光指す学園の秘密

ワカハちゃん

ワカハちゃん

私の右の人差し指は、時々光る。この秘密を知っているのは、世界中でただ一人、親友のユイだけだ。けれど、そのユイが、ある日突然、消えた。まるで、最初からそこに存在しなかったかのように。

星野アカリ、JK学園の二年生。目立つのが苦手で、いつも教室の隅で本を読んでいるような私にとって、佐倉ユイは眩しすぎる存在だった。ユイは学園のアイドル。明るく社交的で、誰もが彼女に夢中だった。そんなユイが、どうして私と親友になってくれたのか、今でも不思議に思う。私の人差し指が光ることを知っても、ユイは「アカリの特別な魔法だよ」と笑ってくれた。だから、私はユイにだけ、心を許していたのだ。

事件が起きたのは、夏の終わりのことだった。ユイが放課後、いつも私と会っていた図書室に現れなかったのだ。最初は「忙しいのかな」と軽く考えていたが、翌日になってもユイは学校に来なかった。そして、ユイの家族からも、警察からも、何の連絡もないまま、二日、三日と日が過ぎていく。

その夜、ユイから私に送られてきた、たった一通のメッセージを思い出した。「もし私に何かあったら、これを…」。添えられていたのは、学園の古びた地図の画像と、一連の数字の羅列。震える手でそれを開くと、アカリの人差し指が、淡く、しかし確かに光を放ち始めた。ユイが危険な目に遭っている――私の指が、そう訴えているかのようだった。

警察の捜査は「家出の可能性が高い」と結論付けようとしていたが、私は信じなかった。ユイはそんなことをするはずがない。私は一人、ユイの行方を探すことを決意した。

まず、地図の画像を拡大してみた。それは学園の敷地全体を示すもので、いくつかの場所に赤い印がつけられている。数字の羅列は、どう見ても暗号だった。私はユイの部屋にあった本や、彼女がよく使っていたノートを思い出し、暗号解読のヒントを探した。その中で見つけたのは、ユイが書き残した「地下室」という単語と、学園の古い歴史に関するメモだった。JK学園は、かつては別の用途で使われていたという。

「地下室…」

私はユイの残した地図の赤い印の一つが、学園の旧校舎の地下に位置することに気づいた。夜の学園に忍び込むのは初めての経験だった。風で揺れる木の枝が、まるで幽霊の手のように見え、心臓がバクバクと音を立てる。それでも、ユイを助けたい一心で、旧校舎の裏手に回った。

錆びた鉄扉の前に立つと、人差し指の光が、さらに強くなった。扉には、地図の数字の羅列の一部が記されている。私はその数字をパスワードのように試してみると、ガチャリと音を立てて扉が開いた。

中は湿った空気と埃の匂いが充満していた。スマートフォンをライト代わりに照らしながら進むと、古びた機械や研究資料らしきものが散乱している空間に出た。壁には、見たこともない複雑な回路図が描かれている。ユイは、こんな場所で何をしていたのだろう?

その時、背後から声がした。「まさか、君がここまで来るとはね。」

振り返ると、そこに立っていたのは、最近転校してきたばかりの男子生徒、如月ハヤトだった。彼はいつも冷静で、どこか探るような視線で私を見ていた。彼の出現に、私の人差し指は警戒するように強く光った。

「ユイちゃんの行方を探しているんだろう? 君のその指の光が、僕をここに導いたんだ。」ハヤトはそう言って、私に一枚の写真を差し出した。それは、ユイがこの地下室で、何かの装置を操作している写真だった。

「ユイは、学園の裏で秘密裏に進められているプロジェクトについて調べていた。君の指の光、そして僕の親友の失踪も、全てそのプロジェクトと関係がある。」

ハヤトの言葉に、私は息を呑んだ。彼は、ユイと同じように、秘密を知ろうとしていたのだ。私たちは情報交換を始め、ユイが残した暗号の全貌と、この地下室が、かつて軍の機密研究施設だったことを突き止めた。学園の理事長である佐倉ユウジ、つまりユイの父親が、この施設を使って、ある実験を再開しようとしていたのだ。その実験は、人間が持つ“潜在能力”を覚醒させるという、恐ろしいものだった。ユイはその実験の危険性を知り、阻止しようとしていたのだ。

