1. 商談メモ、要約で終わっていませんか
商談が終わった直後は、お客様が何を困っていて、何を求めているかが頭に残っています。
しかし、会社に戻って別の業務をこなしているうちに、その感覚は薄くなります。
夕方に手元のメモを開くと、「見積に時間」「二重入力」「クラウドは確認必要」「来月上司同席」など、自分だけが分かる言葉が並んでいる。
ここから提案書を作ろうとすると、どこを課題にすればよいか、何を提案の中心にすればよいか、次に何を確認すればよいかで手が止まります。
よくあるのは、次のような流れです。
16時半に商談が終わり、17時に帰社。
明日の10時には上司へ提案方針を共有する予定がある。
商談メモは取れている。
そこでAIチャットにメモを貼り、「要約して」と頼む。
すると、それらしい要約は出てきます。
しかし、その要約は「何が話されたか」を短くしたものであり、提案書の骨子ではありません。
提案書では、お客様の課題、提案内容、実施イメージ、費用や効果、次のアクションを、相手が判断できる順番で並べる必要があります。
要約から骨子への並べ替えに、また時間がかかってしまうのです。
この「要約で終わってしまう」状態には、いくつかの兆候があります。
AIに要約させて満足している。
メモはあるのに、課題・提案・次アクションに分けられない。
提案タイトルが決まらない。
次に何を確認すべきかが曖昧なまま、次の商談を迎えてしまう。
どれか一つでも当てはまるなら、商談メモの活かし方を見直す価値があります。
原因は、あなたのメモの取り方が悪いからではありません。
商談メモは、会話の流れに沿って取るものです。
一方、提案書は、お客様の課題を起点にした構成で作ります。
この二つは目的が違います。
だから、メモをそのまま提案書に変えようとすると、変換作業が必要になります。
この変換をAIチャットに手伝ってもらうのが、これから紹介する方法です。
この記事で目指す状態は、次のとおりです。
読者が、匿名化した自分の商談メモをAIチャットに貼り付け、課題・提案内容・次アクションが揃った提案書の骨子案を自分で作れるようになることです。
使う道具はAIチャットの無料枠だけです。
コードやAPI、コマンド操作は必要ありません。
特別なソフトも不要で、ブラウザでAIチャットを開ける環境があれば始められます。
ただし、始める前に一つだけ注意があります。
実際の顧客名、会社名、個人名、金額、連絡先、契約情報などの機密情報は、そのままAIチャットに貼らないでください。
練習や整理には、匿名化したメモ、または架空のメモを使います。
この記事でも、すべて架空の例で説明します。
まずは安全なメモで流れをつかみ、自分の業務で使うときは、顧客が特定されない形に置き換えてから貼るようにしてください。
商談メモは、取っただけで終わらせるにはもったいない情報のかたまりです。
要約で止めず、提案書の骨子まで進める。
その第一歩が、メモを提案に使える形へ整理することです。


いきなり『提案書を作って』って頼んじゃダメなんですか?

