値動きが大きそうな通貨ペアを、その日ごとに選んでいる。FXの通貨ペアは「重なり」から絞る
仲値トレーダー
ある朝、口座を開いたら3つとも赤でした。
ユーロドルの買い。
ポンドドルの買い。
豪ドルドルの買い。
3つに分けて持っていたはずなのに、同じ顔で並んで沈んでいました。
そのときの私は、まだ理由が分かっていませんでした。
3つに分けたのに、いっぺんに赤くなった朝
前の晩、私は「1つの通貨ペアに全部乗せるのは危ない」と思っていました。
だから3つに分けました。
ヨーロッパ、イギリス、オーストラリア。
場所もばらばらです。
これで片方が駄目でも、もう片方が助けてくれる。
そう思っていました。
朝、3つとも同じような幅でマイナスになっていました。
理由はあとから分かります。
私は3つとも、ドルが下がるほうに賭けていました。
ユーロドルの買いは、ユーロを買ってドルを売ることです。
ポンドドルの買いも、豪ドルドルの買いも同じでした。
売っているのは、全部ドルです。
分けたつもりで、同じ賭けを3回していただけでした。
私はセンスのある人間ではありません
先に書いておきます。
私は投資の専門家ではありません。
金融の仕事をしていたこともないです。
数字が得意なわけでもありません。
チャートを見て、いい形だと思って入って、すぐ戻される。
そういうことを何年も繰り返してきました。
なので、この記事は分散のやり方をお教えする話ではないです。
分けたつもりだったのに、分かれていなかった。
その勘違いに気付くまでの話になります。
通貨ペアを増やすたびに、やることだけが増えていった
負けが続くと、私は決まって見る場所を増やしました。
最初はドル円だけでした。
そこにユーロドルを足しました。
ポンド円、豪ドル円、ユーロ円と増えて、最後は8つ見ていた時期があります。
やったこと、結果、やめた理由の順に並べます。
- 通貨ペアを8つに増やした 結果は、どれも中途半端になりました。1つあたりに使える時間が8分の1になるので、当たり前といえば当たり前です。回らなくなったので、やめました。
- その日いちばん動いている通貨ペアに乗り換えた 結果は、いつも動いたあとに入る形になりました。「今日はポンドが動いている」と気付いた時点で、もう動き終わっています。乗り換えた先で毎回同じ負け方をしたので、やめました。
- クロス円を足した ドル絡みばかりだったので、円絡みも入れれば分かれると思ったからです。これがいちばん筋が悪かったので、次の節で書きます。
画面を3つ並べて、自分は上級者になったつもりでいました。
実際に増えていたのは、確認する手間だけだったという感じです。
掛け算になっていることに、あとから気付きました
きっかけは、ユーロ円って結局なんですか、と聞かれたことでした。
答えられませんでした。
調べてみると、ユーロ円の値段は、ユーロドルとドル円の掛け算でできています。
ドル円が150円、ユーロドルが1.1000のとき。
150 × 1.1000 = 165.00
これがユーロ円の値段になります。
つまりユーロ円を買うというのは、ユーロドルを買って、同時にドル円を買うのと同じ中身になります。
ここで手が止まりました。
私は、ドル円の買いとユーロ円の買いを両方持っていた時期があります。
分けたつもりでした。
中身を分解すると、こうなります。
ドル円の買いが1万ドル。
ユーロ円の買い1万ユーロは、ユーロドルの買い1万ユーロと、ドル円の買い1万1,000ドルに分かれます。
ドル円に賭けていた量は、1万 + 1万1,000 = 2万1,000ドル。
分散したつもりで、ドル円を2.1倍にしていました。
では、実際の数字で確かめていきます。
ドル円が1円上がって、ユーロドルが動かなかった日を考えます。
ドル円の買いは、1円 × 1万ドルで1万円のプラス。
ユーロ円は165.00から166.10へ上がるので、1.10円 × 1万ユーロで1万1,000円のプラス。
合わせて2万1,000円です。
ドル円を2万1,000ドル持っていた場合と、ぴったり同じになりました。
つまり、増やしたのは本数だけで、賭けの中身は倍にしていたということです。
