【19959-2】No,1SP

【19959-2】No,1SP

「ほら、おいで」

声にしなくても声が聞こえるの。本当よ?嘘じゃないの。

あたしがもたもたしてるとちょっと遅く歩いてくれる、その後ろ姿は誰かに教えられなくてもわかった。親に教えられなくても先生に教えられなくても、指示がなくたってあたし自身が嗅ぎ分けることができた。何年経っても、何年間が開いても簡単に見つけられた。

嗅覚が鋭くなったのかな?ううん、ちがったの、見つけた時にすぐに思い出したって感じ。

「あ!!」って。

ずっとずっと探してた。ずっとずっと許されることを待っていた。ずっとずっとまた好きになってくれたらいいなって祈って夢見てた。夢のままで終わっても文句はなかった。出会って存在を知れて、少しだけでも思い出があるからいくらでも生きていける気がした。

ゆさゆさと歩く姿を見分けることは簡単。

約束なんかなくてもいつも迎えに来てくれたし、何も言わなくても待っていてくれる。あたしが探しやすいように上手にあたしの視界に入る天才。

口をへの字に曲げて待ってとも言えずにただ後ろをついていくあたしの歩調にいつも合わせてくれる。

「幸せになりたい、楽しく、俺の日々の全てをめみちゃんにしたい」

互いに照れ屋だから目を見て言えないことをこうやって煌びやかな包装紙に包んで送り合っている。15歳で別れてすでに20年以上。言葉にしたり作品にしたりする作戦はあなたに教えてもらったことだった。

いっぱいいっぱい書いた。あたしは絵を書いたり音楽を作れないからただただ言葉を重ねてきた。

言葉を重ねて重ねて絵に見えるように工夫した。色を重ねることも音を重ねることもあなたに任せればいいってすぐに嗅ぎ分けられた。

いじっぱりに背中を睨みつけながら後をついていく。あたしが転びそうになったり、変な人に絡まれそうになったらすぐに待ってくれるの。嬉しいから恥ずかしくて下を向いちゃうと、それもわかってくれてちょっと振り返ってくれるの。

お互いに目じゃないところでもお互いを見つめられるの。

あたしたちが両思いの証拠ね。

「会いたい!」

でも会えなくていい。お互いにそうやって遠慮して生きてきた、互いのために。

あたしはもうそれで嬉しかったし、あなたはきっとあたしを見守ってくれていた。

わからないことだらけだったのに、あたしたちは互いを愛することを続けていた。

あたしは好きで好きで隠すことが下手だからいつもお目目の中にハートを携えてあなたを見ていた。

知っていると思うけど。

それなのに、あなたはいつも見えない目の中でいつもあたしだけに笑ってくれた。

「おいで、待ってるよ。いつでもいいよ、いつまでも俺は愛してるよ」

ああ、だめだ、嬉しくて幸せで涙で上手な言葉が思いつかない。あなたを目の前にすると言葉がいらなくなる。あったかい気持ちが言葉で満たせるわけない。表現の限界にあたしはあなたが特別だということを感じられた。なんだか不本意、なんだか負けた気分。

あたしの才能を潰せるのは世界であなただけだってなんだか悔しいじゃない。

あなたみたいにあなただけをまっすぐ愛したい。あなたの愛を見つめるとあたしは自分が恥ずかしくなる。

あなたが好きだと、愛してるとうわごとのように毎日言い続けている。すでに33年。病気になったんだきっと。

自己免疫性疾患?あたしは自分の免疫を自分のためにさえ作動させちゃう。

でも、あなたがいるとあたしは自分を攻撃しなくなる。免疫レベルで健康になる。

あたしは病気を抱えて生まれてきた。あなたと出会ったときにあなただってわかるように。私が一緒にいて体調が良くなることが運命の人だよってサインを与えられて。

どんな言葉もつまんない。消し去りたくなる。

ただ伝えたい、

『ありがとう、すぐるさん、愛してる、今も変わらず』


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