それだと一般論になりがちなんだ。この章で、3段階に分ける理由を説明するよ。
2. 3段階で骨子まで進める全体の流れ
商談メモから提案書の骨子を作るときは、一度に「提案書全体を作ろう」としない方が進めやすくなります。
おすすめは、次の3段階に分ける方法です。
1段目は「ニーズ構造化」です。
これは、商談メモに出てきた情報を、顕在ニーズ、潜在ニーズ、制約条件、意思決定情報の4つに分ける作業です。
顕在ニーズは、お客様がすでに言葉にしている要望です。
潜在ニーズは、まだ言葉になっていないけれど、話の端々から見える本当の困りごとです。
制約条件は、予算、時期、体制、技術、セキュリティなど、提案の範囲を決める条件です。
意思決定情報は、誰が決めるのか、誰が影響するのか、いつまでに決めたいのか、といった情報です。
2段目は「接点マトリクス作成」です。
ここでは、1段目で整理したニーズと、自社のサービスや機能を対応させます。
どのニーズに、どの機能が役立つのかを表のように並べ、優先度を付けます。
すべてのニーズに無理やり提案するのではなく、お客様が重要視しているものから順に考えるのがポイントです。
3段目は「提案骨子作成」です。
ここで初めて、提案書の骨格を作ります。
提案タイトル、ストーリーライン、キーメッセージ、想定質問への回答案などをまとめます。
ストーリーラインとは、提案の流れのことです。
たとえば、現状課題、原因、解決の方向性、具体提案、効果、導入イメージ、投資対効果、という順番で並べると、相手が判断しやすくなります。
一般的な営業提案書でも、顧客の課題、提案内容、実施計画、費用と効果、次のアクションといった構成がよく使われます。
この流れに沿うと、骨子案が作りやすくなります。
この3段階は、すべてAIチャットの無料枠で進められます。
必要なものは、匿名化した商談メモと、AIチャットを開けるブラウザだけです。
コードを書く必要も、APIを設定する必要も、コマンドを打つ必要もありません。
難しく考えず、チャットに文章で指示を出すだけで進められます。
ただし、やってしまいがちな失敗があります。
それは、商談メモをそのままAIチャットに貼り、「提案書を作って」とだけ頼む方法です。
この頼み方では、AIは一般的な提案書の型に当てはめた文章を返しやすくなります。
なぜなら、メモが整理されていないため、どこが重要なお客様の課題なのか、どの発言が提案の根拠なのかをAIが判断しにくいからです。
また、お客様の具体的な発言が含まれていないと、AIは一般論で埋めてしまいます。
結果として、どの会社にも当てはまりそうな、弱い提案書の骨子になってしまいます。
大切なのは、いきなり完成品を求めないことです。
まずメモを構造化し、次に自社の提案との接点を整理し、最後に骨子を作る。
この順番を守るだけで、AIチャットの出力は具体的になります。
各段階では、AIの出力を一度そのまま受け取り、足りない情報や間違っている情報を自分で確認してから次へ進みます。
AIは便利ですが、最終判断は営業担当者であるあなたが行います。
その前提で、3段階を順に進めていきましょう。

3. ステップ1:商談メモをニーズ構造化する
ステップ1は、商談メモを「提案に使える形」に整理する段階です。
ここでは、メモに出てきた情報を、顕在ニーズ、潜在ニーズ、制約条件、意思決定情報の4つに分類します。
この作業を「ニーズ構造化」と呼びます。
難しく聞こえますが、やることはシンプルです。
AIチャットにメモを貼り、4つの観点で分けてもらいます。
その結果を見て、足りない情報や推測しすぎている部分を自分で直します。
まず、貼り付ける前にメモを匿名化します。
お客様の会社名、個人名、具体的な金額、住所、連絡先、契約情報などは、記号や一般的な表現に置き換えます。
たとえば、「株式会社山田商事」は「A社」、「山田部長」は「購買部長Bさん」のようにします。
金額も「予算はおよそ300万円」ではなく、「予算枠は聞いたが確定ではない」といった表現に変えます。
ここを省略すると、機密情報をAIチャットに入れてしまう危険があります。
必ず先に匿名化してから貼り付けてください。
次に、AIチャットの入力欄に、指示文と匿名化したメモを続けて貼ります。
指示文は、AIに役割と分類ルールを伝えるものです。
以下の例を参考にしてください。
これはあくまで例なので、自分の言い方に変えても構いません。
指示文の例
