15分足の「15分」は、相場が決めた区切りではありません。人間が決めた区切りです。同じ値動きでも、3分ずらせば実体もヒゲも別の形になります。
これは理屈だけの話ではありません。金融工学の研究者、アネ氏とジェマン氏は、時間を「何分たったか」ではなく「何回取引が成立したか」で測り直しました。すると、それまで裾の厚かったリターンの分布が、ほぼ正規分布に近づいたそうです。
野球で例えるなら、イニングで区切るか投球数で区切るかの違いです。同じ試合でも別の統計が出てきます。
つまり形の暗記とは、人間が決めた区切りに依存した図形の暗記だということになります。
7.私がローソク足でやらかしていた型
偉そうに書いていますが、私は上の全部を一通りやりました。
- ヒゲの長さで反転を判断する 下ヒゲが長いから底だ、と入る。当たる日はあるので、余計にやめられませんでした。
- 足が閉じる前に形を決めつける 閉じるまで形は確定しないのに、途中で「これはハンマーになる」と決めていました。
- 時間足を変えて、都合の良い形を探す 15分で駄目なら5分、次は1分。探せば必ず欲しい形があります。読んでいるのではなく、選んでいるだけでした。
3番がいちばん質が悪かったです。負けても反省する材料が残りませんから。
8.まとめ
今日お伝えしたかったのは、この3点になります。
- ローソク足1本が持つ情報は、始値、高値、安値、終値の4つだけ。私の100本では陽線がちょうど50.0%で、色からは方向が出ませんでした
- 形の予測力は、28種類まとめて検証しても残りませんでした。日本の株でも、日中の先物でも同じです
- 情報があるのは形ではなく幅のほうです。高値と安値の幅を使うと、値動きの大きさは終値だけの約5倍の効率で見積もれます
なお、これは「ローソク足を消してしまえ」という話ではありません。値幅を見る道具として、これ以上に手軽なものがないです。捨てるのは形の暗記だけでOKです。
そのうえで、今日は一つだけ。
次にチャートを開いたら、直近5本の高値と安値の差をpipsで書き出してみてください。 1分もかかりません。
その数字が普段より大きい日は、いつもと同じロットで入る理由がありません。形より先に、そこが決まります。
ローソク足の読み方については、こんなところです。今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。
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ここに書いた内容は、無料で手に入る資料だけで組み立てています。
ただ、この「幅を先に見る」を毎朝やろうとすると、別のところで詰まります。
- 直前の値幅を測れても、それを見送りの判断につなげられない
- 静かな日と荒い日の線引きが、その日の気分で動く
- 足が閉じる前に形を決めてしまい、あとから見直すと基準が残っていない
意志の弱さではないと思っています。同じ手順を毎朝、同じ順番で回し続けること自体に負荷がかかります。
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矢印は、条件が揃ったという事実の表示です。勝ちの合図ではありません。損切りとロットは、必ずご自身のルールで決めてください。
まずは今日の5本を測るところからで大丈夫です。受け取るのは、そのあとで構いません。
