Numb

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芍薬椿

芍薬椿

空洞ができてゆく不文律をあたしは不快に感じる。肺胞が正常に機能しない恐怖を連想させるからだ。

線が密接に重なり合って抉り出すグロテスクさには快感を感じた。互いの絆が絡まり合ってこんがらがっていく様を連想するからだ。

空洞の不文律はいつ崩れ落ちてしまうかとヒヤヒヤする。いつ何が入り込むのかとヒヤヒヤする。ヒヤヒヤは不安で、不安と共に快感は得られない。性癖だ。

メンタルは乱高下を繰り返す。

欲求不満に起因する神経症ではないからヒステリーではない。

どちらかといえば外圧への抵抗としての免疫反応だ。

自分の細胞を燃料にすると下がった時に備蓄に窮する。

化石燃料と同じように限りある自分の命を外圧から防衛するために削っている。

不文律の不快感と外圧への免疫反応の中間地点にあたしは幻想という島を見出した。

そこには綺麗な虹がかかっていて、ある夜になると別の島へとあたしを連れて行ってくれる。

渡鳥のように島から島へ。

摩耗していく精神でも妄想を簡単に受け入れられるようになった。

大人になったからだと思う。

懐かしい彼らがあたしを妄想の世界へと引き摺り込んでいく。

だからだろう、本当か嘘か息をするためだけに不文律と外圧に触れるようになった。

今となればあたしにとって不文律も外圧も昔を意味づける重要な役割を果たしている。

幻想と妄想が今、着陸を仕掛けている。

チャンスを狙うその姿はまるで狙撃手のようだ。

線が密接に重なり合う。幾重にも幾重にも幻想を描けば妄想がその上を塗りつぶしたし、現実を見たくて剥げ落とせば不文律と外圧によってメンタルが乱高下した。

書いて剥がして、塗って削いでの繰り返し。

線が密接に重なり合ったそのすべてを剥がして削いで、あたしはあることに気づいた。

重なり合った絵画の部分を書き換えたその時間が折り重なっている。

もはや幻想も妄想も時間によって現実になっている。

ここが幻想でも妄想でも現実として時計の針は刻、一刻と刻まれている。

傷ができるように刻まれていく時計の針の音。

チックタックチックタック、、、

滑稽な不文律にあたしはまた不快感を覚えた。

空洞の不文律にあたしは欲求不満を滲ませているのかもしれない。

精神解析は所詮、気分に過ぎない。

幻想と妄想が着陸をしかけている。

まるであたしの代弁者のように。

あなたが撃ち落とすか、あたしが落下するか。

どちらにしろ麻痺した恋心に他人が入る空洞はない。

あなたが気狂いになるか、あたしが病気になるか。

どちらにしろ麻痺したあたしたちに他人を入れるつもりはない。

執着と独占と嫉妬とプライドと。

恐怖を煽って互いを閉じ込めあっている。

彼も同じようにあたしと同じようにあたしは同じように。


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芍薬椿

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