「あなたは営業の提案準備を手伝うアシスタントです。
以下は匿名化した架空の商談メモです。
このメモだけを根拠に、次の4つに分けて整理してください。
- 顕在ニーズ:お客様が口に出している要望
- 潜在ニーズ:口には出ていないが、困りごとから推測できる要望
- 制約条件:予算、時期、体制、技術、セキュリティなど
- 意思決定情報:決める人、影響する人、決める時期、次に必要な確認
ルール:
- メモにない事実を追加しない
- 推測は『推測』と明記する
- 分からないことは『不明』と書く
- お客様の発言はできるだけ短く引用する
- 最後に、次回商談までに確認したいことを3つ挙げる
【匿名化した商談メモ】 (ここにメモを貼る)」
この形で送信すると、AIチャットは4つの分類に沿ってメモを整理してくれます。
ここで大事なのは、最初から完璧な出力を求めないことです。
AIの出力を見ながら、「この分類は合っているか」「お客様が言っていないことを勝手に追加していないか」を確認します。
具体例で見てみましょう。
以下は、すべて架空の商談メモです。
架空の商談メモの例
「A社(食品卸・従業員約80名) 購買部長Bさん、情報システム担当Cさんと商談。
- Bさん『見積作成に毎回1時間以上かかる。営業が事務作業に取られている』
- 現場からは、受注データを基幹システムとExcelに二重入力していてミスが多いと聞いた
- Cさん『クラウドならセキュリティチェックが必要。既存の基幹システムとの連携は外せない』
- 今期中に予算を取りたいが、金額は未確定。まずは小さく始めたい
- 決裁は購買部長から専務。来月の定例で上司同席予定
- 次回までに、見積作成の改善イメージと概算費用感を求められている」
このメモを、先ほどの指示文と一緒にAIチャットへ貼ります。
すると、たとえば次のような出力が返ってきます。
これも架空の出力例です。
AIチャットの出力例
- 顕在ニーズ
- 見積作成の時間を短くしたい(根拠:「見積作成に毎回1時間以上かかる」)
- 受注データの二重入力をなくしたい(根拠:現場の声として記載)
- 月次締めの負担を減らしたい(推測:二重入力のミスが多いという記載から)
- 潜在ニーズ
- 営業が顧客対応に時間を使えるようにしたい(推測:「営業が事務作業に取られている」という発言から)
- 属人化を解消したい(推測:Excel運用と現場の声から)
- 制約条件
- 既存の基幹システムとの連携は外せない(根拠:Cさんの発言)
- クラウド利用時はセキュリティ確認が必要(根拠:Cさんの発言)
- 予算は今期中に取りたいが金額は未確定。まずは小さく始めたい(根拠:メモ)
- 意思決定情報
- 起点は購買部長Bさん、技術確認は情報システム担当Cさん、最終決裁は専務(根拠:メモ)
- 来月の定例で上司同席予定(根拠:メモ)
- 次回までに確認したいこと
- 見積作成の現行フローと、時間がかかっている工程
- 基幹システムとの連携可能範囲
- 予算上限と決裁スケジュール
この出力を見て、次の点を確認します。
第一に、4つの分類がすべて埋まっているか。
第二に、各項目にメモの根拠や短い引用があるか。
第三に、推測と事実が分けられているか。
第四に、メモにない会社名、金額、人物が追加されていないか。
第五に、次に確認すべきことが具体的に挙がっているか。
これらができていれば、ステップ1は成功です。
もし出力が一般的すぎる場合は、指示文に「必ずメモの中の発言を引用してください」と追加して、もう一度送ります。
分類が混ざっている場合は、「顕在ニーズは、お客様が実際に言ったことだけにしてください」と条件を足します。
AIがメモにない情報を足している場合は、「メモにない事実は追加しないでください。
不明な点は不明と書いてください」と強く伝えます。
それでもうまくいかないときは、一度メモを見直し、お客様の発言をそのまま書き足してから再実行します。
ステップ1で整った情報が、次の接点マトリクスと提案骨子作成の土台になります。
4. ステップ2:ニーズと自社サービスの接点マトリクスを作る
ステップ1で、商談メモを「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」「制約条件」「意思決定情報」に分けたら、次はそれらと自社サービスの機能を対応付ける表を作ります。
この表を「接点マトリクス」と呼びます。
