
結論から言うと、VPNで遅くなるのは故障ではなく仕組みどおりの動きなんです。原因は「遠回り」「暗号化の手間」「サーバーの混雑」の3つにほぼ集約できます。
フリーWi-Fi対策や海外旅行の準備でVPNアプリを入れたら、動画の読み込みが止まりがちになった。そんな相談はよく聞きます。あなたのスマホは、VPNをオンにした状態とオフにした状態で、速度を比べてみたことがありますか?
この記事は、VPNを入れてから通信が重くなったと感じている方、これから入れようか迷っている方に向けて書いています。読み終わると、遅さの原因が回線側なのかVPN側なのかを自分で切り分けられるようになり、どの設定を変えれば改善しやすいかの見当がつくはずです。なお、個別に質問できる窓口を記事の最後に載せています。
VPNは「寄り道」と「梱包」をしている
VPNをオフにしているとき、スマホの通信は携帯会社やWi-Fiの回線を通って、目的のサイトへほぼ最短で向かいます。VPNをオンにすると、通信はいったんVPN事業者のサーバーへ送られ、そこから目的のサイトへ出ていく形に変わります。つまり経路が1か所増えるんですね。
さらに、スマホとVPNサーバーの間では、データが暗号化されたうえで別のパケットに包み直されます。荷物を箱に入れ、その箱ごと別の箱に入れて送るイメージです。この包み直しを「カプセル化」と呼びます。
包み直すと、外側の箱のぶんだけデータが大きくなります。たとえば WireGuard という方式では、IPv4で60バイト、IPv6で80バイトが1パケットごとに上乗せされます。一般的な回線で一度に運べる大きさ(MTU)は1500バイトなので、WireGuardでは中身を1420バイトに抑える設定が標準になっています。1回に運べる中身が約5%減る計算で、そのぶん同じデータを送るのに必要なパケット数が増えます。
速度だけでなく、反応の速さ(Ping値、ミリ秒で表す遅延)も変わります。寄り道の距離が長いほど往復に時間がかかるので、ダウンロード速度の数字はそれほど落ちていないのに、ページを開く最初の一瞬がもたつく、という体感になりやすいんです。

「速度」と「遅延」は別の指標です。動画の画質に効くのは速度(Mbps)、ビデオ通話やゲームの引っかかりに効くのは遅延(ms)。VPNで先に悪化しやすいのは遅延のほうなんですね。
遅くなる原因を6つに分けてみる
- サーバーまでの物理的な距離: 日本にいながら米国や欧州のサーバーを選ぶと、通信は海を往復します。距離が伸びるほど遅延は増えます
- VPNサーバーの混雑: 1台のサーバーを多くの利用者で分け合うので、夜間など利用が集中する時間帯は1人あたりの帯域が細くなります
- 暗号化・復号の処理: 送るたびに暗号化、受け取るたびに復号する計算がスマホ側でも走ります。数年前の機種や省電力モード中は処理が追いつきにくくなります
- カプセル化による上乗せ: 前の章で触れたとおり、1パケットあたり数十バイトのヘッダーが加わり、運べる中身が減ります
- 接続方式(プロトコル)の違い: WireGuard や IKEv2 は軽い部類、OpenVPN は設定次第で重くなります。特に OpenVPN のTCPモードは、再送の仕組みが二重に働いて速度が落ち込むことがあります
- 無料プランの速度・容量制限: 無料のVPNは、事業者側で速度の上限や月間のデータ量の上限を設けていることが多く、回線の良し悪しとは無関係に頭打ちになります
- 元の回線が弱い: 電波が1〜2本の場所や混み合ったフリーWi-Fiでは、VPNの上乗せぶんが目立ちます。土台が細いと影響が大きく見えるわけです
切り分けと改善の手順
- VPNオフで速度を測る: スピードテストのアプリやサイトで、下り・上り(Mbps)とPing(ms)の3つをメモします。ここが遅いなら原因は回線側です
- 同じ場所・同じ時間帯にVPNオンで測る: 条件をそろえて比べます。1回だと偶然のブレがあるので、3回測って真ん中の値を見るのがおすすめです
- 接続先サーバーを近い場所に変える: 日本国内で使うなら東京や大阪のサーバーを選びます。「自動」「最速」といった選択肢があるアプリなら、まずそれを試します
- プロトコルを変える: 設定画面で WireGuard や IKEv2 が選べるなら切り替えます。OpenVPN しか無い場合は、TCPではなくUDPを選びます
- VPNを通すアプリを絞る: 「スプリットトンネル」機能があるアプリでは、動画アプリなどをVPNの対象から外せます。Android向けアプリには搭載例が多い一方、iPhone向けでは使えないこともあります
- 必要な場面だけオンにする: フリーWi-Fiにつないだときだけ自動でオンにする設定があれば、自宅や携帯回線では素の速度で使えます

