ネットやテレビのニュースを見ていると、よく「ネカフェ難民」の話題を目にする。
そのときに「普通に考えて、賃貸を借りた方が安上がりだし快適じゃない?」と思う人は多いはずだ。
ネカフェの利用料が1日3,000円だとしても、1ヶ月で9万円。
これだけあれば、都心部でもそこそこ綺麗で広いアパートが十分に借りられてしまう計算になる。
「家賃を払う能力はあるのに、なんでわざわざ狭いネカフェにいるの? 引越し費用がないからじゃない?」
世間はそう思いがちだし、普通の感覚ならその指摘は正しい。
だが、不動産屋や保証会社が牛耳る現代のシステムでは、身分証がない、住所不定、収入証明が出せない人間は最初の窓口で完全に門前払いされる。
まず、普通の賃貸を借りようとすると、審査という高い壁が立ちはだかる。
賃貸の契約審査では、基本的に身分証明書のほかに「収入証明書」が必要になる。大家さんや管理会社、保証会社が「毎月しっかり家賃を払える収入があるか」を確認するためだ。
会社員であれば源泉徴収票や給与明細、フリーランスなら確定申告書の控えなどが求められる。
UR賃貸住宅などの一部の物件で、家賃を1年分まとめて前払いしたり、十分な預貯金残高を証明したりすれば収入証明を免除される特例もある。
だが、無職や日雇い、求職中の人間にはそもそもそんなまとまった大金はない。
家賃5万円の物件だとしても、最初に敷金や礼金、仲介手数料などで20万〜30万円の現金が必要になる。
毎日の宿代と食費を払うので精一杯な状態から、この初期費用を貯めるのは物理的に不可能だ。
それに加えて、身分証と連絡先の壁もある。ネカフェ生活になる過程でスマホを強制解約されたり、住民票が抹消されていて身分証の更新ができなかったりするケースは多い。
家を借りるために身分証がいるのに、身分証を作るために住所がいるという地獄の無限ループが完成してしまう。
知識のある人なら、
ここで「国のセーフティネットを使えばいい」と言うかもしれない。
条件を満たせば自治体が家賃を一部補助してくれる「住居確保給付金」や、住み込みで働ける住宅手当つきの仕事・寮を探すという方法もある。
NPO法人や支援団体に相談すれば、保証人の相談に乗ってくれたり、一緒に役所に行って生活保護や住宅確保の申請を手伝ってくれたりもする。
これらはすべて、ネットで調べれば出てくる綺麗な正論だ。
本当にどん底にいる時は、役所に行く気力すら湧かないし、身分証がなくて門前払いされる恐怖が勝ってしまう。
何より、毎日「今夜どこに泊まるか」「明日のご飯代をどう稼ぐか」という目先の不安に追われていると、脳のエネルギーが100%持っていかれて、長期的な計画を立てる余裕なんて本当になくなってしまう。
と、ここまでが教科書通りの絶望の話。
ここから先は、うつ病から借金を抱え、夜逃げの末に河川敷で2年間のホームレス生活を送り、ドヤ街を転々としてきた自身の体験から、現場のリアルな話をしたい。
実は、ドヤ(簡易宿泊所)だってネカフェと同じように、毎日積み重なれば結局は高くなる。
じゃあ、本当に身分証も住所もない人間はどうすればいいのか。
ネットの検索画面をいくらスクロールしても絶対に出てこないが、実質月1〜3万円で、風呂・トイレ・キッチン付きの6畳間を確保して生き延びるルートは確実に存在する。
それは、一般的な不動産市場のルールが届かない個人間のやり取りや、現場の泥臭いネットワークの中に隠されている。
物価高騰、経済の不安定でいつ何が起きるかわからない世の中。
今は恵まれた環境にいても明日は我が身。いざという時のために知っておいて損はないだろう。