難しく考える必要はありません。
「お客様が困っていること」と「自社が提供できること」を1行ずつ結び付ける作業です。
ここで大切なのは、いきなり「提案できます」と決めないことです。
まずは、どのニーズに、どの機能が、どのように役立つのかを並べ、優先度を付けます。
優先度の目安は次のとおりです。
- 高:決裁者の判断基準、導入時期、予算などの制約に直結している
- 中:有効だが、予算や時期、対象範囲がまだ確定していない
- 低:今回の商談では優先されていない、または自社の提供範囲外
AIチャットには、ステップ1の整理結果と自社サービス機能一覧を貼り、表の形で出してもらいます。
無料枠で使う場合も、長すぎるメモは分割して貼ると扱いやすくなります。
AIチャットへの指示文例
あなたは営業の提案アシスタントです。以下は、匿名化した架空の商談メモから整理したニーズと、自社サービスの機能一覧です。 次の表を作ってください。 列は「ニーズ」「顧客の発言・根拠」「種類(顕在・潜在・制約・意思決定)」「対応する自社機能」「お客様に起きる変化」「優先度」「理由」「要確認事項」の8つです。 優先度は「高・中・低」で付け、理由は私が入力した内容に基づいてください。 入力にない事実や数字を追加しないでください。分からないことは「要確認」と書いてください。 最後に、優先度が高い順に並べ替えた要約も出してください。 【構造化したニーズ】 1. 顕在:Excel台帳の更新が担当者によって違う 2. 顕在:配送に関する問い合わせが特定の担当者に集中している 3. 潜在:担当者が休むと引き継ぎに時間がかかる 4. 制約:現場のIT機器の慣れにばらつきがあり、研修が必要 5. 意思決定:部長が今期予算で検討しており、来月までに方向性を出したい 【自社サービスの機能一覧】 ・クラウド型の配車表共有 ・スマートフォンからの入力 ・集計の自動化 ・問い合わせ通知 ・権限管理 ・導入研修 ・チャットサポート
出力イメージ(架空の記入例)
| ニーズ | 顧客の発言・根拠 | 種類 | 対応する自社機能 | お客様に起きる変化 | 優先度 | 理由 | 要確認事項 |
| 台帳更新が人によって違う | 「更新ルールが決まっていない」 | 顕在 | クラウド配車表共有、権限管理 | 同じ情報を全員が見られる | 高 | 業務の混乱に直結している | 現在の更新手順 |
| 問い合わせが特定担当に集中 | 「休むと誰も答えられない」 | 顕在 | 問い合わせ通知、共有機能 | 問い合わせを複数人で確認できる | 高 | 引き継ぎ・属人化の解消につながる | 問い合わせ件数の目安 |
| 引き継ぎに時間がかかる | 「引き継ぎ資料を毎回作っている」 | 潜在 | クラウド共有、操作履歴 | 過去の対応を確認しやすい | 中 | 効果はあるが、対象範囲が未確定 | 引き継ぎの頻度 |
| IT慣れにばらつき | 「全員がすぐ使えるか不安」 | 制約 | 導入研修、スマホ入力、チャットサポート | 操作練習をしてから始められる | 高 | 導入可否の判断に影響する | 研修に使える時間 |
| 今期予算で来月までに方向性 | 「部長が今期中に決めたい」 | 意思決定 | 段階導入プラン | 小さく試して判断できる | 高 | 決裁スケジュールに合う | 予算上限、決裁手順 |
この表ができたら、AIの出力をそのまま提案書に貼るのではなく、次の点を確認します。
- 優先度「高」のニーズが1つ以上あるか
- 顧客の発言と自社機能がつながっているか
- 「お客様に起きる変化」が具体的か
- 分からないことが「要確認」になっているか
- 一般論だけの行が残っていないか
もし「優先度が全部高」になった場合は、AIに「決裁・予算・時期に直結するものだけを高にしてください」と追加で指示します。
出力が抽象的すぎるときは、商談メモから顧客の発言を1つ選び、「この発言に基づいて表をやり直してください」と伝えます。
自社機能が実際と違う場合は、正しい機能一覧を貼り直します。
ここで表がうまく作れない場合は、ステップ1に戻り、ニーズの分類が不足していないか確認してください。
特に「誰が決めるのか」「いつまでに決めたいのか」「予算の制約は何か」が抜けていると、優先度を付けられません。
必要なら、次回商談で確認する質問としてメモに追加します。


骨子ができたら、そのまま提案書にしていいんですか?