ハヤトと私は、ユイが残した手がかりを辿り、理事長室の隠し金庫から、実験の全貌を記したデータディスクを発見した。しかし、その瞬間、理事長である佐倉ユウジが、私達の前に姿を現した。

「よくここまでたどり着いたな、星野くん。だが、もう手遅れだ。」

佐倉理事長は、穏やかな表情の奥に、冷酷な光を宿していた。彼は、ユイが実験の被験者として、地下深くの隔離施設にいることを告げた。そして、私のアカリの人差し指の光が、この実験を完成させるための“鍵”だと語った。ユイは、アカリの力を引き出すための囮だったのだ。

「ユイを助けたければ、その光の力を私に委ねるんだ。」

私は震えながらも、人差し指の光を見つめた。この光は、今まで私を悩ませてきた秘密だった。けれど、今はユイを救うための希望に見えた。私は首を横に振った。

「この光は、ユイを傷つけるためには使わせない!」

私の言葉に呼応するように、人差し指の光が、眩い閃光を放った。それは、理事長室のセキュリティシステムを一時的に麻痺させ、私たちに脱出のチャンスを与えた。

「行くぞ、アカリ!」ハヤトが私の手を引いた。

私たちは、ユイが囚われているという学園の地下深くにある、隔離施設を目指した。そこは、まるでSF映画に出てくるような、無機質な空間だった。無数のモニターが並び、その中央には、透明なカプセルが設置されていた。カプセルの中には、目を閉じ、装置に繋がれたユイの姿があった。

「ユイ!」

私の叫び声に、人差し指の光が、かつてないほど強く輝いた。その光は、カプセルの周囲に設置された装置に影響を与え、不規則な警告音を鳴らし始めた。佐倉理事長が、警備員を引き連れて現れる。

「愚かな! その力は、私こそが使うべきだ!」

理事長は、私とユイを捕えようと迫る。私はユイの傍に駆け寄ると、震える手でカプセルに触れた。人差し指から放たれる光が、カプセルの内部にまで届く。すると、ユイの瞼が、ゆっくりと開いた。

「アカリ……」

ユイの意識が戻ったことに、私は涙が止まらなかった。しかし、理事長の最後の罠が発動した。施設全体が揺れ始め、天井から瓦礫が落ちてくる。爆発音が響き渡り、私たちは絶体絶命のピンチに陥った。

「アカリ! ユイ!」

その時、ハヤトが再び現れた。彼は、背後から警備員を次々となぎ倒し、私たちのもとへと駆け寄ってくる。彼の顔には、今まで見せたことのない、強い決意の表情が浮かんでいた。

「僕は、君たちの力を信じる!」

ハヤトは、私とユイの手を掴むと、崩壊寸前の施設から私たちを引っ張り出した。彼は、以前から理事長の企みを突き止めるために、この学園に潜入していた、別の組織の一員だったのだ。三人の協力により、私たちは間一髪で脱出に成功した。背後で、轟音と共に施設が完全に崩壊していく。

夜空には、満月が輝いていた。ユイはまだ、完全に意識が戻ったわけではないが、私の隣で穏やかに眠っていた。私の人差し指の光は、もう以前のように隠す必要はない。この光は、私とユイの友情を繋ぎ、真実を照らす希望の光なのだと、私は確信した。

ハヤトは、静かに私の隣に座った。

「君のその力は、世界を変えられるかもしれない。」

彼の言葉に、私は顔を上げた。私の人差し指の光は、もう恐れるものではない。これは、私自身の、そしてユイとの友情の証なのだ。

そして、その光が、ハヤトの横顔を淡く照らした時、私の胸に、今まで感じたことのない、温かい感情が芽生えるのを感じた。それは、初めての推理、初めての危険な体験の先にあった、新しい「初体験」の予感だった。

ユイはまだ、目覚めていない。学園の秘密も、全てが解決したわけではないだろう。けれど、私はもう一人ではない。光を放つ人差し指は、私を未来へと導いてくれるだろう。


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ワカハちゃん

田舎のJKです。歌人やってます。

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