全ての人間が平伏し、頭づく。その光景が2000年前のベツレヘムで見られたはずだ。タイムトラベルをして私はその現場に行くことを決意した。
全ての人を従える万軍の主とはいったいどんな顔をしてどんな声をして、どのくらいの背丈であったのか。確かめる必要があった。信仰のために、私の救いのために。秘密を暴いてみたかった。大金がえられるかもしれないから。
タイムトラベルが可能になってから、イエスキリストに会いに行った者はひとりもいない。ある種のタブーとされていた。神は神のままで、後世のわたしたちが踏み込んではいけない、あの2000年前のベツレヘムは地上ではなく天国であるといいはじめた聖職者も出てきた。私は納得がいかなかった。なぜタブーがあるのか、非科学的であると断固として反対した。実際、イエスキリストに会うことは法律で禁止されているわけではない。ならば、罰せられて不自由な暮らしをすることもなかろうと、後始末まで計算してベツレヘムへと旅立った。