まずはこの章のチェックリストで確認してからね。数字や実績は必ず要確認かどうかも見てね。
5. ステップ3:提案書の骨子を作る
ステップ2で接点マトリクスができたら、いよいよ提案書の骨子を作ります。
骨子とは、提案書の中身を全部書く前の「設計図」です。
ここでは、提案タイトル、ストーリーライン、キーメッセージ、想定質問への回答案、次アクションを決めます。
AIチャットには、ステップ1の構造化ニーズと、ステップ2の接点マトリクスを貼ります。
そのうえで、次の指示文を使います。
AIチャットへの指示文例
あなたは営業の提案書作成アシスタントです。以下の【構造化ニーズ】と【接点マトリクス】をもとに、提案書の骨子案を作ってください。 出力は次の5つです。 1. 提案タイトル案を3つ 2. ストーリーライン。「現状課題→原因→解決方向性→具体提案→効果→導入イメージ→投資対効果」の順で 3. キーメッセージを3つ 4. 想定質問と回答案を5つ 5. 次アクション案。「誰が」「いつまでに」「何をするか」の形で ルール:入力にない数字、実績、顧客名、導入社数は出さないでください。分からないことは「要確認」と書いてください。効果は「何をどう測るか」もセットで書いてください。投資対効果は条件が未確定なら空欄にし、確認事項を書いてください。 【構造化ニーズ】 ・Excel台帳の更新が担当者によって違う ・配送問い合わせが特定の担当者に集中している ・引き継ぎに時間がかかる ・現場のIT慣れにばらつきがある ・部長が今期予算で検討し、来月までに方向性を出したい 【接点マトリクス】 ・台帳更新のばらつき → クラウド配車表共有、権限管理(優先度:高) ・問い合わせ集中 → 問い合わせ通知、共有機能(優先度:高) ・引き継ぎ負荷 → クラウド共有、操作履歴(優先度:中) ・IT慣れのばらつき → 導入研修、スマホ入力、チャットサポート(優先度:高) ・今期決定・来月方向性 → 段階導入プラン(優先度:高)
完成した骨子案の例(架空の記入例)
提案タイトル案
- 配送管理の属人化を減らし、現場が続けられる形で問い合わせ対応を整理する提案
- Excel台帳からクラウド共有へ:配送業務の引き継ぎを楽にする段階導入
- 今期の方向性決定に合わせた配送管理改善のご提案
ストーリーライン
- 現状課題:Excel台帳の更新が担当者ごとに違い、配送の問い合わせが特定の人に集中している。担当者が休むと引き継ぎに時間がかかる。
- 原因:更新ルールが統一されておらず、情報が個人のPCや紙に閉じている。現場のIT慣れにも差がある。
- 解決方向性:クラウドで配車表を共有し、スマートフォン入力、問い合わせ通知、権限管理、導入研修を組み合わせる。
- 具体提案:最初から全業務を変えず、1つの拠点か1つの業務から始める。配車表共有と問い合わせ通知を先に使い、運用ルールと研修をセットにする。
- 効果:更新漏れや問い合わせの偏り、引き継ぎ時間の削減を目指す。数値は顧客と測定方法を合意してから設定する。
- 導入イメージ:キックオフ、設定、研修、試験運用、本運用の順に進める。期間は要件確認後に決める。
- 投資対効果:費用は最小・標準・拡張の3案を提示する。削減時間や人件費は顧客の条件を確認して試算する。未確定の項目は「要確認」とする。
キーメッセージ
- 現場が続けられる運用から始める
- 今期の意思決定に合わせて段階的に導入する
- 効果の測り方を先に決めてから進める
想定質問と回答案
- Q:現場がITに慣れていなくても使えるか
A:スマートフォン入力、研修、操作手順、試験運用を用意する。 - Q:今のExcelはどうするのか
A:すぐに廃止せず、移行範囲を合意しながら併用する。 - Q:今期に導入できるか
A:小さく始める段階導入なら可能。詳細は要件確認後。 - Q:費用はどのくらいか
