連載小説【FOOT PRINT】

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LAY-RON

LAY-RON

般若と龍ってどっちが人気あるんですか?

さあ、わかりません。

しょうもない質問もスルーすることはできない。職業差別はしてはいけないという憲法の下のこの国に戸籍がある俺たちは実際は例外となるらしい。それが差別っていうんだよとは言えない。マイノリティーは世論とかいう不特定多数の怪物に食われてしまえば海外逃亡することくらいしか生きる道はないからだ。

俺の職業はヤクザだ。

ここまで書いて笑ってしまった。なんだ?職業ヤクザって。テキ屋とかそういう言い方ならわかるけど、職業ヤクザってなんだよ。反社会的勢力?暴力団?これって集団であって職業じゃない。じゃあどうやって所属を裏付けるんだ?嘘つけばそれでスルーしてもらえるじゃん。

この国には差別のためだけの指定制度がある。特定指定暴力団というやつだ。俺だって色々してもらった恩義みたいなものがあるから、名簿にのせないでくださいなんて言えない。ヤクザ独特の義理人情ですねとか言うバカがこの日本には多すぎて、ここから話さなきゃならねえのかよって何度も失望したから、俺は神学校に行って牧師になった。それでも埒が明かない連中が多すぎたから、時間をかけて実績作って今夜間の法学部に通っている。

ヤクザだから義理人情があるわけじゃないし、ふつうに世話になったところには恩義を感じてそれが人間だし、サラリーマンだってその恩義や義理人情があるから「いやあ、会社は辞められないよ」とか奥さんにごねてんだろうがって思うんだけど、そこまで言う義理は今度はないからね、ヘラヘラしてるけれど。

ヤクザが排除されるようになって困っている一般人がいることをどれだけのマジョリティの連中が知っているだろうか。

善意で写真を撮ってくれた芸能人、なんとか職に就かせてあげたいと尽力してくれた出版社の役員さん、政治家の先生たち、弁護士さん、役場の人たち。みんな俺たちのせいで職を失った。俺たちへの善意がマジョリティたちの浅はかな営業妨害の道具されてしまったことは10年前から頻発して、それが積み重なってもう誰も俺たちと付き合うことはなくなってしまった。社会通念や社会の常識はいつの間にか俺たちを惨めな思いにして再起不能にした。

俺たちは人に迷惑をかけるから国や自治体から差別指定されたんだろうか。いつ迷惑をかけたんだろうか?

大学の図書館というのはすごいんだよ、過去の判例集がきちんと揃っていて調べ放題だった。俺ももうすぐ3年生に進級する。専門分野を学ぶ直前、2年分の単位はしっかりと取得できているし春休みを利用して少し勉強してみるのもいいと思っている。

俺たちの職業が、たとえばヤクザだったとして、このヤクザが指定差別を受けなくなるような世の中を作ることは可能なんだろうか?もしくは別の何かに取り替えて自分たちの培ってきたものを世の光として輝かせることができるのだろうか?

現時点わからないというのはとても大きな希望だと思っている。

俺の旅路ははじまった、イエス様と共に。

-------続く....


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LAY-RON

To Kids,To You. 2033年へ それまでの歩みをラブレターに添えて

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