手順1と2の差が小さければ、VPNは犯人ではありません。逆に、オフで50Mbps出ているのにオンで5Mbpsまで落ちるような大きな差なら、サーバーの場所かプロトコルを変えるだけで戻ることが多いです。
ここに注意⚠️
- データ使用量はVPNオンのほうが少し増えます。上乗せは数%程度とされますが、使った量で料金が変わるプランでは無視しにくい差です。楽天モバイルの Rakuten最強プランは、公式の料金表(2026年9月時点)で3GBまで1,078円、20GBまで2,178円、20GB超は3,278円(いずれも税込)の段階制なので、境目ぎりぎりの月は段階が1つ上がる可能性があります
- 無料VPNは運営元を確認してから入れるのが安全です。通信がすべてその事業者のサーバーを通るので、運営会社名、所在地、ログの扱い(プライバシーポリシー)が明記されているかを見てください
- 認証や通話に回線の情報を使うアプリは、VPNオンの状態だと動作が変わることがあります。銀行アプリ、動画配信、キャリアの通話アプリなどでエラーが出たら、まずVPNをオフにして試すと切り分けが早いです
- 常時オンにすると電池の減りが早くなる傾向があります。暗号化の計算が続くことと、接続を保つための通信が定期的に発生することが理由です
- iPhoneの「iCloudプライベートリレー」も、経路を中継する点でVPNと似た仕組みです。VPNアプリと両方オンにしていると、どちらが原因か分かりにくくなるので、測るときは片方ずつにします

VPNは「遅くなる代わりに経路を守る」道具なので、速度だけで良し悪しを決めるものではありません。フリーWi-Fiではオン、自宅や携帯回線ではオフ、という使い分けが現実的な落としどころだと思うんですけどね。ただ、仕事で会社指定のVPNを使っている方は、自己判断で設定を変えず管理者の指示に合わせてください。ここまでで役に立ったと感じたら、拍手👏を1回もらえると励みになります。
💡 3つの申込ルート、どれが一番お得か
VPNの話から少し離れますが、通信量の段階を気にするうちに「そもそも回線を見直したほうがいいのでは」と考え始める方もいると思います。楽天モバイルを検討する場合、申込ルートには「従業員紹介」「三木谷キャンペーン」「通常の紹介キャンペーン」の3つがあり、還元額と適用条件がそれぞれ違います。
ややこしいのは、初めての申込か、2回線目か、過去に契約していて再契約になるのかで、選ぶべきルートの答えが変わる場合があることです。条件を読み飛ばすと対象外になるケースもあるので、申込ボタンを押す前に一度整理しておくほうが安心です。3つのルートの違いは、下記の解説記事にまとめてあります。

申込前の個別の疑問は、プロフィール記載のLINEでも受け付けています。
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次回は、フリーWi-Fiにつなぐときに確認しておきたい設定を取り上げる予定です。ちなみに、この記事が参考になったら、拍手👏で教えてもらえると次の記事の優先度に反映できます。