A:最小・標準・拡張の3案を提示する。条件を確認してから。 - Q:効果はどう測るのか
A:更新漏れ、問い合わせ件数、引き継ぎ時間など、測定項目と方法を先に決める。
次アクション案
- 営業担当が骨子案を送る(期限は商談で合意)
- 顧客の現場担当が運用課題を確認する
- 次回商談で優先度の高い機能のデモを行い、費用3案の条件を確認する
骨子案ができたら、次のチェックリストで確認します。
- 課題:顧客の発言やメモに基づいているか。一般論になっていないか。
- 提案:接点マトリクスの優先度「高」が入っているか。
- 次アクション:誰が、何を、いつまでに行うか書かれているか。未確定なら「要確認」か。
- ストーリーライン:現状課題→原因→解決方向性→具体提案→効果→導入イメージ→投資対効果の順になっているか。
- キーメッセージ:決裁者や現場担当に伝わる言葉か。3つ程度に絞られているか。
- 想定質問:決裁、現場、費用、効果、既存運用、セキュリティなどの不安に答えているか。
- 数字:入力にない数字や実績を使っていないか。使う場合は出典か「要確認」があるか。
- 投資対効果:条件と計算式が示されているか。費用は複数案になっているか。
もしタイトルが抽象的なら、「顧客の状況と解決したいことを入れて作り直してください」とAIに伝えます。
ストーリーがすぐ解決策に飛んでいる場合は、「原因の説明を追加してください」と指示します。
効果に数字だけが入っている場合は、「測定方法もセットで書いてください」と戻します。
AIが入力にない実績や数字を出したら、その部分を「要確認」に置き換えさせます。
骨子が長すぎるときは、優先度の高いニーズに絞って1ページ分に整理します。
6. よくある失敗と機密情報の扱い
ここまで、商談メモを「ニーズ構造化」「接点マトリクス」「骨子作成」の3段階に分けてAIチャットへ渡す方法を見てきました。
ここからは、実際に試したときにつまずきやすい点を確認します。
大きく分けると、出力が思ったより一般的になってしまう「渡し方」の問題と、顧客情報をどう扱うかという「機密情報」の問題です。
この2つを押さえておくと、安心して試せるようになります。
メモをそのまま貼るだけでは、なぜうまくいかないのか
まず、よくある失敗から見てみましょう。
次のような商談メモを想像してください(説明用の架空例です)。
A社訪問。コスト削減の話。資料送付。来月再訪。
これをそのままAIチャットに貼り、「このメモから提案書を作って」と頼むと、どんな結果になるでしょうか。
多くの場合、「コスト削減提案書」というタイトルと、目次、業務の見える化やシステム化といった一般的な施策が並んだ、どの会社にも当てはまる内容が返ってきます。
これはAIの性能が低いからではありません。
メモに「誰が、何に、なぜ困っていて、何を判断材料にしているのか」が書かれていないため、AIが書かれていない部分を無難に埋めようとするからです。
商談メモの活用法を実務目線で発信している人の中にも、「商談メモをそのまま生成AIに入れて『提案書を作って』と言うのは、情報が構造化されていないため的外れな出力になりやすい」「相手の具体的な発言を含めないと、AIも一般論しか出せない」という失敗パターンを指摘している人がいます。
つまり、渡す情報の中身と整理の仕方が結果を左右します。
相手の具体的な発言が、提案の切り口を変える
では、どのように書き足せばよいのか。
ポイントは、相手が実際に言った言葉を残しておくことです。
先ほどのメモを、次のように書き換えてみます(すべて説明用の架空例です)。
・訪問先:A社(匿名)/購買部の担当者X様
・相手の発言:「経理から毎月の集計に時間がかかると言われている」
「前回システムを入れたが、現場に定着しなかった」
