スワップが毎日つくから、含み損のまま持ち続けている。仲値トレードのスワップは「一日で動く幅」と並べて見る
仲値トレーダー
朝、口座を開きます。
含み損は赤いまま。でも、その下のスワップの欄だけは、小さくプラスが増えています。
「これが毎日つくなら、待っていればいずれ追いつく」
そう思って、決済のボタンを押さずに画面を閉じる。私も、まったく同じ計算をしていた時期がありました。
今日は、その計算のどこがずれているのかを数字で並べます。金利差を否定する話ではありません。金利差と値動きが同じ単位で比べられていない、という話になります。
1.スワップポイントは「金利」ではなく「金利差の調整額」です
金融先物取引業協会は、法人向けの証拠金規制の解説で、スワップポイントを「通貨間の金利差調整額」と書いています。
そして、証拠金が足りているかを見るときの残高には、そのスワップのプラスもマイナスも入れると定めています。
つまりスワップは、利息のように別枠で貯まりません。含み益や含み損と、同じ箱に入る数字です。
ここが最初のずれです。多くの方は別の財布で数えていますが、制度は一つの財布として扱っています。
だから「スワップで待てる」という発想は、制度の側から見ると成立しません。
2.朝9時台の35営業日を、スワップ何日分かに数え直します
私はドル円の朝9時台だけを記録しています。2026年7月20日から9月8日までの35営業日で、成立は60回。私1人の記録なので、母数としては小さいです。
日本銀行は2026年6月の会合で、無担保コールレートの誘導目標を1.0%程度としました。アメリカの政策金利は2026年7月の会合で3.50%から3.75%の据え置きです。中央を取ると3.625%なので、金利差は2.625%になります。
財務大臣が公示する換算レートは1ドル163円。1万通貨なら、取引の金額は163万円です。
163万円 × 2.625% ÷ 365 = 117.23円
これが1日ぶんの理論値になります。年に直すと42,787円という感じです。
では、私の記録を同じ単位に置き換えます。1万通貨で1pips=100円、pipsはドル円なら0.01円ぶんの値幅のことです。
- 1日の合計の平均 25.6457pips = 2,564円。スワップ21.88日分
- 1回あたりの真ん中の回 10.25pips = 1,025円。8.74日分
- いちばん大きかった1回 97.8pips = 9,780円。83.43日分
- 35営業日の合計 897.6pips = 89,760円。765.7日分、およそ2.1年分
つまり、朝の1時間で普通に出る値幅が、スワップの3週間ぶんに相当しているということです。
3.金利差を受け取ると、その分だけ先の価格が不利になる建て付けです
ここから海外の一次情報で裏を取ります。
国際決済銀行という、各国の中央銀行が集まる組織があります。そこが「国際金融でいちばん法則に近い」と呼ぶ関係があります。中身は単純です。
二国間の金利差は、先の日付で受け渡す値段と、今の値段の差にちょうど一致するはずだ。
つまり金利差を受け取る側は、その分だけ先の値段を不利にされている。もらった額と同じだけ先で払う。差し引きゼロが出発点です。
ここが2つ目のずれです。
ただ、話には続きがあります。同じ国際決済銀行が、この関係が2007年以降ずっと破れたままだと書いています。しかも、銀行が財務を立て直した2014年以降でさえ破れている点を、とくに不可解だとしています。
差し引きゼロという出発点そのものが、実際には成り立っていません。
4.金利差はいずれ為替で相殺される、は半分しか合っていません
よく聞くもう一つの言い方も見ておきます。
「金利の高い通貨は、その分だけ下がるから結局は同じ」
アメリカの研究者ブルナーマイヤー氏らの研究チームが、1986年から2006年の四半期データでこれを分解しました。
円を借りてドルを持つ形では、四半期あたりの金利差は0.7%。そして、円がドルに対して動いたぶんで0.3%を失っています。
0.3 ÷ 0.7 = 42.9%
つまり、受け取った金利差の42.9%は為替の側で戻されていたということです。全部は消えませんが、半分近くは消えている。
本題はここからです。同じ研究は、この損益がどういう形をしているかも測っています。