これは正直こたえました。
逆に、打ち消し合って何も残らないこともあります
もう1つ、面白い形があります。
ドル円の買いと、ユーロドルの買いを同時に持った場合です。
ドル円の買いは、ドルを買って円を売る。
ユーロドルの買いは、ユーロを買ってドルを売る。
ドルの部分が、買いと売りで打ち消し合います。
量を揃えて計算します。
ドル円を1万1,000ドル買い、ユーロドルを1万ユーロ買う。
残るのは、ユーロを1万買って円を165万売った形だけです。
中身はユーロ円の買い1本で、ドルへの賭けは消えています。
ドルが全体に3%上がった日で確かめます。
ドル円は150円から154円50銭へ。
ユーロドルは1.1000から1.0670へ。
ドル円のほうは、4円50銭 × 1万1,000ドルで4万9,500円のプラス。
ユーロドルのほうは0.0330ドル下がるので、1万ユーロぶんで330ドルのマイナス。円に直すと5万985円のマイナスです。
合わせると、1,485円のマイナスでした。
ドル円だけを持っていれば4万9,500円動いていた日に、2つ持つと1,485円しか動かない。
33.3分の1です。
これが悪いという話ではありません。
2つ持っているのに、賭けているレースは1つだった、ということです。
調べてみたら、私だけの勘違いではありませんでした
あとで調べて分かったのですが、これは個人の口座だけの話ではないです。
世界の外国為替の取引を数えると、ドルは全体の89%の取引の、どちらか片方に入っています。
ここで一度立ち止まってください。
通貨のシェアを全部足すと、100%ではなく200%になります。
1回の取引には、必ず2つの通貨が関わるからです。
200%のうち、89%がドル。
つまり、市場のほぼ半分がドルということになります。
どの通貨ペアを選んでも、半分はドルへの賭けになりやすい。
数字にすると、そういう市場でした。
研究のほうでも似た話がありました。
先進国13か国の通貨を長期間で調べたところ、1か月の値動きのうち「その国だけの事情ではない、みんなに共通する動き」で説明できる部分が、平均で6割ありました。
国によって幅が大きく、19%から91%まで散らばっています。
つまり、通貨ペアを変えても、動きの大部分は同じところから来ている日がある、ということです。
何本持っても、実質1本ちょっとにしかなりません
ここを数字にしてみます。
値動きの重なりが強いほど、本数を増やしても中身は増えません。
重なり具合を、さきほどの6割から出して計算しました。
- 3本に分けても、実質は1.17本
- 5本に増やしても、実質は1.21本
3本から5本へ増やして、増えたのは0.04本ぶんでした。
振れ幅の減り方でも見ておきます。
まったくバラバラに動く3本なら、1日ごとの振れ幅は42.3%小さくなるはずです。
重なりを入れて計算し直すと、実際に小さくなるのは7.6%でした。
5.57倍の差があります。
野菜を3種類買ったつもりが、全部同じ畑のものだった。
台風が来たら、3つとも同時に駄目になります。
私がやっていたのは、それに近いことでした。
ここまでで押さえておきたいこと
本数を増やすことと、分けることは、別のことです。
日本のFXは、世界から見るとかなり偏った市場です
日本の数字も見ておきます。
日本の外国為替市場を通貨ペア別に分けると、ドル円が61.3%でした。
世界全体で見ると、ドル円は14.4%です。
4.26倍の偏りがあります。
世界でいちばん多いのはユーロドルで、20.7%でした。
ドル円ではありません。
ユーロ円はもっと極端です。
日本では6.5%あるのに、世界では1.0%しかありません。
6.5倍の差です。
クロス円は、世界ではほとんど直接取引されていません。
さきほど書いたとおり、掛け算で作られているものだからです。
日本の店頭FXの規模も出しておきます。
直近の月次の統計で、1か月の出来高は882兆768億円。
月末に残っていた建玉は、買いが8兆451億円で売りが3兆9,191億円でした。
買いが2.05倍です。