・背景として聞いたこと:部署ごとに表の形式が違う/担当者が兼務で手が回らない
・制約:年度内に予算を使いたい/来期から体制が変わる
・次アクション:来月の再訪までに、定着支援を含めた進め方を提示する
このように「相手の発言」「背景」「制約」「次アクション」を分けて書いておくと、第3章のニーズ構造化で、AIが課題と要望、事実とこちらの解釈を区別しやすくなります。
とくに「前回システムを入れたが、現場に定着しなかった」という発言は、提案の切り口を大きく変える材料です。
一般的な提案書には出てこない、その会社ならではの事情が表れているからです。
逆に、こうした発言がメモに残っていなければ、AIはどれだけ賢くても一般論しか書けません。
商談中にすべてを書き取る必要はありません。
ただし、「困りごとを説明したときの言葉」「過去にうまくいかなかった話」「期限や予算に関する話」は、あとで1行でもよいので残しておきましょう。
これが、要約で止まらず骨子まで進むための材料になります。
貼り付ける前に必ず匿名化する
次に、機密情報の扱いです。
AIチャットに商談メモを渡すと便利ですが、実在の顧客名、担当者名、金額、契約条件、未公開の製品名、連絡先などをそのまま貼り付けるのは避けてください。
入力内容の取り扱いはサービスごとに決まっており、社内の情報管理ルールに反するおそれもあるためです。
会社としてAIチャットの利用ルールが決まっている場合は、必ずそちらを優先してください。
匿名化の基本は、固有名詞と、特定につながる数字を置き換えることです。
次のように置き換えれば、提案を考えるのに必要な情報は残せます。
- 会社名 → 「A社」「B商事」などの仮の名前にする
- 担当者名 → 「購買担当のX様」のように役割で呼ぶ
- 金額 → 「月額数十万円規模」のような幅のある表現にする、または項目ごと削る
- 製品名・サービス名 → 「基幹システム」「在庫管理ツール」など一般名に置き換える
- 地域・部署・時期 → 「関東の拠点」「来期」などにぼかす
- メールアドレス・電話番号・URL → 貼らずに削る
判断に迷ったら、「これは社外の人に見せて困らないか」を基準にしてください。
少しでも困る可能性があるなら貼らず、課題の構造だけを自分の言葉で書き直してから渡します。
金額を残したい場合も、実際の数字ではなく「予算の枠がある」「時期が決まっている」といった事実だけに置き換える方法があります。
なお、この記事で示しているメモ例はすべて説明用の架空例であり、実在の顧客の情報ではありません。
自分のメモで試すときも、同じように置き換えてから使ってください。
うまくいかないときは、どの段階に戻るか
出力が期待と違ったときは、AIへの頼み方を変える前に、渡したメモと前の段階を見直します。
- 内容が一般論になった → 具体的な発言や制約が抜けていないか確認し、足して第3章のニーズ構造化からやり直す
- 課題と提案内容がずれた → 第4章の接点マトリクスに戻り、どの課題を優先するかを決め直す
- 次アクションが「検討する」など曖昧になった → 「誰が、いつまでに、何を決めるのか」をメモに足して、第5章の骨子作成をやり直す
- 固有名詞が混ざっていないか不安 → 貼り付けた文章を見直し、見つけたら置き換えてもう一度実行する
どれも、最初からやり直す必要はありません。
戻る場所が決まっていれば、数分で立て直せます。
7. まとめ:次の商談メモから試してみる
3段階の振り返り
この記事で紹介した流れを、あらためて振り返ります。
1つ目は「ニーズ構造化」です。
商談メモを、顕在ニーズ(相手がはっきり口にした要望)、潜在ニーズ(背景から見える困りごと)、制約条件(予算・時期・体制)、意思決定情報(誰が決めるか)に分けます。