出てきたのは、小さなプラスが長く続いたあとに、大きなマイナスが一度に来る形でした。
数字にすると、円を借りる形でマイナス0.318。金利の高い通貨を買って低い通貨を売る組み合わせでは、マイナス0.977まで大きくなります。
マイナスが大きいほど、その形が強いという意味です。
しかも、通貨の数を増やしてもこの形は薄まらない、と同じ研究は書いています。
野球で例えるなら、毎打席セーフティバントで確実に出塁しているのに、走塁のときだけ一度に3アウトを取られる。そういう形になります。
5.一日の振れは、金利差のおよそ88日分です
金融先物取引業協会は、法人向けの証拠金を決める数字を週に1回出しています。
直近26週か130週の値動きから「1日でこれくらい動く」という幅を出し、2.33倍したものです。
2026年8月28日を基準日とするドル円は1.4802%。2.33で割り戻すと、1日の動き幅は0.6353%になります。
163万円に当てると10,355円。pipsに直すと103.5pipsです。
10,355 ÷ 117.23 = 88.33
つまり、ドル円がふつうに1日で動く幅は、金利差のおよそ88日分です。3か月ぶんの金利差が、1日の値動きで消えたり増えたりする。それくらい桁が違います。
その値動きの側に、人は偏って乗っています。2026年7月末の店頭FXの建玉は、買いが80,451億円、売りが39,191億円。2.053倍です。
ドル円を買うというのは、金利の低いほうを売って高いほうを持つことです。スワップを受け取る側に、人が2倍偏っているということです。
6.私の負けパターン
自分がスワップで判断を歪めた型を、3つ白状します。
- 含み損の言い訳にスワップを使った「1日100円ちょっとでも、100日で1万円」と数えていました。その100日で値動きがどこまで動くかは、数えていません。
- 受け取る側だから安全だと思った払う側より有利な気がしていました。実際には、受け取る側のほうが急落を引き受けています。
- スワップの累計を成績表に混ぜた値動きで負けた月でも、足すとプラスに見える月がありました。材料を1つ増やしたのではなく、基準を1つ壊しただけでした。
数え方を変えただけで、結果が違って見える。ここがいちばん怖いところだと思っています。
7.まとめ
持ち帰っていただきたい内容は、3点だけです。
- スワップは利息ではなく、値動きと同じ箱に入る数字になります
- 受け取れる金利差は、先の値段で戻される設計が出発点になっています
- 一日の振れ幅は金利差の88日分。桁が違うので、同じ土俵に並べないと判断を誤ります
もちろん、いつでもこの通りではありません。
- 数か月以上そのままにする運用では、金利差の比重は上がります
- ここでの金利差は政策金利からの試算で、実際に付く数字は業者ごとに違います
- 私の記録は1人ぶん35営業日です。母数としては小さいです
本日の行動は、これだけで足ります。
口座のスワップ欄を開いて、累計の金額を1つメモしてください。そのあとに、直近1か月でその通貨ペアが動いた値幅を1つ書き足す。
並べるところまでで終わりでOKです。判断は、そのあとで間に合います。
長い計算にお付き合いいただき、ありがとうございました。
仲値トレードナビのご案内
ここまでの内容は、公開されている統計と論文だけで確かめられる範囲です。
ただ、実際にご自身の口座でやろうとすると、次の壁が出てきます。
- 通貨ペアが1日どれくらい動くのかを、毎回同じ方法で測るのが重い
- 値動きの損益とスワップを分けて記録し続けるのが、そもそも続かない
- 数字を見る時間帯が日によって変わるので、比べられる形にならない
続かないのは、やる気の問題ではないと思っています。毎回同じ基準で測り直すこと自体が、重い作業だからです。
ドル円の朝9時台だけに絞ったMT4とMT5用のインジケーターを配布しています。確定足だけで判定するので、出た矢印が後から消えません。自動売買はしないので、注文はご自身の判断になります。
仲値トレードナビ:朝9時台の仲値トレードナビ
矢印は、条件が揃ったという事実の表示です。勝ちの合図ではありません。損切りとロットは、必ずご自身のルールで決めてください。
急ぐ必要はありません。まずは手元のスワップ欄と値幅を並べるところから。受け取るのは、そのあとで大丈夫です。