つまり日本の個人は、ドル円に寄っていて、しかも買いに寄っている。
ここが出発点になります。
いま私が見ているのは、ドル円の朝9時台だけです
いまは1つに絞っています。
ドル円の、朝9時台。
それだけです。
7月20日から9月10日までの37営業日を数えました。
成立は63回、合計983.6pipsです。
pipsというのは値動きの幅の単位で、ドル円なら1pipsが1銭になります。
1日の合計を並べると、平均は26.58pips。
ちょうど真ん中の日は19.2pipsでした。
平均を下回った日は、37日のうち27日。
73.0%です。
つまり平均というのは、滅多に来ない日の数字です。
ふだんの実感に近いのは、真ん中の19.2pipsのほうになります。
1回ずつで見ると、いちばん小さい回が0.8pipsで、いちばん大きい回が97.8pips。
122.25倍の開きがあります。
ちょうど真ん中の回は10.6pipsでした。
きれいな数字ではありません。
ただ、絞ったことで初めてこの数字が出せるようになりました。
8つ見ていた頃は、そもそも数えられていませんでした。
通貨ペアの選び方で、私がやらかしたこと
同じ間違いを何度もやっているので、正直に書いておきます。
- ドル売りの通貨ペアを3つ並べて、分散したつもりになる 中身は同じ賭けの3倍でした。動いた日の損益も3倍になります。
- クロス円を足して、円絡みだから分かれると思い込む 掛け算で作られているので、分かれていませんでした。
- その日いちばん動いている通貨ペアへ乗り換える 気付いた時点で、動きは終わっています。
- 増やした通貨ペアぶんの記録は付けない 増やすときだけ熱心で、数えるところまでやっていませんでした。
分けたつもりで倍にしていた。
ここが自分でいちばん怖いところだと思っています。
今日の3点と、最初の一手
持ち帰っていただきたい内容を3つにまとめます。
- 通貨ペアの本数と、賭けの本数は別ものです
- クロス円は掛け算なので、足しても分かれません
- 市場の半分近くがドルなので、どれを選んでも半分はドルへの賭けです
こういう場合は、この記事の考え方を当てはめないほうがいいです。
- 為替の値動きとは関係のない目的で通貨を持っている場合
- 保有する期間が数か月以上で、日々の振れ幅を見ていない場合
そのうえで、最初にやることを1つだけ挙げます。
いま持っているポジションを紙に書き出して、それぞれ「何を買って、何を売っているか」を通貨の名前で書き直してみてください。
ユーロドルの買いなら、ユーロを買ってドルを売る。
ユーロ円の買いなら、ユーロを買って円を売る。
同じ通貨が2回以上出てきたら、そこが重なっている場所になります。
3分あればできます。
その3分で、私は8つの画面を1つに減らすことになりました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
明日の朝、ポジションを開く前に一度だけ試してみていただけたらうれしいです。
仲値トレードナビのご案内
ここまで書いた内容は、無料で調べられる範囲のものばかりです。
特別な情報は1つも使っていません。
ただ、実際に1つに絞ろうとすると、別の壁が出てきます。
- 絞った通貨ペアの、どの場面を見るのかが毎日ぶれる
- 見送る日の基準がないので、結局ほかの通貨ペアを開いてしまう
- 記録する項目が日によって変わり、あとから比べられない
これも気持ちの問題ではありません。
毎回同じ場所を、同じ基準で見続けること自体が、そこそこ重い作業だからです。
ドル円の朝9時台だけに絞ったMT4とMT5用のインジケーターを配布しています。
確定した足だけで判定するので、出た矢印が後から消えたり動いたりしません。
自動売買はしないので、発注も決済もご自身の判断になります。
仲値トレードナビ:朝9時台の仲値トレードナビ
矢印は、条件が揃ったという事実の表示です。
勝ちの合図ではありません。
損切りとロットは、必ずご自身のルールで決めてください。
まずは紙に書き出すところからで大丈夫です。
受け取るのは、そのあとで構いません。
