【20073-10】No,1
LAY-RON
カッコつけて生きてるのにあいつの心にはひとつも刺さりはしなかった。
芽実にかっこいいと思われたくて生きてきたなんて格好悪すぎて言うつもりはなかったのに。
でも芽実はそうやって弱い部分を曝け出して本音を言わないと見つけてはくれない。
「それで、寄田くんは?どう思う?」
あの頃と同じ調子ではじめてみたいに聞いてくる。はじめてじゃないって言ってるのにあいつは信じようとしない。
「ねえ、芽実?ねえ、ねえ!!」
俺はいつもしつこく予定を聞く。
「明日は?勉強なんてたまには休めばいいじゃん」
既読無視なんて日常茶飯事だった。何度連絡しても無視、電話をしてもでない。1時間に数十回かけまくったのに全然出ない。埒が明かないから家に突撃すると、すごい剣幕で怒られる。
「しつこい!!!」
何度ピンポンしても出てきてはくれない。
俺はどうしてこんな女と一緒にいたいと躍起になっているんだろう。
理屈じゃない何かが動いているとしか説明することができない。
ヒラヒラ、フリフリを器用に着こなす女には抜群にモテるのに。
この女にはなにひとつ響かない。
すがられたこともない、俺はいつも縋ってこられる立場なのに。
予定を提案されたこともない、俺はいつも予定を断る立場なのに。
愛しているとは、、、まあかろうじて言ってもらえているか。
「ねえ、寄田、、、、あたしたぶんもうだめだ」
「何を唐突に、、、」
いつもの気まぐれだと思って俺は真剣に取り合わない。こいつのだめとかやばいとかっていうのは一生のお願いレベルで価値がない。
「お父さんがガンなんだって。助けて、、頼らせて。いっしょに帰ってほしいの」
血の気が引いた。色んな意味で俺は自分のほうが明日死ぬんじゃないかと思った。
「俺でいいの?俺がいっしょに帰るの?」
「だめ?」
「いや、別にいいけど」
普段、邪険に扱われているからか芽実の力の抜けた泣き顔が無性に信頼を感じさせた。
こいつ、人に頼ることあるんだ、、、。
小心者の自覚はある、それとなく、芥田や涌田、寺原にも匂わせて聞いてみた。
「バカ!あの芽実さんだぞ!?万が一にも言うわけねえじぇん!」
納得だ。その通りだ。寸分違わず疑いの余地はない。
誇らしいトロフィーも言葉としての賞状も俺は誰にも見せるつもりはない。
俺はあの日以来、精神をまたひとつ壊してしまったような気がしている。
芽実のお父さんが亡くなって一年が過ぎた。
俺が芽実の父親役も任せてもらえるようになれたらいいなあと思っている。
俺は彼女といればいるほど精神がぶっ壊れていくんだと思う。死んでは生き返って、生き返ってはまた新しい死に直面していく。
「