ここで大事なのは、相手の具体的な発言を残しておくことでした。
2つ目は「接点マトリクス」です。
整理した課題と、自社のサービスや機能を対応させ、どれを優先して提案するかを決めます。
すべてを詰め込むのではなく、相手の判断に効くものから並べる段階です。
3つ目は「骨子作成」です。
提案タイトル、ストーリーライン(現状の課題→原因→解決の方向性→具体提案→効果→導入イメージ→投資対効果)、キーメッセージ、想定質問への回答案という形で、提案書の骨組みを作ります。
この3段階を経ることで、商談メモが要約で止まらず、提案書の骨子まで進みます。
ポイントは、一度に全部をやろうとしないことです。
1段階ずつ区切ることで、どこでつまずいたかも分かりやすくなります。
骨子案ができたかどうかの最終確認
できあがった骨子案は、まず「課題」「提案内容」「次アクション」の3つが揃っているかを確認してください。
詳しいチェック項目(キーメッセージが3つ程度に絞られているか、想定質問への回答案があるか等)は第5章のチェックリストで確認済みのはずです。
ここでは、その3つが土台として揃っているかだけを最終チェックします。
営業提案書の一般的な構成としては、表紙、目次、導入部、顧客の課題、提案内容、実施計画、費用と投資対効果、締めくくりとアクションの呼びかけ、といった要素が紹介されることがあります。
骨子の段階では全部を埋める必要はなく、足りなければ該当する段階に戻ります。
次の商談メモで、まず1段階だけ試す
次にやることはシンプルです。
次の商談が終わったら、メモを匿名化して、第3章の指示文に貼り付けてみてください。
最初から3段階すべてをやろうとしなくて構いません。
まずはニーズ構造化だけを試し、出力を見て「課題が自分の認識と合っているか」を確認します。
ここが合っていれば、次の接点マトリクス、骨子作成へと進みます。
慣れてきたら、商談のあとに15分ずつ、あるいはまとめて30分でも構いません。
大切なのは、メモを取って終わりにせず、AIチャットに渡して次の形に進める習慣をつけることです。
特別な道具は必要ありません。
無料枠のAIチャットと、匿名化した自分のメモがあれば始められます。
つまずいたときの戻り先
もし途中でうまくいかなくなったら、次のように戻ってください。
- 課題の整理がしっくりこない → メモに相手の発言を足して、ニーズ構造化からやり直す
- どの提案を優先するか決められない → 接点マトリクスに戻り、課題と機能の対応を見直す
- 骨子の流れが弱い → ストーリーラインの項目(現状→原因→解決→具体提案→効果→導入→投資対効果)のどこが抜けているかを確認する
- 一般論になった → 匿名化したうえで、相手の具体的な発言や制約を追加する
- 機密情報が混ざっていないか不安 → 貼り付けた内容を見直し、固有名詞や数字を置き換える
商談メモは、書いて終わりにするにはもったいない材料です。
要約で止めず、3段階を経て提案書の骨子まで進める。
まずは次の商談メモ1枚から、試してみてください。
骨子の次に必要な作業を選ぶ
ここまでで、商談後のメモを提案書の骨子に変える作業は完了です。次の作業まで毎回同じ型で進めたい場合だけ、次の有料記事を検討してください。
- 商談前の準備メモを作る:相手企業の公開情報、質問、提案の切り口を商談前に同じ形式で揃えたい方に向いています。
- 見積書・提案書のテンプレートを整える:骨子を作った後、担当者ごとに違う書式や確認ルールを社内で統一したい方に向いています。
どちらも必要でなければ、この記事の手順だけで十分です。提供内容・目次・現在の価格は、それぞれの記事ページで確認できます。
初心者にも分かりやすいAI活用情報をこれからもお届けします。
この記事が少しでも参考になったら、AI実用ラボをフォローしていただけるとうれしいです。
