「彼女、来ないって」
「そう」
彼は二人分のカップを出した。
「来ないんだよ」
「聞こえてる。お前も飲むだろ」
この人は、誰のために二つ目のカップを出したのでしょう。
来ると思っていた人の分。目の前にいる友人の分。考える前に手が動いただけかもしれません。
ここで気になるのは、最後の返事です。「お前も飲むだろ」は最初からそのつもりだった説明にも聞こえるし、今つけた理由にも聞こえます。
どちらなのかは、まだ決めなくていい。続きを少し読みたくなったなら、この数行には、その人を想像する場所があります。
うまく説明できないところに、目を留めたい
キャラの気持ちを伝えようとして、全部説明したくなることがあります。
「彼は本当は寂しかった」「素直になれない性格だった」。そう書けば、伝えたいことははっきりします。
けれど、言葉では平気そうなのに、手はいつもの準備をしてしまう。その食い違いにも、その人らしさがあると思うのです。
この記事では、そうした小さなところに目を留めます。言い直した一語。聞かれたことから少し外れた返事。誰かの前でだけ変わる話し方。
好きになったキャラを、説明しやすい性格へ整えすぎたくない。矛盾して見えるところも、本人がうまく言えないところも、少し残して見ていたい。そのための文章を考えます。
一つだけ、文章を変えてみる
冒頭の最後を、こう変えるとどうでしょう。
「聞こえてる」
彼はカップを一つ、棚へ戻した。
こちらでは、知らせを受けて行動が変わります。
元の場面では、二つのカップが出たままです。来ない人への気持ちか、目の前の友人への気遣いか、別の読みが残ります。
「寂しい」を加えなくても、何を戻し、何をそのままにするかで、読者が見つめる場所を変えられます。どちらがよいかは、今回どんな人物を見せたいかによります。
この先で扱うこと
この記事は、キャラのセリフや場面は書けるけれど、気持ちを説明しすぎたり、口癖だけで個性を出そうとして似た会話になったりする方へ向けています。
有料部分では、言い直し、答えのずれ、相手によって変わる癖、言葉と行動の食い違いを、短い場面で読み比べます。最後には、自分の下書き一か所を使う小さな実践があります。
人の内心を見抜く方法や、仕草から嘘・好意を判定する記事ではありません。人物を想像するための創作上の着眼点です。作例はすべて架空で、AIを用いて制作しています。
記事内で完結し、専用アプリやダウンロードは不要です。個別添削、長編構成指導、心理診断は含みません。
