◾️薬剤師は稼げる
私、昔は「普通のバカ」でした。
勉強が大の苦手で、頭の回転も速くない。いわゆる、ちょっとおマヌケなタイプ。ビリギャ◯ほどのインパクトはないけれど、学校では目立たない普通の子供だったんです。
そんな私が大学進学を考えたとき、こう思いました。
「薬剤師になればお金持ちになれる!」
大っ嫌いな勉強も、「未来の高収入」を思い描きながら死に物狂いで頑張りました。
そしてついに、”国家資格”という響きだけでちょっとしたヒーロー気分になれるあの称号を手に入れたんです。
でも、実際に薬剤師として働き始めてみると…
「え、なんか思ってたのと違う…?」
一体、何が誤算だったのか?そんな私の経験を、ここでお話ししたいと思います。
◾️夢?そんなものはなかった
子どもの頃、何になりたいとか、将来の夢なんてものは特にありませんでした。(あっ嘘です。幼稚園の時の夢は河童になることでした)
ただひとつ心にあったのは、シングルマザーとして懸命に働く親の姿を見て芽生えた想い。
「稼ぐ力を持って、お金持ちになる」
それが私の唯一にして絶対の夢。いや、夢というより、現実にしなくてはならない目標でした。
偏差値40の単純な頭で考えた結果はこう。「医者か弁護士になれば稼げる!」だけど、古文が苦手だから弁護士は却下。となれば医者しかない。
こうして、私は医者になることを目指すことにしました。
…しかし、現実はそう甘くありません。鮮やかに医学部に落ちた私は、ひっそり受けていた薬学部へ進むことになりました。
でも、それでいいんです。
だって、私の目標は「お金持ちになること」。
医者じゃなくても、そこにたどり着けるなら問題なし!
◾️国家資格を取るのも容易じゃない。
借金して学校に通いました。そう、奨学金という名の借金です。
学校って、資格を得るためにも、入学するためにも、続けるためにも、お金がかかるんですよ。思っていた以上に、いろんなところでお金が飛ぶんです。
そして、最も衝撃的だったのが教材費。
教科書1冊で1万円!
その教科書、数ページだけ使って、あとは封印。それを何冊も買わされるんです、毎年。
お金持ちになる道のり、めちゃくちゃ厳しい。想像以上に、厳しい。
でも、泣きながらも、無事薬剤師に。
大丈夫!早く借金を返して、ヴィトンのバッグを肩にかけて、コツコツヒールの音を響かせながら、歩いてやる!
◾️誰よりも貧乏
初めての給与、21万円。
予想通りではあったけど、甘かった。家賃が引かれ、光熱費が引かれ、そして借金返済…。気づけば、ギリギリの生活が始まっていた。
2年経っても、私の周りの一般職の子たちに給与で勝てることなんて、一度もなかった。周りにはITや営業の子が多くて、お金の回り方がまるで違う。一緒に遊んでいるだけで、明らかな差を感じた。
実際、薬剤師は実家から通っている人がすごく多い。私も実家から通えばよかった。
いつまで経っても、ヴィトンは持てない。
私の誤算①:薬剤師=稼げる、なんて幻想だった。
◾️ACO先生
かつて、私は白衣を着て「先生」と呼ばれる日を夢見ていた。でも現実は、そんな甘いものじゃなかった。
高齢化が進み、薬局に来る患者の年齢層はすっかり高くなっている。患者様に「お嬢さん」なんて呼ばれ、唯一「先生」と呼んでくれるのはセールスだけ。
処方箋を見てみれば、何度も間違いが。それを医師に確認しようとすれば、不機嫌な医者と、キレかけの患者に挟まれ、まるで地獄。
「私は悪くない」
たくさんの人にひどいことを言われました。「◯ね」だの、怒鳴られるだの、無視されるだの
そして、コンビニ感覚で扱われる薬局。
※法律で医師に先に問い合わせすることも、薬の説明をすることも義務付けられています。
私の誤算②:薬剤師はマジでナメられる。
◾️将来の自分をイメージする
どんな会社でも、周りの先輩を見ていれば「自分の◯年後」がなんとなく見えてくるもの。私が働いていた薬局でも、薬剤師の数が多く、新卒から70歳まで、年齢層は幅広かった。
でも、気づいたことがある。
何歳になっても、仕事内容はほとんど変わらない。
若い子が年配の薬剤師をサポートしてくれることもあるけれど、基本的には担当する仕事はずっと同じ。だから、年齢を重ねることで、少し楽に感じることもあるかもしれない。それが、薬剤師という職業が「年齢に関係なく安定している」と言われる所以だろう。
でも、若い私にはそれがむしろ不安でしかなかった。
仕事内容が変わらないなら、給料だって変わらない。
年齢と共にただ「安定」だけが待っている。その先に何があるのか?
私の誤算③:安定こそ、硬直そのもの
安定が得られることが、必ずしも進化や成長に繋がるわけではない。むしろその「安定」が、私のモチベーションを奪っていった。
◾️通用するのは日本だけ
今、私はベトナムに住んでいる。
紆余曲折あって、ここにいる。
ベトナムでは、日本では医師の判断がないと手に入らない薬が、薬局でバンバン売られている。しかも、1錠から。理由なんて一切聞かれず、まるでコンビニでジュースを買う感覚で薬が買える。
そして驚愕すべきことに、ここでは薬剤師の国家資格が存在しない。カリキュラムを受ければ、誰でも薬剤師になれるのだ。
薬の知識よりも、読解力が求められる。
だって、薬は色々な国から輸入され、さまざまな言語で書かれているから。
薬の種類も、量も、国によってバラバラ。今、私が持っている日本の知識なんて、ほとんど役に立たない。使える薬はごく一部で、まるでゼロからのスタート。
私の誤算④:日本をでたら経験値0
◾️薬剤師のぼやき
どんな仕事も、最初は夢のように感じるものだ。でも、現実はそう簡単じゃない。
思い描いていた仕事と、実際に目の前に広がる現実は、まるで別世界。
私が描いていた薬剤師の人生。でも、それは薬局に勤めることでは叶わなかった。「薬剤師」とは、私が想像していたような華やかなものではなかった。
皆さんが思い描いていた「薬剤師像」、その現実はどうだった?
もちろん、叶わなかったとそこで諦めたわけではない。
“ちゃんちゃん”で片付けるなんて、ありえないから。
そこで私が起こした行動は、また別の機会に話そうと思う。
ベトナムに来た今も、お金持ちになる夢は絶対に終わらせるつもりはない。