【19896-10】No,1

【19896-10】No,1

「紀平、それはだめ!お腹痛くなっちゃうよ!」

ツインテールにリボンをして、いつも教室の隅っこで本を読んでいた。上目遣いが妙にうまくて、4歳児ながら「色気」のような得体の知れないものに巻き込まれた。

ソフトクリームを舐める写真を彼女は今も大切に持っている。

37歳になった俺は自分がロリコンなんじゃないかと不安になるくらい、その写真に対しても欲情する。

「ねえ、紀平、それはだめだってば!!乳製品は1日1つ!聞いてる?」

芽実の家のキッチンはかなり充実している。

乳製品だけでも牛乳、ヨーグルト、チーズ、クリーム系の洋菓子などなど。料理もうまいけど、品質の良いものを選ぶ目もあるから、芽実の家の冷蔵庫は宝箱のように保存されている全ての食べ物が間違いなかった。

「自分のお腹のことなんだから、ちゃんと管理しないと」

世話を焼くことが楽しいと見えて、鼻歌混じりに文句を言ってくる。いい顔をしている、充実してた楽しそうな顔ははじめて見ている。

「芽実もだよ、甘いものいっぱい食べると太っちゃうよ」

軽口が命取りになる時がある。俺はどうもこういう見分けが下手くそだ。昔から彼女の空気が読めなくて、時々泣かしてしまう。

「、、、わかった。もう今日は絶対食べない」

最初のわずかな沈黙と「絶対」という宣言は芽実が臍を曲げている証拠だ。

やってしまった。。。

困った。。。どうご機嫌を取ろう。

何年経っても慣れない。うまくいかない。

泣かなければ儲けたものなのだけれど、、、

「芽実ちゃん、一個くらいはいっしょに甘いもの食べようか?」

「いらない!さっき食べないってあたし言ったでしょ、だって太るから」

芽実は頑固だ。我が強いから宣言したことを絶対に曲げないし、無責任に言い訳もしない。いじっぱりを行動責任に変えてしまうような弁舌の鋭さもある。

芽実のお尻と俺のケツを合わせて寝ているとその暖かさが少し笑えてくる。健康ならなんでもいいじゃない、生きていればなんでもいいじゃないと笑えてくるのだ。

「芽実、寝た?」

「寝てない、お腹空いて寝れない」

良かった。

「じゃあケーキ食べようか。いっしょに太ろうぜ!連帯責任とってやるよ!」

「ほんと!?」

「うん!まかせろ!」

芽実は変わっていないと豪語する。でも俺は彼女は変わったと思う。昔よりもずっと肩肘を張らず、素直になったと思っている。


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