🔷R07_I-1|過去問題
地球温暖化に関しては、2021年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書において、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」と明記され、我が国を含む世界120以上の国と地域が、温暖化影響を工業化以前に比べ1.5°Cに抑えるため、我が国では第7次エネルギー基本計画により2050年にカーボンニュートラルを実現させる目標を掲げている。このカーボンニュートラル実現のための具体的な方策の1つとして、二酸化炭素を集めて地中に貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の活用が挙げられており、2024年5月には「CCS事業法(二酸化炭素の貯留事業に関する法律)」が成立しその事業化に向けた動きが進められている。
このような状況を踏まえ、化学技術者としての視点から、以下の問いに答えよ。
(1)CCSによる二酸化炭素排出量削減を実現させるために、多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、その技術課題の内容を説明せよ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち化学技術が最も貢献できると考える技術課題を1つ挙げ、その理由と課題に対する複数の解決策を、化学部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行しても残るリスクあるいは新たに生じるリスクを示し、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行する際に、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例
1.CCS実現に向けた多面的技術課題
〇観点1:CO2分離・回収技術の効率化
・化学吸収法における溶媒再生エネルギー削減
・CO2選択性向上とハイブリッドプロセス開発
〇観点2:CO2輸送・圧縮技術の最適化
・超臨界状態圧縮と輸送効率向上
・不純物管理と適応型機器設計
〇観点3:地中貯留における長期安定性確保
・キャップロック層安定性評価とCO2漏洩防止
・鉱物化反応促進と地層安定性確保
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題:CO2分離・回収技術の効率化
・CCS全体コストの約60%を占める重要工程
・化学部門専門性の最大限活用
▽解決策1:新規吸収溶媒の分子設計
・立体障害アミン系溶媒とイオン液体開発
・分子動力学シミュレーション最適化
▽解決策2:固体吸着材による温度スイング吸着プロセス
・MOFとゼオライト系吸着材活用
・低温脱着可能な表面官能基修飾
▽解決策3:膜分離統合ハイブリッドプロセス
・高分子膜・無機膜による統合プロセス
・前段濃縮と後段吸収負荷軽減
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
◇リスク及びその対策1:長期運転による材料劣化と性能低下
・加速劣化試験による寿命予測モデル構築
・オンライン性能監視と予防保全
◇リスク及びその対策2:スケールアップ時の物質移動効率低下
・CFDシミュレーションによる流動解析
・パイロットプラント段階的スケールアップ
4.業務遂行に必要な要件・留意点
☆技術者としての倫理の観点
・科学的根拠に基づく正確な情報開示
・公衆の安全と福祉優先の技術判断
☆社会の持続可能性の観点
・地域社会との合意形成と透明性確保
・持続可能な技術システム構築