
レースのカーテン越しに差し込む朝の光が、静まり返った寝室を淡く照らしている。
「お父さん、朝ごはんよ。今日はカボチャのポタージュ。ゆっくり飲みましょうね。」
「お父さん」と言った女が、笑顔で寝たきりの老人の唇にスプーンを近づけた。
しかし、老人は何も答えず、ただ濁った瞳で天井をじっと見つめているだけだった。老人は時折、わずかに指先を動かし瞬きをするが、女のする事には何の反応もない。
いつもの朝、しかしその日常は、二人のいる部屋の古い木造のドアと共にいきなり蹴破られた。
「え!?何……!?」
振り返った女の視界に飛び込んで来たのは、場違いな黒いスーツに身を包んだ、いかつい体躯の男二人組だった。
彼らの手には、消音装置付きの銃が握られている。
「あなたたち!なによ、出ていって!!」
女は震える手で老人を庇うように立ちはだかった。
男たちは表情一つ変えず、一歩、また一歩とベッドへ歩み寄る。
「どいてください。」
一人の男が、冷徹な声で言い放つ。
「これはお父様のご意思です。治療しても治らないのなら、殺してくれと言われています。」
男の言葉が脳内に響いた瞬間、彼女の思考は真っ白に染まった。
「嘘よ!嘘!そんなのは嘘!!」
彼女は喉が張り裂けんばかりに叫び、涙を流した。
「やめて!やめて!!何て事……!!お父さんがそんなこと言うはずない!お願い、やめて!!」
男たちは事務的な手際で彼女を老人から引き離した。
