レバレッジを下げても、勝率は変わりませんでした。レバレッジが決めているのは「耐えられる距離」です
仲値トレーダー
口座が減ってきたので、ロットを半分に落とした。
そこまでは、たぶん正しい判断です。
ところが1か月たっても、勝ち負けの割合は前と同じ。減り方がゆっくりになっただけ。
私も同じことをやりました。そして「下げても意味がないのでは」と思いました。
その体感は正しいです。レバレッジは勝率を動かしません。ただ、動かしているものが別にあります。
では、順番に解説していきます。
1.レバレッジは、勝ちやすさを動かしません
レバレッジは、自分のお金の何倍を動かしているかという比率です。口座30万円でドル円を1万通貨、約145万円ぶん持てば、実効レバレッジは約4.83倍になります。
大事なのは、これが掛け算の定数でしかない点です。
同じところで入って、同じところで切る。数量だけ2倍にする。勝った回の利益は2倍、負けた回の損失も2倍。勝ち負けの本数は1本も変わりません。
つまり、上げ下げしても勝率は定義上まったく動かないということです。
野球で例えるなら、打率とバットの重さの関係です。重いバットに替えれば飛距離は変わりますが、当たる確率は別の話。飛んだから当たるようになった? ならないですよね。
2.朝9時台の32営業日を、レバレッジ別に翻訳します
私はドル円の朝9時台だけを記録しています。7月20日から9月3日までの32営業日で成立55回、合計733.1pipsでした。1人の記録なので、母数としては小さいです。
この55回を、口座30万円の前提で変動率へ翻訳します。ドル円は145円で計算しました。
- 1万通貨、実効4.83倍のとき 1回の変動は0.027%から3.258%、中央値0.333%
- 上限いっぱいの25倍、およそ5.17万通貨のとき 0.138%から16.862%、中央値1.724%
振れ幅は5.17倍です。ところが、ばらつきの度合いを表す変動係数はどちらも1.0999でした。小数第4位まで一致します。
つまり、レバレッジを変えても分布の形は変わらないということです。動くのは目盛りだけになります。
3.変わるのは、ロスカットまでの距離です
では、レバレッジは何を動かしているのか。
日本の個人向けは必要証拠金率4%、つまり25倍が上限です。証拠金維持率が100%を割ったら強制決済されるとして、口座30万円で逆行に何pips耐えられるかを計算しました。
- 5倍 2,320pips
- 10倍 870pips
- 20倍 145pips
- 25倍 0pips
5倍から10倍へ、倍率は2倍です。ところが距離は2.67倍縮みます。10倍から20倍でも倍率は2倍ですが、距離は6.0倍縮む。25倍ではゼロになります。
つまり、上げるほど加速度的に距離が消えていく、ということです。
損切りを置いていれば話は別です。20pipsで切るなら1回の損失は5倍で口座の0.69%、25倍で3.45%。ここは素直に比例します。
4.高いレバレッジの人が負けていた理由は、判断ではありませんでした
アメリカの研究者ヘイマー氏とシムシェク氏は、2010年にアメリカで入った上限規制を、規制のかからなかった欧州のトレーダーと比べる形で検証しました。
規制前、レバレッジ使用量が上位の口座は月あたりマイナス44%。下位はマイナス3%で、差は41ポイントです。規制後、この差は18ポイントまで縮みました。
ここからが通説と違います。同じ研究が手数料を引く前の成績で計算し直すと、高レバレッジ組はマイナス44%ではなくマイナス17%でした。損失の約6割がコストで説明できます。
コストを1回3pipsから4pipsと想定すると、両者の差は統計的にゼロ。5pipsなら高レバレッジ組のほうが良いという結果まで出ています。
つまり負けていたのは、読みが下手だったからではなく、たくさん回してコストを払っていたからということです。
5.倍率を下げると、人は別の場所でリスクを取り戻します
ドイツの研究者ペルスター氏は、2018年に欧州で入った上限規制のあとを追いました。
使用量は、たしかに減りました。ところが同じ人たちが値動きの大きい銘柄へ移っています。取引する株の変動の大きさが、平均の約7%ぶん上がりました。
全体のリスクは下がったのに、別の方法で取り戻していたということです。
日本の話もします。金融庁の有識者検討会の報告書に、1985年以降の最大の相場変動率を前提に損失を証拠金だけでカバーするなら、大半の通貨ペアで倍率は25倍を下回る、と書かれています。つまり25倍は「安全な線」ではなく、引いた線だということです。
あと、同じ業界団体が法人向けには通貨ペアごとに変動する数字を出しています。8月28日を基準日とする週で、ドル円が67.56倍、ユーロドルが102.04倍、ランド円が43.47倍。高いほうと低いほうで2.35倍の開きです。
リスクで決めるなら倍率は通貨ごとに違うはずです。ところが個人向けは全通貨で一律25倍になっています。
6.私の負けパターン
私がレバレッジを上げたときの言い訳を、そのまま書き出してみます。
- 負けを取り返そうとして上げた 戻る前に、耐えられる距離のほうが先になくなりました。
- 「今日は形がいい」と思って上げた 自信の強さと値動きの大きさは無関係です。強く思った日ほど大きく建てていたので、負けた日の金額だけが伸びます
- 損切りを狭くして、そのぶん数量を増やした 許容する損失額は同じという理屈でした。ただ、狭くすれば刺さる回数が増える。回数が増えればコストも増えます。
3つとも、判断ではなく数量をいじって解決しようとしていました。
7.まとめ
今日の話は、3行に畳めます。
- レバレッジは勝率を動かしません。私の55回でも、変動係数は1.0999で一致しました
- 動くのはロスカットまでの距離。5倍で2,320pips、20倍で145pips、25倍でゼロです
- 高レバレッジの負けは判断ではなくコストでした。手数料前では差が消えます
例外を1つ。損切りを毎回置いている方に、第3節の距離の話は当てはまりません。効くのは、その損失額が口座の何%かのほうです。
今日やることを1つに絞ります。
いまの口座残高と、直近1回で建てた数量をメモして、割り算してください。実効レバレッジが何倍だったかを出すところまでで終わりです。
何倍で戦っていたかを知らないまま、倍率の話はできません。
今日はこれで終わりにします。時間を使ってくださって、ありがとうございます。
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ここまでの内容は、公開資料と私の記録だけで組み立てています。お金を払う必要はありません。
ただ、実効レバレッジを毎回そろえようとすると、別のところで詰まります。
- 数量を決める前に、その日の値動きの大きさを見ていない
- 「入るかどうか」と「いくら建てるか」の判断が、同じ場所で混ざる
- 見送った日の記録が残らず、そろえられていたかを後から数えられない
これも性格の問題ではありません。毎朝同じ順番で確認して、そのうえで手を出さない。この繰り返しに負荷がかかります。
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