🔷R07_Ⅲ-1|過去問題
我が国では、インフラの老朽化や機能上の問題等により、構造物全体あるいは大部分の補修・補強、又は取り替えが必要となる既設構造物について、大規模な補修・補強工事が進められている。対象構造物は供用中であることから、施工中にはその機能に制約を与えることになる。また、周辺環境にも影響を及ぼす可能性がある。そのため、補修・補強、又は改築・増築等の実施時には、これら社会的影響の軽減に配慮しながら施工する必要がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)大規模な補修・補強工事の計画、設計、製作・製造、施工において社会的影響の軽減に配慮するうえでの技術課題を、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。(※)
なお、本設問における大規模な補修・補強工事とは、構造物全体あるいは大部分の補修・補強、又は取り替えを行う工事とする。
(※)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。ただし、単なる仮設構造物に関する方法は除く。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_Ⅲ-1|骨子例
1.社会的影響軽減の技術課題
〇観点1:交通機能維持の観点
・供用中構造物における交通機能確保と施工空間確保の両立
・限られた施工時間内での効率的作業実施と品質確保の両立
〇観点2:構造安全性確保の観点
・構造系変化に伴う応力再配分への対応
・段階的な荷重伝達機構の構築とき裂進展防止技術
〇観点3:環境負荷低減の観点
・建設発生土や廃棄物の適切な処理と再利用促進
・騒音・振動・粉じん発生抑制と高耐久性材料の適用
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・既設構造物の構造安全性を保持した段階的施工計画
・構造破綻による重大事故防止の最優先対応
▽解決策1:段階的施工における構造解析技術の高度化
・三次元有限要素法解析による応力状態と変形挙動の詳細予測
・構造健全度診断結果をフィードバックした施工計画最適化
▽解決策2:プレキャスト部材を活用した構造系変化の最小化
・プレキャスト部材採用による現場での構造系変化期間抑制
・PC鋼材の段階的緊張工法による応力導入過程での構造安全性管理
▽解決策3:リアルタイム構造監視システムの導入
・ひずみゲージや加速度計による構造応答の常時監視システム構築
・警報システムによる異常値検出時の迅速対応体制確立
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
1)解析結果の信頼性に関するリスク
・構造解析の精度限界による予測誤差と実構造物との乖離
・構造健全度診断による材料物性実測値の解析反映
2)プレキャスト部材の品質・接合性能に関するリスク
・プレキャスト部材と既設構造物接合部の応力伝達不良
・既設コンクリート表面処理と接合部品質検査体制確立
3)監視システムの技術的限界に関するリスク
・計測データの誤判定による不適切な対応措置
・複数計測手法組合せによる冗長性ある監視システム構築